“CD時代の申し子” B’zが「音楽サブスク時代」でも輝き続けるワケ

30年超の受容の歴史をひも解く
金子 厚武 プロフィール

CDから配信へ、時代の過渡期の名曲

2010年代のB’zを支えた楽曲として、やはり「ultra soul」は避けて通れない。2001年に31枚目のシングルとしてリリースされたこの曲は、『世界水泳』のテーマソングとしてオンエアされ、チャートでは2週連続1位を獲得したヒット曲だが、メガヒットを連発した1990年代と比較して、リアルタイムで爆発的にヒットした楽曲だったわけではない。

しかし、2010年代に再び『世界水泳』のテーマソングとしてオンエアされるようになったこともあって、あのあまりにキャッチーな「ウルトラソウル!」「ハイ!」が徐々にお茶の間にも浸透。「誰もが知っているB’zの曲」になったことは非常に重要だと言える。

また、「ultra soul」は「ロックフェスの時代」におけるB’zを支えたという言い方もできるかもしれない。音源がCDから配信への過渡期を迎え、「CDは売れない。これからはライブで稼ぐことが主流になる」という意見が増える中、2010年代は「ロックフェスの時代」と呼ばれ、かつて音楽ファンのものだった「ロックフェス」が徐々に市民権を獲得していった。

B’zも2007年の「SUMMER SONIC」を皮切りに、コンスタントにフェスに出演していたが、すでに超人気アーティストとしてのポジションを確立し、ツアーの日程を発表すればチケットの大争奪戦が起きる彼らは、フェスへの出演にそこまでウェイトを置いていなかった印象がある。国内アーティストがメインのロックフェスはオーディエンスの世代が若く、そこにギャップがあったことも事実だろう。

 

そんな中にあって、エポックメイキングだったのが2017年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」へのヘッドライナーとしての出演だ。

国内アーティストを主体とするロックフェスとしては日本最大級であり、若い音楽ファンが集うこのフェスへの参加は、B’zにとってもこれまでにはないチャレンジだったと言える。

しかし、蓋を開けてみれば、同じ日の出演者であるゴールデンボンバーやマキシマムザホルモンを筆頭に、多くのアーティストがリスペクトと愛情を込めてB’zに言及し、さながら「B’z祭り」の様相となった。

そして、この日初めてB’zのライブを見るであろう若者も多数詰め掛けたステージで、B’zは日本の音楽シーンの第一線を走り続けるロックバンドとしての実力を如何なく発揮。

「みんなが一体となって盛り上がれる」ことが重視されるロックフェスにおいて、この日最後に演奏された「ultra soul」で幅広い世代のオーディエンスが「ウルトラソウル!」「ハイ!」を笑顔で叫ぶ光景からは、B’zというCD時代の申し子が、ロックフェスの時代も力強くサバイブしてきたことを実感させられたのだった。

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