「コロナ第4波」拡大のウラで警戒すべき、次に来そうな「人獣共通感染症」の脅威
人や鳥が日本に運ぶ新しい感染症
2021年3月30日、アメリカの大手通信会社ブルームバーグは、世界保健機関(WHO)と中国が2月に行った新型コロナ起源調査の報告書の草案を独自入手した。草案には「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の起源はコウモリで、コウモリから別の動物(ウサギやミンクなど)、別の動物からさらに人に感染したと思われる」と書かれていた。
つまり、新型コロナウイルスは「中国科学院武漢ウイルス研究所からの流出」ではなく、どこかで自然に発生した「人獣共通感染症」なのだと、トランプ前米政権の主張を改めて否定したことになる。
「人獣共通感染症」は、動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症だ。同一の病原体(ウイルスや細菌など病気を起こす小さな生物)が、人にも動物にも感染する。ウイルスを持つイヌやネコに噛まれて感染する狂犬病、ブタなどの体内でウイルスが増殖し、蚊を介して人に感染する日本脳炎などが、よく知られている。
ここ数十年間で登場し、致死率の高い病気として人類を震撼させたエボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)なども人獣共通感染症だ。これらの病気の発生地は海外だが、病原体を持つ動物や人の移動によって、日本にも持ち込まれる可能性がある。現在、日本には、約100種の人獣共通感染症の病原体が存在している。「コロナの次に来る人獣共通感染症」は、すでに目の前にあるのだ。
紀元前から人類を脅かす人獣共通感染症
人獣共通感染症の歴史は古い。3500年前から2500年前に編纂された旧約聖書には、食べてよい動物(家畜やシカなど)と食べてはいけない動物(タヌキ、ラクダ、イノシシなどの野生動物)が具体的に挙げられている。
肉食・雑食の野生動物は、多様な動物が持つ未知の病原体を体内に溜め込む。身体についているダニやノミも病原体を運ぶ。人は紀元前から、「食べたり近づいたりすると病気になる動物」の経験則から、人獣共通感染症を認識していたようだ。
新型コロナのような「感染症の爆発的な流行」も、紀元前から記録に残っている。古代アテナイの歴史家トゥキディデスの著作『歴史』によると、紀元前430年頃に流行した「アテナイの疫病」は、発病すると高熱と激しい咳に苦しみ、嘔吐しながら7~10日で死亡した。ペスト、天然痘、発疹チフス、マールブルグ病と諸説があるこの感染症による死者は10万人で、アテナイの人口の実に3分の1に及んだ。