1992年に公開された映画『シコふんじゃった。』の続編となるドラマ『シコふんじゃった!』が日本発のディズニープラスオリジナルドラマシリーズとして世界へ独占配信中だ。

社交ダンスブームを起こし、ハリウッドでもジェニファー・ロペスとリチャード・ギア主演でリメイク版が作られた『Shall we ダンス?』(1996年)で有名な周防正行が監督・脚本を務めた映画『シコふんじゃった。』は、本木雅弘が主演して当時国内で大ヒットを飛ばしたことを記憶している人は多いだろう。
相撲に興味のない若者が大学卒業のために弱小相撲部に入り相撲部を立て直すコミカルなエンタメストーリーは、伝統の継承や“有害な男らしさ”(男性優位の価値観や「男はタフでないといけない」と強制する価値観など、男性性のネガティブな側面)など相撲界が直面している課題も炙り出しており、当時、ブルーリボン賞作品賞や日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む5部門を受賞するほど評価された。

30年前に大ヒットした映画の続編がなぜいまディズニープラスでドラマ化されたのか。また、映画と違い、ドラマではなぜ相撲部の主将に女性を据えたのか。ドラマの総監督を務めた周防正行氏と全10話のうち6本の監督を務めた片島章三氏に話を聞いた。

左から、片島章三氏と周防正行氏
 

30年を経て大きく変化した「相撲をする女性」の描かれた方

――過去30年の間に何度かドラマ化のお話があったそうですが、なぜ今回、ディズニープラスでドラマ化に踏み切ったのですか?

周防監督:実は20数年前に香港でミュージカル舞台化されているんですよ。あるとき、香港から小さな劇団の若者が訪ねて来て、「香港で『シコふんじゃった。』をミュージカルにしたい」と頼まれまして、制作などをすべてその劇団にお任せして私は妻(草刈民代さん)と一緒に観に行きました。また、浪曲師の玉川奈々福さんにお願いして浪曲にしてもらったりこともあります。『シコふんじゃった。』は小規模の面白い企画としては既にリメイクされていたんですよね。

『シコふんじゃった!』より

――それがなぜ、いまディズニープラスだったのでしょう?

周防監督:ひとつは、「家族全員で楽しめる物語を提供したい」というディズニーの世界観に共鳴したことが理由です。もうひとつは、連続ドラマとして制作されたら、30年前の映画をそのままコピーするのではなく、各キャラクターやエピソードをきめ細かく描くことができるので、絶対に映画とは違うものになる確信があって面白いなと思いました。やはり、映画は短い尺だったので、辻褄が合わない部分や、少々乱暴に作ってしまった部分もあり、まあそれが映画の面白さでもあったんですけど。