席田用水は本巣郡本巣町にある水門で根尾川の水を取り入れ、本巣町・糸貫町・真正町を通り、やがて糸貫川と名前を変えて長良川に注ぎ込む農業用水です。
 この用水の始まりは、1530年に起きた根尾川の大洪水にまで遡ります。今の席田用水の流れを通って長良川に合流していた根尾川本流は洪水によって途中で流れを変えて揖斐川に注ぐようになりました。その結果水不足となり、しばしば干ばつに襲われた流域の人々が本巣町山口地区に水門を作り、旧根尾川本流に水を流すようにしたのです。
 席田用水は途中でいくつもの流れに分かれ流域の水田を潤し、その一部は岐阜市西部にまで至り、多くの農地に水を供給しています。
 本巣町山口地区にある取水口は、古くから席田用水と真桑用水2つの用水の水争いの場となっていました。江戸時代に水田の広さをもとに真桑用水4対席田用水6で水を引く権利と番水と呼ばれる決まりが取り決められたことから、この取水口は四分六分の分水あるいは席田・真桑の番水と呼ばれるようになりました。
 根尾川の清流を引き入れたこの用水には、たくさんの魚が住み、岐阜の名水50選にも選ばれるほどの水質を誇り、農業用水としての役割を担うと共に、ホタルの乱舞する名所として多くの人々に親しまれていますが、この流れがかつての根尾川であったことを知る人は少ないようです。

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