2006 年 39 巻 2 号 p. 243-246
症例は70歳の男性で, 主訴は腹痛, 嘔吐であった. 平成12年6月, 突然気分不良, 嘔気嘔吐が出現し, 当院に緊急搬送された. 来院時, 意識レベルはやや傾眠傾向, 血圧68/38mmHg, 脈拍60回/分. 腹部に圧痛, 筋性防御は認めなかった. 腹部CTにて肝内門脈ガス像と小腸壁の肥厚を認め, 腸管壊死に伴う門脈ガス血症の診断にて緊急手術を行った. 術中所見はバウヒン弁より15cm口側より75cmにわたり回腸に黒色の色調変化が認められ同部を切除吻合した. 摘出標本において回腸粘膜が黒色に変化する虚血性変化を認め, さらにその粘膜下に気泡が散 在性に存在した. 病理所見では粘膜から粘膜下層にかけて壊死に陥っており, その壊死した粘 膜内にガス産生菌であるClostridium perfringensを多数認めた. 術直後, 翌日に高圧酸素療法を施行し, 術後17病日で軽快退院した.