2023.03.03
松本零士の自宅で「泊まり込みの奇妙なアルバイト」をした私が振り返る「あの頃のあたたかい思い出」
奇妙なアルバイト
松本零士の原稿取りのアルバイトをしていたことがある。
たしか大学5年のとき、1983年だったとおもう。(1982年かもしれない)
漫画雑誌の編集部のアルバイトだった。
「松本零士の原稿を取るために毎月2回、1泊か2泊ほど、松本零士宅に泊まりこむ」という仕事だった。
細かくは覚えてないが、かなり破格の高額アルバイトだったはずだ。
泊まり込むので拘束時間は長い。だからバイト代も高かったのだ。
松本零士氏〔PHOTO〕Gettyimages
奇妙な仕事だった。
なぜそんなアルバイトを始めたのか、書いていておもいだした。
もともと別の漫画家のところへ原稿取りにいくアルバイトをしており、そこで知り合った編集者に頼まれたのだ。
別の漫画家というのは麻雀漫画の北野英明である。
北野英明も原稿が遅いことで知られ、その家には各社の編集者がたむろしていた。待っているあいだに編集者どうしで麻雀をやる部屋もあった。
漫画黎明期を舞台にしたドラマで見るような景色である。
それこそ手塚治虫や藤子不二雄や赤塚不二夫たちが若かったころに、漫画家のそばに複数の編集者がついている、というのをドラマで見ることがある。
考えてみれば、それとほぼ同じような風景である。
アルバイトとはいえ、編集側としてそんなところにいたのか、というのをおもいだして、不思議な感慨にとらわれる。