日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
技術論文
ケルセチン含有タマネギ外皮エキスの血小板凝集抑制作用
塩谷 茂信鈴木 貴則坂野 太研柳内 延也
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 69 巻 2 号 p. 45-53

詳細
抄録

ケルセチンは強い抗酸化活性をもち, LDLコレステロールの酸化防止や血小板凝集抑制などを通して動脈硬化予防作用があることが知られている. ケルセチンの主要な摂取源はタマネギであるが, 通常は鱗茎が利用され, 外皮は廃棄されている. しかし, ケルセチンは鱗茎より外皮に多く含まれる. 本研究ではケルセチンの食材としてタマネギ外皮を利用することを目的に, 2種類のタマネギ外皮エキスを調製し, ウサギとヒト血小板の凝集に対する抑制作用を試験した. タマネギ外皮に水を加えて, 110 ℃, 90分加熱してケルセチンを抽出した. この外皮エキスをさらに 10 000 × g, 5分間遠心分離して沈殿画分を調製した. 加熱抽出エキスにはケルセチンとケルセチン-4’-モノグリコシドが7 : 3, 沈殿画分には9.5 : 0.5 の比率で含有されていた. 血小板凝集刺激剤として, ADP, 血小板活性化因子 (PAF) およびトロンビンを用い, ウサギおよびヒト血小板の凝集に及ぼすタマネギ外皮エキスの作用を試験した. 2種類のタマネギ外皮エキスはウサギとヒト血小板の凝集をケルセチンと同様に, 顕著に抑制した. また, ケルセチン-4’-モノグリコシド (配糖体) とケルセチン-3-グルクロニド (抱合体) についても試験したが, ヒト血小板に対して, 配糖体は凝集抑制作用を示さなかったものの, 抱合体は抑制作用を示した. これらの結果から, タマネギ外皮エキスは動脈硬化などの予防のためのケルセチン供給素材として利用できることが示唆された.

著者関連情報
© 2022 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top