主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2019年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2019/03/20 - 2019/03/22
1.はじめに
2018年北海道胆振東部地震により,札幌市清田区の丘陵地に盛土造成された宅地地盤において,液状化や盛土の変形などが多くの地点で発生し,多数の家屋に被害が生じた.本発表では,多くの調査や報道がなされた清田区里塚地区以外の地区で発生した地盤被害について,その分布,被害形態,および地盤被害域の土地条件や土地の履歴などに関する調査結果について報告する.
2.調査方法
現地踏査および国土地理院撮影空中写真の判読から,噴砂(液状化)の発生域の分布を明らかにした.また,家屋,電柱やブロック塀等構造物の沈下・傾斜,マンホールの浮き上がり(抜け上がり),アスファルト路面の損傷などの構造物被害や,地盤の亀裂,変形などの分布について,現地踏査から明らかにした.GISを用いて,それら地盤被害の分布と国土地理院発行・作成の時系列の地理空間情報(旧版地形図,空中写真,地形分類図)とを重ね合わせ,地盤被害発生域の土地条件,盛土造成との関係などについて検討した.
3.結果
清田区の美しが丘地区では,多くの地点において噴砂の発生が認められた.それらの地点の周辺では,家屋の不同沈下,ブロック塀や電柱の沈下・傾斜,路面の変形(波打ち)などが生じていた.住民への聞き取り調査によると,多量の噴砂の堆積が認められた地点では,地震発生翌日まで泥水の発生が持続していたという情報が得られた.これらのことから,この地区で発生した上述の被害の多くは,液状化に起因すると判断される.それらの地盤(液状化)被害発生地点は,盛土造成前には谷地形が存在していた領域とよく重なる傾向がみられた(図1).盛土造成地の表層地盤構成物質を精査する必要があるが,谷部を埋めて造成した盛土(谷埋め盛土)が液状化したことが考えられる.
清田区清田六条から七条においては,宅地地盤や路面における亀裂・圧縮変形(損傷),盛土の変形などが発生し,それに伴う家屋の傾斜も生じていた。この地区においては、噴砂の分布は非常に少なかった。この地区における地盤被害発生地点も宅地造成以前に谷地形が存在していた領域と良く一致するとともに、谷底平野に沿って分布する低位段丘上において盛土造成した領域において、路面における亀裂や圧縮変形(損傷)などが生じていた(図2)。