「真田丸」イベント大盛況の理由、仕掛け人が明かす成功の鍵は「スマホと地方紙」

[ 2016年12月14日 10:00 ]

真田丸特別連載(3)「連綿」最終回まであと4日

9月に長野県上田市でトークショーを行った草刈正雄(左)と山本耕史。全国からファンが詰め掛け会場は超満員に(C)NHK
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 様々な年齢層の視聴者を巻き込み、お茶の間を1年間魅了してきたNHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)は18日、最終回を迎える。放送開始当初から作品の出来栄えと相まって、出演者が参加したトークイベントは毎回大盛況。最終回に合わせ真田家発祥の地・長野県上田市では12日から17日まで怒とうの6日間連続トークショーを開催している。なぜ真田丸イベントは盛り上がるのか?イベントを手掛けるプロデューサーの吉岡和彦氏に聞いた成功の鍵は「スマホと地方紙」だった。

◆「新選組!」で確信、三谷氏作品はお客さんの役柄への思い入れ強く

 吉岡氏は脚本を手掛ける三谷幸喜氏が描いた2004年放送の大河ドラマ「新選組!」でイベント企画を担当。12年前の体験から真田丸イベントが成功する直感があったという。「三谷さんの作品は、役柄に対する思い入れができるドラマになると確信がありました。通常の大河イベントは俳優や女優を見るためにお客さんが来る。でも真田丸では堺雅人さんという役者名だけでなく、真田幸村を演じた堺さんとして認識してくれる。『この役者を見たい』より『この役を熱演する役者の話を聞きたい』気持ちになる。『新選組!』のときもそうでした。例えば、土方歳三を演じた山本耕史さんへの掛け声は『山本さーん!』ではなく『副長!』でした。その現象を肌で感じていたので、今回も同じようにお客様が来てくれると思いました」と三谷作品とイベントの親和性を説明する。

 真田昌幸役の草刈正雄(64)と石田三成役の山本耕史(40)が9月に上田市で行ったトークショーには、全国から約1500人のファンが詰め掛け超満員に。また、草刈が10月に参加した大阪城西の丸庭園でのパブリックビューイングには約5500人が集まるなど、各地で大きな反響を呼んでいる。

◆「テレビとスマホの関係は主客が逆転」冷静に捉えた“立ち位置”

 イベントを仕掛ける上でキーワードとしたのが「スマートフォンと地方紙」だ。「朝から夜中まで、とにかくいろんな番組を見ます」という吉岡氏。テレビを人一倍愛するからこそ、現在のテレビの“立ち位置”について冷静かつシビアに捉える。「テレビとスマホの関係は主客が逆転していると思う。スマホがテレビを見るためのサブツールではなく、いまやスマホで遊ぶためにテレビが使われているという発想で考えたいと最初の会議で話した。なぜなら、世間のほとんどの人にとってスマホを握っている時間が一日のメインになっている。メインであるスマホをサブだと捉えて、テレビを見てもらうためのツールなのだと言うのはテレビ側の思い上がりだと思う」と持論を展開。

 「もちろんテレビが王者を取り戻さないといけない、このままではいけないと思っていますが、現状はテレビを見てスマホを使ってSNSで感想を伝え合うのが現在のコミュニケーション。うまく循環するWin―Winの関係性が大切。デジタルツールでより楽しいコミュニケーションを取ってもらうためにテレビとデジタルの間をうまく繋ぐ方法のひとつがイベントです。面白いイベントを開催するとSNSで感想が拡散されファンが増える。役者さんからイベントにまた参加したいと言ってもらえたり、町や県からオファーが来る…という好循環ができました」。主客転倒の関係を柔軟に捉えた発想が、普段時代劇を見ないデジタル世代を巻き込んだイベント成功の一因となった。

◆地方の高齢者層とテレビ繋ぐ存在が地方紙

 デジタルツールを使う視聴者とは別に吉岡氏がアプローチ対象に挙げたのが地方に暮らす高齢者層。「デジタルツールを使っていない高齢者の方々とテレビとの間にあるのは何かな?とスタッフと話したときに出た答えが『地方の新聞』でした。NHKをあまり見ていない人も地元の新聞は読んでいる。地方紙のシェアは圧倒的なので、役者さんにはイベントで訪れた土地のローカル紙取材を極力受けてもらいました」。地元にまつわるネタが記事になり、役者との距離感が近くなることでドラマへの親近感も高まった。

 全国津々浦々で開催したイベントは、真田丸の物語と繋がりある場所にこだわる。青森県田舎館村の「田舎館村田んぼアート」では真田昌幸(草刈)と石田三成(山本)が描かれた。青森と真田丸は関係ないように思われるが…

 「実は関ケ原の戦いの後、田舎館村のある弘前藩が石田三成の遺児2人を匿った縁があるのです。いまも子孫の方がいらっしゃる。また、大谷吉継役を演じた片岡愛之助さんが和歌山の九度山にある真田ミュージアムを訪問しました。九度山になぜ吉継が?となりますが、吉継の娘は幸村のもとに嫁ぎます。片岡さんには、娘が幸せな時間を過ごした場所に父親として見に行ってくれませんかとお願いした。九度山に三成が訪れても意味がない。理由があると役者さんも納得できますし、訪れた場所との繋がりができる」。開催する意義を持つことでイベントに深みが増した。

 「その土地土地であった歴史をドラマ化しているから大河が終わっても、その街の歴史コンテンツにいろんな衣がついて残っていく。ドラマと相乗効果のあるイベントができる。そこが面白い。これからも大河ドラマをやりたいです」。1年間反響を呼び続けた“仕掛け人”の思いはひたすら熱く、真っ直ぐだ。

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