感染症学雑誌
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原著
小児科病棟から分離されたLinezolid 耐性Enterococcus faecalis の 分子疫学解析
小児科病棟LZD 耐性腸球菌
二本柳 伸安達 譲小貫 智世中﨑 信彦平田 泰良藤木 くに子高山 陽子狩野 有作坂東 由紀壇辻 百合香花木 秀明砂川 慶介
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2012 年 86 巻 5 号 p. 555-562

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抄録

 2011 年4 月11 日および6 月3 日に北里大学病院小児科病棟の患者2 名からLinezolid (LZD) の最小発育阻止濃度 (Minimum Inhibitory Concentration;MIC) 値が>4.0μg/mL を示すEnterococcus faecalis(LZD 耐性E. faecalis) を3 株分離した.患者2 名 (患者A;菌株1 と2,患者B;菌株3) の背景を調査した結果,患者A とB は同一病棟の同室に入院しており,担当医療従事者にも接点があった.LZD の投与歴は,患者A のみで17,600mg/60 日であった.患者A は退院時まで本菌が分離されたが,患者B は抗菌薬治療によらず陰性化した.対象菌株3 株をClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) 法に準じて各種抗菌薬のMIC を測定した結果,Vancomycin (VCM),Teicoplanin (TEIC) が感受性,LZD は8.0μg/mL~16.0 μg/mL で耐性を示した.対象菌株3 株は,Polymerase Chain Reaction (PCR) による23S domain V のシーケンス解析でG2576T の変異を確認し,Pulsed-field Gel Electrophoresis (PFGE) ではいずれも極めて類似した相同性を示した.したがって,本菌のLZD 耐性獲得は患者A にLZD を大量且つ長期間投与したことによる可能性が高いこと.患者A,B から分離したLZD 耐性E. faecalis は担当医療従事者を介した接触伝播であることを推察した.

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© 2012 社団法人 日本感染症学会
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