感染症学雑誌
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原著
クリーニングによるセレウス菌除菌効果の検討
余 明順松山 純子志馬 景子岡山 加奈阪本 怜本田 武司
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2010 年 84 巻 5 号 p. 583-587

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抄録

リネンに付着した多数のセレウス菌Bacillus cereus がカテーテル等を介して患者血中に侵入し,敗血症を起こしたと疑われる院内感染事例が発生し,クリーニングによる除菌効果が問題になった.そこで,われわれは医療施設のリネン類の洗浄を請け負うクリーニング工場の現場で,各工程の菌数測定を行った.現在大手クリーニング施設で採用されている12 槽連続洗濯機による洗濯後のシーツ,タオルについてセレウス菌選択培地(NGKG 培地)でB. cereus,トリプチックソイ寒天培地(TSA 培地)で一般細菌の生残菌数を調べた.その結果,シーツ類では1 平方センチ当たりのB. cereus は,洗濯前0~32 個,平均7.6 個,洗濯後0~ 7 個,平均1.2 個であった.タオルは洗濯前106 個以上であったのが,洗濯後は12~3,133 個,平均1,096 個となり,かなり減少したものの残存B. cereus 菌数は高かった.同時に実施したTSA 培地を用いての一般細菌調査では,洗濯前のシーツ類では18~13,888 個,平均1,948 個と汚染は高かったが,洗濯後は0~18 個,平均5.7 個と減少した.タオルでは洗濯前106 個以上,洗濯後でも3,759~4,750 個,平均4,232 個で,かなり減少したが残存菌数レベルは高かった.医療施設から回収したタオル,シーツ類をクリーニング施設内で翌日の洗浄時まで放置することによる菌の増殖は特に認められなかった.また通常のシーツとドローシーツとの間には大きな菌数差は認められなかった.落下細菌調査の結果では,汚染区域である洗濯場の菌数がかなり多かった.これらの結果は,洗濯後の仕上がりタオルのB. cereus 汚染が医療施設で院内感染の原因となりうる可能性を示唆しており,改善の必要性が示された.また,洗濯場の作業環境の改善も必要であろう.

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© 2010 社団法人 日本感染症学会
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