プロが指南 就活の極意

売り手市場で協定破りの企業続出 すでに内定が出ている2016年卒

就職活動に対する学生の意識差が広がっている。意識が高い層は、インターンシップに参加し、OB・OG訪問で企業理解を深めるなど積極的な活動をしている。しかし、意識が低い層は、就職活動に対して何も取り組んでいない。内定塾が主催する無料体感セミナーに参加する学生に聞いたところ「先輩たちが複数内定を獲得し、早々に内定をもらっているから自分たちも内定は獲得できるだろう」「就活のスタートが来年3月となるため、まだ動く必要はない」と答える学生が多い。

事実、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)レベルの大学関係者は、学生の動き出しが非常に遅いと話している。就活ガイダンスを実施しても去年200人参加していたが、今年は半分程度しか参加していないとのこと。理由として、就職活動の時期後ろ倒しが大きく影響していると考えているようだ。このように2016年卒の就職活動に対する動き出しは非常に遅いといえる。

経団連の指針が本当であれば、今の時期は就職活動のことを考えずに学業や学校生活を優先して、大学生としてさまざまな取り組みを行うことが可能な時期のはずである。

しかし、既に2016年卒の選考はスタートしている。外資系の企業やコンサル、IT企業などだ。選考だけではなく内定を出している企業も存在する。驚くことに外資系の企業やIT企業に限らず、経団連に所属している企業も内定を出している企業がある。来年の8月まで内緒にしていることを条件として内々定を出しているのだ。

このように学生の動き方と反比例して企業は早期に動き出しているのである。新卒の就職活動の状況としては、足元の新卒採用市場は急激に売り手市場化している。そのため企業の人材争奪戦は激しさが増すことが予想される。競争に勝つためには企業は繰り下げられたスケジュールなどは待っていられない。結局のところ就職活動の早期化・長期化になってしまうのである。

選考をまだ始められない企業も「母集団の形成」(自社の求人に興味や関心を持っている学生を集めること)に注力している。いち早く学生に自社の理解を深めてもらおうとインターンシップを実施し、大学主催のイベントに企業が参加するケースが多くなる。本来であれば2016年卒の新卒採用広報は来年3月に解禁となる。しかしそれよりも前に、学生に自社の存在をアピールしたいという企業は後を絶たない。就活情報サイトのリクナビ2016のプレオープンでは企業のインターンシップの情報掲載が過去最高の約2700社にまで上っている。

ターゲット採用を導入している企業も多い。上述したように企業は、来年の3月までに直接学生にアクセスできない。そのため3月までに優秀な学生に効率的にアクセスしたいと考える。その結果、企業は上位の大学でセミナーを開催するなど、大学によっても企業の対応に差が出てしまうのだ。学歴がある学生や早くから活動を開始している学生とそうでない学生で二極化してしまうのである。

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