2017 年 55 巻 3 号 p. 189-195
リンの不足は植物の生育を大きく制限するが,リンが乏しい土壌で生育する植物の中には,房状の特殊な根を形成して適応するものがいる.この房状の根は,根の表面積を増やして吸収効率を高めるだけでなく,有機態リンを分解するホスファターゼや難溶性リンを可溶化する有機酸の分泌能も高めて,リンの吸収を支えていることが示されている.房状の根を形成する植物は西オーストラリアや南アフリカなど南半球に多く分布し,北半球での例はほとんど報告されていなかった.近年,筆者らの研究により,わが国にもこれらの適応戦略を有した植物種が分布し,実際にリン栄養に乏しい土壌に適応するうえで重要な役割を担うことが示唆された.