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「AIが生成したイラストの投稿禁止」をイラスト投稿サイトが次々に決定し始めている

by Lexica

近年は「Stable Diffusion」をはじめとする高精度な画像生成AIが次々に登場しており、「AIが人間のアーティストに取って代わるのではないか」と考えている人もいます。そんな中、さまざまなイラスト投稿サイトでは「AIが生成したイラストの投稿禁止」をガイドラインで定める動きが進んでいると、テクノロジー系ブログのWaxy.orgを運営するAndy Baio氏は指摘しています。

Online Art Communities Begin Banning AI-Generated Images - Waxy.org
https://waxy.org/2022/09/online-art-communities-begin-banning-ai-generated-images/

AIが非常に精度の高いイラストを生成できるほど進化を遂げる中で、AIを活用する人々とAIに否定的なアーティスト間の対立が深刻化しています。2022年8月26日には、第150回コロラド州品評会のデジタルアート部門において、画像生成AIのMidjourneyによって生成された絵画が人間を差し置いて優勝したことが物議を醸しました。

画像生成AI「Midjourney」の描いた絵が美術品評会で1位を取ってしまい人間のアーティストが激怒 - GIGAZINE


Baio氏はこうした流れの中で、オンラインのイラスト共有コミュニティはAIが生成したイラストに対して敏感に反応していると述べています。たとえば、主にケモナーを対象にしたイラスト投稿サイト・Fur Affinityは、9月5日にイラスト投稿のポリシーを更新して、アップロードを禁じる「芸術的メリットを欠くコンテンツ」の中に「人工知能(AI)またはそれに類する画像生成ツールを使用して作成された作品」を追加しました。


Fur Affinityはポリシーの説明で、「人工知能によって作成されたコンテンツは、Fur Affinityでは禁止されています。AIや機械学習アプリケーション(DALL・EやCraiyonなど)は、他のアーティストの作品をサンプリングしてコンテンツを生成しています。そうして生成されたコンテンツは、他のアーティストの何百、何千もの作品を参照し、派生的な画像を作成することができます。私たちの目標は、アーティストとそのコンテンツをサポートすることです。私たちは、AIが生成したコンテンツをサイト上で許可することが、私たちのコミュニティにとって最善の利益をもたらすとは考えていません」と述べています。

なお、Fur Affinityでは、7月にも「AIを用いてケモナー向けっぽいポルノ作品を自動生成するアカウント」が作成され、アップロード制限速度の上限に達する頻度でAI製のイラストが投稿される事態が発生していました。

また、老舗の製作物投稿サイトであるNewgroundsでは、イラストや顔写真を合成して新しい画像を作る「Artbreeder」を利用したイラストの投稿を2021年から禁止していました。2022年8月下旬に更新されたガイドラインでは、より明示的にAIの使用に言及しています。

Newgroundsのガイドラインには「AIアート」という項目が設けられ、「AIで生成されたアートは、Artポータルで禁止されています。これにはMidjourney、DALL・E、Craiyonなどのツールの使用や、ユーザーが2枚の画像を選択して機械学習によって新しい画像を合成するArtbreederなどのウェブサイトが含まれます」と記されています。一方でNewgroundsは、「キャラクターアートをメインにAIで生成された背景を使用する場合など、多少のAI使用はOKです。このような場合、ユーザーやモデレーターにわかりやすいように、AIが使用された要素を記載してください」と記すなど、人間のアーティストが補助的にAIを活用することは認める方針です。


しかし、AIで生成されたイラストを上からなぞったり着色したりすることについては、他人のイラストをなぞるのと同じだとして投稿を禁じています。「結論から言うと、私たちは人間が作ったアートに焦点を当て、Artポータルがコンピューターで生成されたアートであふれかえらないようにしたいと考えています」と、Newgroundsは述べました。

他にも、2021年にクラウドファンディングサイトのKickstarterで資金を集めた新しいイラスト投稿サイト・Inkblotは、AIアートを容認しない方針を示しています。

Hi, we mentioned a few days ago that we have a no tolerance for AI art & working on updating our ToS in coming day for this which you can see in tweet here: https://t.co/5NCCKDYVWv

— ????InkBlot @ MEMBERSHIP DRIVE (@inkblot_art)


まだAIアートに対する方針を示していないイラスト投稿サイトでは、ユーザーから不満の声も寄せられています。2000年に開設されたアートコミュニティのDeviantArtでは、あるユーザーが「トップページに表示される25枚のイラストのうち10枚がAI製になっている」と報告したり、ユーザーたちがAI製イラストの規制を求めてスレッドで議論したりしています。

@DeviantArt You were kind of the last art site dedicated to art, but everyday I check the site now more and more its Ai. 10 out of 25 on your front page is Ai gen images. I guess this actually might be the end of a lot of art sites? I hope someone steps in and makes a new site pic.twitter.com/1Kez5FFQQF

— Zakuga Art (@ZakugaMignon)


大手イラスト投稿サイトのArtStationも、記事作成時点ではAI製イラストに対するスタンスを表明しておらず、AIによって生成されたイラストが数多く投稿されています。ArtStationは「Stable Diffusionできれいな画像を生成するためのプロンプト」にも使われているため、将来的に「AIが生成してArtStationに投稿されたイラストを基に、AIが新たなイラストを生成する」という、ウロボロス的な状態が発生する可能性もあるとBaio氏は指摘しています。

Baio氏は、「AIアートの倫理についてどう感じているとしても、オンラインアートコミュニティは非常に現実的な問題に直面しています。それは、AIアートは従来の人間によるアートよりも桁違いに速く生成できるということです。強力なGPUがあれば、寝ている間でも1時間に数千枚の画像を生成できます」と指摘しています。もし、イラスト投稿サイトでAIアートが無制限に投稿されまくる状態になれば、人間が描いたイラストを見つけることすら困難になってしまう可能性があるとのこと。「コミュニティの管理者やモデレーターはコミュニティを活性化させるために、AIアートを許可するか、分離するか、完全に禁止するかを決めなければなりません」と、Baio氏は述べました。

なお、AIアートが広まると共に著作権の問題が浮上してきますが、アメリカ合衆国著作権局は2022年2月の時点で「AIが作った作品に著作権はない」という判断を下しています。しかし、この結論は争点となったイラストにおいて人間の介入が少なく、「人間の著作権の要素がない」と判断されたことによるものであるため、人間の関わった範囲によってはAIアートに著作権が認められる可能性があるとみられています。また、別のAIアートについて再び議論が行われた場合、当局が別の判断を下すことも考えられるとのことです。

「AIが作った芸術作品に著作権はない」とアメリカ著作権局がAIの著作権を拒否 - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   ネットサービス,   アート, Posted by log1h_ik

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