東北家畜臨床研究会誌
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家畜臨床分野における遺伝学、とくに染色体分析ならびにDNA診断の最近の進歩
三宅 陽一
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キーワード: 家畜, 染色体異常, DNA診断
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1992 年 15 巻 2 号 p. 84-97

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抄録

先天的な染色体異常である染色体数あるいは構造上の異常の多くは、人や実験動物に限らず、家畜の性的異常や繁殖障害、または先天異常や奇形の直接的な原因となって現われやすいことが報告されている。また、最近の分子遺伝学的解析方法によって家畜の遺伝性疾患の原因が遺伝子レベルで明らかにされつつある。これまで牛では1/29を始めとする染色体転座、性染色体キメラ、モザイク、常染色体または性染色体のトリソミー、XY性腺発育不全症などがフリーマーチン、生殖器の異常や低受胎、または奇形のもので知られている。馬では性染色体のモザイクやモノソミー、トリソミー、XY性転換症候群などが間性や生殖器奇形、不受胎の雌で報告されている。豚では性染色体転座や、性染色体異常または性染色体のモザイク、モノソミー、トリソミーが間性、産子数の減少した雄豚などで認められているほか、常染色体の逆位の例が、ある特定の家系内で発生していることが認められている。このように家畜では多種類の染色体異常が性的異常や繁殖障害のものに数多く認められているので、染色体検査やDNA診断は臨床診断の一助となりえるものと思われる。

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