2013 年 23 巻 1 号 p. 63-71
平成24年7月11日付読売新聞紙上に、大谷徹郎医師が流産予防目的で、日産婦学会未承認の染色体数的異常の検査に新型PGDを無申請で適用したと公表した。それに伴い、日産婦学会は7月27日に【「着床前診断」報道に関する日本産科婦人科学会の声明】を出して、「その行為を決して容認しない」と旗幟を鮮明にした。そこで本稿では、大谷医師の画期的な治療成果が惹起する新事態と新型PGDの適用に際して今後解決されるべき生命倫理のボトルネックを指摘するとともに、そのボトルネックについて倫理的考察を加える。日産婦学会の方針は論理的整合性を欠く。