小児歯科学雑誌
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臨床
長期歯科的管理を行ったX連鎖性低リン血症性くる病の1例
井出 正道小串 信夫朝田 芳信
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2012 年 50 巻 4 号 p. 313-319

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抄録

X 連鎖性低リン血症性くる病は稀な遺伝性疾患であり,口腔内所見として齲蝕のない乳歯に歯肉膿瘍を形成することがある。今回,X 連鎖性低リン血症性くる病の男児に対して,乳歯列期から永久歯咬合完成期まで長期にわたり歯科的管理を行ったので,その経過を報告する。患児は初診時年齢2 歳1 か月の男児で,Aの疼痛と歯肉腫脹を主訴に来院した。Aには齲蝕が認められたが,根尖性歯周炎を生じるほどの重度の齲蝕ではなかった。歯根吸収と歯周組織の破壊がほとんどなかったため,感染根管処置を試みた。その後,合計17 歯の乳歯に歯肉膿瘍の形成がみられ,それらのうち2歯は抜歯の適応となったが,15 歯に感染根管処置を施した。15 歯のうち4 歯には,根管充填後再度歯肉膿瘍の形成がみられた。再度歯肉膿瘍のみられた乳歯に対しては,再度感染根管処置を試みた結果,感染根管処置を施した乳歯は全て,永久歯への交換期まで機能させることができた。永久歯には齲蝕予防処置を行い,齲蝕や歯肉膿瘍が発生することなく,健全な永久歯列へと誘導できた。低リン血症性くる病で乳歯に歯肉膿瘍が生じた場合でも,歯根吸収や歯周組織の異常が軽度である場合は,抜歯を選択する前に感染根管処置を行うことは有効な治療法であると考えられた。

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© 2012 日本小児歯科学会
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