アベノミクスの「第1の矢」(金融政策)と「第2の矢」(財政政策)は、世界で標準的なマクロ経済政策だ。民主党政権時代、マクロ経済政策があまりにひどすぎたので、安倍晋三政権になってちょっとまともになったら、雇用が増えて企業倒産は減った。
民主党政権下で雇用は減少した。就業者数を傾向線でみると、3年余で30万人程度減少した。一方、安倍政権では、2年弱で100万人程度増加した。
企業倒産については、民主党政権でも安倍政権でも減少していたので、安倍政権での政策効果ではないという意見もある。しかし、減少スピードは両政権で異なっている。民主党政権では年間減少ペースは40件弱だったが、安倍政権では90件弱と減少スピードが2倍強になっている。
こうした雇用増や企業倒産減にも異論を唱える人たちがいる。そうした人たちは、「しばき上げ・清算論者」といわれる。デフレ論者の典型であるが、経営コンサルタントなどに一定の数がいるようだ。
共通しているのは、マクロ経済をまったく知らないことだ。例えば、失業とインフレ率の間には逆相関の関係があることが知られている。このため、デフレだと大きく失業率が高まる。ただ、インフレ率が2〜3%になるまで、失業率は大きく減らせるが、それ以上のインフレになっても失業率はあまり減らせない。
このため、先進国では2%程度のインフレ目標が設定され、できうるだけ失業を減らす政策がとられているのだ。適切な金融政策で、一定の失業率を達成しないと、誰でも意に反した失業を余儀なくされるからだ。
ところが、「しばき上げ・清算論者」は、失業や倒産はその人たちの努力不足であるという立場だ。普通にやっていれば常に完全雇用で、倒産はありえない−という立場ともいえる。