前回、このコラムでGoogle『Chrome Music Mixer』を使用したsalyu×salyu「ただのともだち」MVを紹介しましたが、ここのところ2、3年、分割画面を用いたインタラクティブ映像表現が大流行していますよね。ちょっとYoutubeを漁ってみると、MASASHI KAWAMURA氏のSOUR「日々の音色」MVのヒットにあやかった動画が大豊作。結婚祝いビデオや遠隔地にいる友人へのメッセージなど、人々が暖かくつながるツールとしてプライベート・ユースされたものが多数アップされており、思わず笑みがこぼれる一方、劣化コピーCM、MVの歴史的大豊作ぶりには苦笑を超えて大爆笑。まずは、本家をもう一度。

SOUR「日々の音色」

これとか酷いよね。

□סלקום ווליום ערד הפרסומת

やりたかったんだろうなあ。気持は分かる。だって作るのも、出るのも、楽しそうだもの。見る方は微妙この上ないけれども。あと、システム的にも演出的にも特に分割の必要性はないのに、なんとなく分割している映像も多々ありますよね。

GRAVY & TOAST MV

分割しているせいで見どころが分からない点がプロモーション・ビデオになっていないとみせかけて、視覚に集中できないから聴覚に意識を集中せざるを得ないというマジカルな手法で音を印象づけていますね(嫌味)。

MUSIC WITH 1000 PAIRS OF JEANS

こちらはオーダーメイドジーンズブランド「M Jeans」のプロモーション映像らしいです。特に目新しさはないものの、これでもかとジーンズを弄ぶ様が明解で潔いね。とりわけ気に入っているカットがチャックを上げ下げしてのスクラッチ。その理由は、長年の友人である某デザイン事務所の社長が高校1年の時に「俺、スクラッチできるよー」といって真顔で制服のチャックを上げ下げしたという恥ずかしいエピソードを微笑ましくも思い出したからなんだけれども。

Attack – Jus Soli Music Video

荒っぽいなー。楽しそうだなー。手持ちのPCのWebカムを介し、ネットワーク上で「今」を共有する、という方法論は、若者たちの「遊び」として流行しているんでしょうね。タダだしね。映像手法ではなく、コミュニケーションの在り方。この人たちは、多分、これをやりたかったのではなかろうか。

“PUNK?” Realtime Jamming with Ustream by the World Jam Band

こちらはギターとサンプラーを駆使して即興でライブを行う1人バンドMerce DeathによるJAMプロジェクト。4人のプレイヤーがWebカムを前に、個別に演奏しているのですが、それぞれがUstreamに同時アクセスし、同ホームページ上でセッションを行っています。まさにGoogle『Chrome Music Mixer』の生みの親。Merce Deathは、今話題のインタラクティブミュージックビデオアプリ「muse’ic vivualiser」を手がけた人物の1人でもあります。

muse’ic visualiser(iPhone App) ver.1.0 demo – salyu x salyu

Google『Chrome Music Mixer』を筆頭に、セッション感、共有感、参加型コミュニケーションといった楽しい遊びの機能を兼ね備えている分割映像が多く出回っているためか、ただ分割しただけの映像にはいささか拍子抜けするというか、物足りなさや一方的なコンテンツならではの古さを感じてしまいます。そう考えると、コミュニケーション機能にプロモーションの大義名分を加え、完成度の高い映像作品へと昇華させた傑作、SOUR「映し鏡」MVはすごいなあと、改めてMASASHI KAWAMURAの手腕に震撼いたします。

SOUR「映し鏡」

WRITER PROFILE

林永子

林永子

映像ライター、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。「スナック永子」やMV監督のストリーミングサイト等にて映像カルチャーを支援。