またまた カイロの話 | 昔の暮らしの道具考

昔の暮らしの道具考

ハクキンカイロ、灰式カイロ、鰹節削り器、火鉢、煙管etc.暮らしの中から消えつつある懐かしい道具を紹介します。

えと、今日は予告した「灰式カイロ」の話です。
(夢依さん、川中島さん、いつもコメントありがとう。読者がいるとがぜんやる気になりますね)

さて・・・・

どーやって使ってた? ニッポンくらしの道具考-今の灰式カイロ

これが「pocket hand warmer(ポケットハンドウォーマー)」の名称で現在も市販されている灰式カイロ。
登山用品専門お店に置いてあるとのことですが、私はネットで買いました。

パッケージはすべて英語。一瞬「外国製?」と思うのですが、箱の隅に小さく「JAPAN」の文字が。
中に入っている取り扱い説明書は日本語で、発売元は「楠灰製造株式会社」とあり、電話番号は大阪の局番です。
少し調べたところでは、使い捨てカイロが普及したことで日本での需要がなくなり、外国からの求めに応じて輸出用だけ作っている・・・のだとか。そのため日本では逆輸入したものが売られています。

写真に移っている黒い棒が「灰」です。えっ、炭じゃないかって?
そう思いますよね。私も「炭式」の間違いじゃないかと思ったのですが、
灰の中に炭の粉末を混ぜて練り固めたものらしいんです。
幅1cm、長さ9cmほどで、燃焼時間は8時間。火をつけると線香のように燃え始めます。

難点は、きちんと火がつくまで少し時間がかかること、
ときどき様子を見ないと途中で火がたち消えてしまうことがあること。

使い方にちょっとクセがあるのですが、
世界の天体写真撮影マニアには「これがないと」と言われているみたいです。
寒さでカメラの動作が鈍らないようカメラバックの中に入れるのに
一番適しているのだとか。

というわけで、現在手に入る「灰式カイロ」は、このメーカーただ一つですが、
使い捨てカイロが全盛になるまえは、ハッキンカイロと並んで市販されていたようです。

デッドストックになっていたものを一つ手に入れたのですが、
ほら、このパッケージ、昭和チックな雰囲気でしょ?

$どーやって使ってた? ニッポンくらしの道具考-ミニカイロ

「カイロ」って漢字で書くと「懐炉」。つまり、ふところに入れる小さな「炉」です。
もともとは「懐石料理」の発祥同様、熱した石を布でくるみ、懐に入れて暖をとったものでした。

江戸時代になって、ある特定の植物の灰には炭の燃焼を長持ちさせる効果がある、ということが発見され、灰の中に炭の粉末を入れたものを小さな棒状の紙袋に詰め、端から火をつけて、ゆっくりと燃焼させるという仕組みを考えだしたのです。
ちなみに、燃焼を長持ちさせる効果を持つのは、茄子の枝、楠、桐、麻殻などと言われています。

ハンドウォーマーを作っているメーカーは「“楠灰”製造株式会社」。今は使い捨てカイロを作っている「“桐灰”化学」も昔は灰式カイロを作っていたんですよ。

で、これが昔の「灰式カイロ」。

$どーやって使ってた? ニッポンくらしの道具考-昔の灰式カイロ

紙包みの先はアメの包み紙みたいにひねってあって、そこに火をつけます。
たぶん江戸時代の容器は金属ではなくて「陶器」だったと思うのですが、大正時代にはほぼ、これと同じ容器になっていたみたいです。

この写真のカイロはずっと仕舞いこまれていたもので、何十年経っているのか。戦後のものだとしても、もう60年は経っているのでしょうか。

ただ持っているだけではつまらないので、実際に使ってみました。

・・・ちゃんと火が付きました! 懐に入れると少し何かが燃える湿った匂いがして、人と手をつないでいるような暖かさを感じます。午前中に火をつけて、夕方日が暮れる少し前ぐらいまで持ちました。

ただ、後日蓋をあけたら中身は全部細かい灰になっていて、ゴミ箱にあけたらもうもうと灰煙がたちました。「うーん、こりゃあ、廃れてしまうのも無理ないな」。

ところで、灰式カイロにしろ、ハッキンカイロにしろ、今の使い捨てカイロも日本人の発明です。外国の人たちは、寒い季節にどうやって暖をとっていたんでしょうね。

ご存じの方、ぜひコメントくださいませ。

そして、これを読んだみなさんも、ぜひ一言感想をお寄せくださると嬉しいです。

次回のテーマは・・・、
「お手玉」にしようかな、それとも「寝炉」にしようかな・・・・。

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