雑草研究
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ハルジョオンにおけるパラコート抵抗性の遺伝
伊藤 一幸宮原 益次
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1984 年 29 巻 4 号 p. 301-307

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抄録

埼玉県吹上町荒川河川敷桑園に出現したパラコートに抵抗性を持つハルジョオン6系統 (R) と感受性の通常系統 (S) を用いて, 抵抗性の遺伝学的解析を試みた。
1. 予備的な交雑実験によれば供試ハルジョオンはほとんどが他殖性で, 自殖率および無配生殖率はきわめて低かった (Table 1)。
2. パラコート抵抗性の1系統から得られた実生は感受性数系統から得られた実生と比べ, LD-50値は250倍であり, パラコート量0.5kg a. i./haの処理により両者を画然と区別できた (Fig. 1)。
3. 1982, '83年の両年にS×S, S×R, R×SおよびR×Rの系統間相互交雑を行い, 計73頭花の痩果を得た。これらを数回に分けて播種し, 1.5葉期におけるパラコートの散布処理により抵抗性を示すか否かを調査した。これらの結果から, ハルジョオンにおけるパラコート抵抗性は優性1遺伝子に支配されることを明らかにした (Table 2. および3.)。
4. S×RおよびR×S集団のパラコート処理後に生存していた個体を育成し, 翌年開花した13個体に感受性系統を戻し交雑した。次代における幼苗の抵抗性と感受性の分離比は1:1に適合し, 抵抗性が優性の1遺伝子であることを再確認した (Table 4.)。
5. 以上のように, パラコート抵抗性ハルジョオンは栄養繁殖, 痩果の伝搬のみならず, 訪花昆虫による他家受粉によっても遺伝子の移入, 拡散がなされるため, ハルジョオンの生育地ではパラコート抵抗性遺伝子型の侵入に特に注意する必要がある。

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