2021.10.09

インテリ気取りで「受け売りの知識」を披露…私たちはみんな「亜インテリ」なのかもしれない

インテリを気取ってはいるけれど、そのじつ耳学問で仕入れた受け売りの知識をひけらかしているだけの人々——丸山眞男はいまから50年以上前にこうした存在を「亜インテリ」と呼びましたが、じつは現代こそが「亜インテリ」というキーワードによって特徴づけられるのかもしれません。『みんな政治でバカになる』(晶文社)を上梓した、批評家の綿野恵太氏が解説します。

バカの二乗

人間の思考には「直観システム」と「推論システム」というふたつのメカニズムがある(二重過程理論)*1。「直観システム」は非言語的・自動的・無意識的であるため、素早く判断できる。しかし、間違いも多い。その間違いには一定のパターン=「認知バイアス」がある。「推論システム」は言語的・意識的な推論をおこなう。「直観システム」に比べて間違いは少ないが、時間や労力を必要とする。私たちは「認知バイアス」ゆえに「バカ」げた言動をとってしまう*2

くわえて、ほとんどのひとが政治的無知=バカである*3。現在の選挙制度においては、みずからの一票が結果を左右することがほぼない。それゆえ投票のために政治的知識を獲得しようとはしない(合理的無知)。資本主義で「生活」に追われる私たちは、政治的知識を勉強するよりも、労働、家事、育児、介護、趣味、休息に時間を使わざるをえない。それは単に私たちが愚かだからではなく、「環境」によって政治的無知=バカになっているのである。

 

いわば、「人間本性」によるバカ(認知バイアス)と「環境」によるバカ(政治的無知)とがかけ合わさった「バカの二乗」である。戦後最大の思想家と呼ばれた吉本隆明のいう「大衆」とはまさにこの「バカの二乗」を表したものだった。これがフェイクニュースや陰謀論が後を絶たない理由である。

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