防衛最前線(69)

意外!? 熊本地震で先鋒を務めたのは空自のF2戦闘機だった

【防衛最前線(69)】意外!? 熊本地震で先鋒を務めたのは空自のF2戦闘機だった
【防衛最前線(69)】意外!? 熊本地震で先鋒を務めたのは空自のF2戦闘機だった
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熊本県で発生した大地震で、自衛隊の先鋒(せんぽう)を務めたのはF2戦闘機だった。防衛省によると、航空自衛隊の築城基地(福岡県)から2機のF2が飛び立ったのは同日の午後9時47分。震災発生から21分後の緊急発進だった。その後、陸上自衛隊の初動対処部隊「ファストフォース」や輸送ヘリなどが現地に向けて派遣されている。

災害支援には関係のないようにも思える戦闘機だが、被災状況をいち早く確認する上では絶大な威力を発揮する。

空自の各基地ではF2をはじめ、F15、F4といった戦闘機が、命令から5分以内で発進できる態勢を維持している。本来は日本の領空に接近する所属不明機に備えた措置だが、大規模災害時には任務を変更。情報収集の先駆けとして急派される。

空自幹部は「広いエリアの被害状況を短時間で把握するには、機動性の高い戦闘機が最も効果的だ」と説明する。

パイロットは被災地上空をできるだけ低速で飛行し、目視で地上を確認。津波被害の有無や家屋の倒壊、山崩れ、原発施設の状況などを無線で送る。これを基に、後続の地上部隊やヘリ部隊が現地に向かい、本格的な支援活動に当たる。

ただ、熊本地震での緊急発進は夜間だった。目視での状況確認の効果は限定的にも感じるが、空自幹部は否定する。

「例えば『暗闇で何も見えない』と報告があれば、少なくとも大規模な火災は発生していないと判断できる。震災下で最も怖い火災の有無がわかるだけで、第一報としては十分だ」と指摘する。

災害対応でも実力を発揮するF2だが、あくまで本分は戦闘機。対艦、対地攻撃に加え、航空戦でも能力を発揮する「マルチロール機」として高い評価を受けている。

日本独自の炭素繊維複合材技術により、軽量で継ぎ目のない機体を実現。同時に複数の目標を捉えることができることから「トンボの目」とも呼ばれるレーダーを、量産機としては世界で初めて搭載している。

武装は20mm機関砲、空対艦ミサイル、空対空赤外線ミサイル、空対空レーダーミサイルなどを備える。最大速度はマッハ2(時速2448キロ)。機体は全長15・5メートルで、F15やF4よりも一回り小さい。

米国のF16戦闘機をベースとした日米共同開発により誕生した。F16の愛称「バイパー(毒蛇)」と、F2が自衛隊に配備された2000(平成12)年をとって「バイパー・ゼロ」との愛称も持つ。それを操るパイロットは「チャーマー(『魔法使い』が転じて『蛇遣い』)」とも呼ばれる。(政治部 石鍋圭)

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