放送研究と調査
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「北海道胆振東部地震」と流言の拡散
SNS時代の拡散抑制を考える
福長 秀彦
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2019 年 69 巻 2 号 p. 48-70

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抄録

本稿は、「北海道胆振東部地震」で拡散した流言をTwitterの記録から分析し、SNS時代の拡散抑制について考察したものである。分析と考察の結果は以下の通り。 ■流言の拡散を抑制する基本は、正確な情報を伝え、情報の曖昧さを払しょくすることであるとされている。NHKはウェブサイトやスマホのアプリで災害情報の多様なコンテンツを提供し、Twitterや2次元コードでそれらへの誘導を行った。活字や図表を随時、検索できるネットのコンテンツはラジオ放送を補い、情報の曖昧さを払しょくする効果がある。 ■流言のツイートには、述語が「~らしい」の推定形から「~する」の確定調にトーンが強くなってゆくものと、そうでないものがあった。災害再来流言の中には、流言のツイートが噴出するかのように急激に増えるものがあった。ツイートが急増する際に「LINEでみた」という投稿が現れた。 ■流言を打ち消す否定情報には、拡散抑制の効果があった。否定情報がTwitter上で浸透してゆく速度は流言によって異なっていたが、強い恐怖感情を伴った流言の場合には浸透のスピードが速かった。 ■SNSで流言は爆発的に拡散する。メディアは迅速な対応を迫られるが、今後の可能性を予期する流言は取り扱いが難しく、打消し方は複雑なものとなりがちである。デマという言葉は拡散を迅速に抑制する即効性があるとされる反面、まだ不確実な流言を全否定してしまったり、流言中の善意の言説までウソと決めつけてしまったりするおそれがある。

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© 2019 NHK放送文化研究所
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