2015.12.28

綾野剛の「プロ意識」にシビれた
〜ドラマ「コウノドリ」制作秘話

特別対談・荻田和秀×坂本美雨【第3回】
荻田和秀, 坂本美雨

坂本: その判断は現場の先生がなさるんですか?

荻田: ええ、裁量は当直の人間にあります。

坂本: お産の現場は本当に奇跡の連続で、リスクもあるし、大変なこともたくさんあると思うんですが先生は怖くなることはないんですか?

荻田: ありますよ。四宮先生のように僕もお母さんと赤ちゃんを亡くした経験がありますから。何が悪かったんだろう、自分が妥協したからじゃないかと自分を責めました。実際に母体死亡を経験して辞めてしまった産科医もいます。現場に戻ってこない人は多いですね。

坂本: 先生はどうやって乗り越えたんですか?産科医を続けていられるのはなぜでしょう?

荻田: ドMだからです。いや、でもその時のショックは正直大きかったですよ。あまりにも自分が背負っているものが大きすぎて、その時は産科医をやめたいと思っていましたね。なんでやめなかったんでしょうね。

でもやっぱり赤ちゃんが産まれた時の喜びが大きいからかもしれません。だから「はい、喜んで」といつでもお母さんと赤ちゃんを受けるようにしているんです。

家族を支えてくれるたくさんの人たちがいる

坂本: これから先生のお役にたつにはどうしたらよいですか?幸せな赤ちゃんが増えてほしいし、多くの女性に安心してお母さんになってほしいと思っているんです。

荻田: 坂本さんのように影響力のある方が、ライブやメディア、SNSなどを通して、お産や子育てに対するご自身の経験や考えを発信してくれるだけでありがたいです。「こうしなさい」ではなく「私はこうします」というスタンスでお話いただけたら、それだけで僕らは助かりますよ。

坂本: 役に立っているかはわかりませんが、インスタグラムなどで出産や育児のことも書いていて、ライブをキャンセルしたときも正直に書きました。失敗も含めて、「私はこうしているよ」ということがどこかで参考になったり、こういう例もあるんだって安心してもらえればと。

お産って、自分とダンナと子どもと家族の問題ではあるけれど、産科の先生や助産師さん……命がけで助けてくれる人たちがいて、赤ちゃんのことを思ってくれて、心配してくれて、見守ってくれている。

『コウノドリ』や荻田先生の本を読んで、自分もお産を経験して、そのことを知るだけでも、すごくありがたいし幸せな気持ちになる。自分たちだけじゃどうにもならないことがあるから、自分たちだけの責任でもないし、思いつめる必要もないんだって。だから、何かあったときにお母さん一人で抱え込まないでほしい。

関連記事