環境感染
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グラム陰性球菌, グラム陽性桿菌
病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
山根 誠久仲宗根 勇
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2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 33-36

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抄録

グラム陰性球菌を代表する淋菌 (Neisseria gonorrhoeae) と髄膜炎菌 (N. meningitidis) は, いずれも乾燥, 温度変化, 光線, 消毒薬などに弱く, ヒト生体外では急速に死滅する性質をもつ. 従ってヒトからヒトへの濃厚な, あるいは直接の接触によってのみ感染が拡がる. このような性質から, 病院感染としての重要度は限定される.
グラム陽性桿菌には, 好気性菌, 嫌気性菌を含め, 各種の菌属, 菌群, 菌種が含まれるが, 病院感染という視点から見ると, 抗菌薬投与に伴う下痢症の原因, クロストリジウム・ディフィシレ (Clostridium difficile) が最も重要な細菌である. 本菌が作る芽胞は煮沸や常用の消毒薬に強い抵抗性を示し, 病院環境が汚染されるとこれを根絶することはまず不可能である. また患者への抗菌薬, 抗癌剤の使用は院内環境への本菌の汚染を助長し, 患者個人には外毒素による大腸炎を来す.

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© 日本環境感染学会
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