日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
小児思春期双極性障害をめぐって
加藤 忠史
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 21 巻 3 号 p. 183-187

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抄録

小児思春期双極性障害が米国で急増している。小児期に発症する双極 I 型障害がまれながら存在することは確かであろう。しかし,最近増えてきたケースは,激しい易怒性,攻撃性を示すが,長期に続く気分の障害ではなく,双極 I 型あるいは双極 II 型の診断基準を満たさない。こうした場合,成人型の双極性障害に進展するかどうかは不明である。このように,米国では過剰診断が懸念されており,DSM-5 ドラフトで提案された Temper Dysregulation Disorder with Dysphoria(TDDD)は,この過剰診断を防ぐ目的で導入された診断基準である。今後,この診断基準を元に研究を進め,こうした情動障害の背景に,双極性障害の家族歴,AD/HD,精神刺激薬治療などがどのように関わっているのか,そしてこうした症例のどれだけが成人型の双極性障害を発症するのか,明らかにしていく必要がある。

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© 2011 日本生物学的精神医学会
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