胎動が始まっているサーバサイド・ノンリニア編集

ブラウザを使用して映像編集を行うサービスが、コンシューマーの娯楽分野で見られるようになった。サーバサイド・ノンリニア編集が、いよいよプロ映像分野でも活用されていきそうな予感!

Adobe Systemsが提供するPremiere Expressをご存じだろうか?WebブラウザとFlash Playerを使って、インターネット上でビデオ編集をして楽しめるサービスだ。サービスと書いたのは、Premiere ExpressはAdobeパートナーサイト用に提供されているからだ。現在、photobuketのremix機能とMTVのVideo Remixerなどで使用されている。MTV Video RemixerはMTVが用意したクリップを使用して繋ぎあわせて楽しむものだが、Photobuketのremix機能はユーザーのビデオクリップをアップロードして繋ぎあわせることが可能だ。特別なソフトウェアをインストールすることなく、ログインするだけで使用可能なことは、まさにサーバサイド・ノンリニア編集と言えるものだ。これらが簡易編集のみのエントリー分野だけではなく、プロフェッショナル分野でもいよいよ実現する。

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MAXeditインターフェース

MAXeditインターフェース

Inter BEE 2008にMAX-Tが出展したMAXeditがそれだ。基本的なコンセプトとしてはWebブラウザ上でSD/HDノンリニア編集を行うというもの。プロ映像分野向けにインジェストや、素材プロキシ作成、セキュリティなどにも配慮したものとなっている。MAX-Tが最初に投入するのはServer Editionで、専用のアプリケーションサーバと素材共有サーバを設置し、限られたユーザーがイントラネット上で編集作業を行えるソリューションで展開する。その後、時期を見ながら、プロバイダのサーバ上に機能を追加し、登録されたユーザーがインターネット上で編集を行えるサービスを実現できるWeb Editionを追加していくという。

カメラコーデックは、DVやHDVをはじめ、P2 HDやXDCAM HDにも対応する。さすがにWebベースでHD素材を直接編集することは厳しいので、素材として使用する段階で自動的にプロキシ映像が作成され、編集後にオリジナル素材を組み合わせて書き出す方式を採用。こうしたサーバサイド・ノンリニア編集が可能になると、ビデオ制作の可能性はますます広がってくる。

ビデオ1台と素材アップロード用のツール(ケーブルやカードリーダーなど)があれば、収録後にネットカフェに飛び込み、そこにあるマシンを使ってログインし、素材アップロードや編集作業ができる。大きなイベントなどでは、プレスルームにWebブラウジング用のPCやMacが設置されていることも多い。この環境が、そのままビデオ制作スタジオとなってしまう可能性もあるわけだ。

ただ、こうした移動編集環境には問題もある。ネットの接続スピードに依存しているからだ。特に、素材インジェストで使用するアップロード用の速度は重要だ。見知らぬ土地でネットカフェに飛び込んで使うという手軽さはある。しかし、飛び込んでみたもののアップロード側の速度が遅くて使えなかったということは可能性としてあり得る。こうしたサーバサイド・ノンリニア編集は、ネットアクセスが安定した臨時のサテライトオフィスなどで、大規模なノンリニア編集システムを導入することなく、ハイビジョン制作環境を素早く構築できるというフレキシビリティを重視すべきだ。

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