雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
立山での山岳永久凍土の形成維持機構
福井 幸太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 66 巻 2 号 p. 187-195

詳細
抄録

飛騨山脈北部の立山は豪雪かつ多雨という特異な気候環境下にある.ここでは,永久凍土が一年の大半を積雪に覆われるカール内の北向き斜面に分布しているが,その形成維持機構は不明であった.そこで,永久凍土が分布しているカール内と分布していない稜線付近の2地点で2000~2002年にかけて地中温度,降水量,土壌水分の無人観測を行い,両地点の地中温度状況の比較から,永久凍土の形成維持機構を検討した.稜線付近では梅雨期の降水の浸透により地下深部まで熱が速やかに運ばれ,凍土の急速な融解を引き起こす.故に永久凍土が分布できる環境にない.一方,カール内では,10月下旬~11月上旬の積雪から露出している時期に生じる速やかな凍結と1~5月の積雪を冷源とした凍結により凍土が形成,冷却され,夏遅くまで残る積雪により凍土は一年の大半を融解から免れる.このため,カール内では永久凍土が形成維持される.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本雪氷学会
前の記事 次の記事
feedback
Top