特殊教育学研究
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研究時評
学齢期の高機能自閉症スペクトラム障害児に対する社会性の支援に関する研究動向
藤野 博
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2013 年 51 巻 1 号 p. 63-72

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抄録

学齢期の高機能自閉症スペクトラム障害児への社会性の支援に関する研究動向を展望し、今後の課題を検討した。初期の研究でのおもな介入法は、会話や他者との関わり方など、コミュニケーションスキルを標的とするSSTに基づいていた。表情理解などの非言語的コミュニケーションや心の理論などの社会的認知の視点がそれに加わり、近年では抑うつや不安などの情動面の問題への認知行動論的なアプローチも導入されている。ほとんどの研究で効果が報告されているが、介入の標的や方法、研究デザインやアウトカム測度などが多様で、特定の介入法の効果に関して一般化できるだけの確実なエビデンスはない。介入プログラムのマニュアル化とコミュニティでの実践に基づくRCTによる効果検証は今後の課題であろう。その一方で、個人の生活史や社会的状況に密接に結びついた個別的な問題に対する形式的なスキル獲得を目指したアプローチの有効性と限界についても議論する必要がある。

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© 2013 日本特殊教育学会
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