分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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京都における大気環境中過塩素酸塩の動態解析
山田 悦浅野 広樹布施 泰朗
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2009 年 58 巻 4 号 p. 241-247

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抄録

環境試料中の微量過塩素酸イオンの測定法としてサプレッサー型イオンクロマトグラフ装置を用いる分析法を開発し,環境中における過塩素酸塩の動態と発生源の解明に適用した.濃縮カラムを用いることにより,検出限界が0.16 μg/Lと濃縮なしの約200倍向上し,環境試料中過塩素酸イオンの定量が可能となった.共存アニオンの影響は濃縮カラムに保持後,溶離液の1/10の濃度の水酸化ナトリウム溶液を流して洗浄することにより除去でき,本法を雨水及び大気エアロゾル中に含まれる過塩素酸イオン定量に適用し,大気環境における過塩素酸塩の動態解析を行った.京都市における雨水中の過塩素酸イオンの濃度範囲はN.D.~3.53 μg/Lで,アメリカマサチューセッツ州の飲料水の基準値2 μg/Lより高い場合もあった.大気エアロゾル中の過塩素酸塩の濃度範囲は0.07~9.64 ng/m2で,2~4月に高く,6~8月には低いという季節変化を示した.バックトラジェクトリ解析の結果,大気エアロゾル中過塩素酸イオン濃度が高くなる要因のひとつとして,中国大陸からの汚染物質の長距離輸送の影響があると推測できた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2009
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