ヨドバシ、大都市で攻勢 名古屋でも「駅前・大型」
札幌・新宿も大型化
家電量販店3位のヨドバシカメラが、2016年度に開業するJR名古屋駅の駅ビルに出店する計画が22日、明らかになった。ヨドバシは大都市で攻勢を強めており、11月には京都市に出店。札幌市や東京・新宿でも店舗の大型化の準備に入った。都市部では大手家電量販の競争が過熱しているが、ヨドバシは高い収益力をテコに百貨店跡などで勢力を拡大する。
東海旅客鉄道(JR東海)が22日、松坂屋名古屋駅店跡に建設する「名古屋駅新ビル(仮称)」のテナントについて、ヨドバシに優先交渉権を与えたと発表した。地上46階建ての9~11階(延べ床面積計2万3000平方メートル)に出店を想定しているという。
ヨドバシは昨秋に閉鎖した西武札幌店を80億~100億円で買い取る交渉をセブン&アイ・ホールディングス相手に乗り出している。今夏には新宿西口本店前のビルも取得。増床が実現すればともに売り場面積は倍以上の2万平方メートル超となる。来月5日に近鉄百貨店京都店跡に開く店も同程度の規模があり、店舗の大型化を進める姿勢が鮮明だ。
ヨドバシの収益力の高さは家電量販業界では目を引く。同社は非上場企業で単体決算しか開示していないため、連結決算の他社と単純比較はできないが、売上高経常利益率は7%と最大手のヤマダ電機を2ポイント上回る。
店舗数は20店とヤマダ(約580店)や2位のエディオン(約420店)などに比べて少ないが、大半は東京や大阪など大都市のターミナル駅前に展開する。集客力を伴う好立地は営業効率の高さに結びついており、例えば従業員1人当たりの売上高は1億6700万円。ヤマダの1億700万円やエディオンの4800万円を大きく上回る。
駅前店を中心に展開するのは5位のビックカメラも同じだ。ただテナント出店が多いビックに比べ、ヨドバシは出店用地を自前で取得するケースが多く、出店ペースはこれまで数年に1店程度と緩やかだった。償却負担や賃料は相対的に軽く、売上高販管費比率は11%と他社水準を下回る。
1990年代以降、家電量販店の多くが、郊外などでの大量出店と同業のM&A(合併・買収)で規模を膨らませた。だが市場の飽和感が強まる最近では、価格競争の激化で財務体質が悪化、不採算店閉鎖に追い込まれる企業もある。
ヨドバシは拡大競争とは一線を画し、着実に利益を積み上げてきた結果、09年3月期の自己資本比率は53.4%。同社を除く家電量販大手4社直近の平均である38.8%に差をつける。財務的な強みが百貨店の退店などで有力物件が増えた現在、その買収やテナント入札などの競争を制する原動力となっている。