成年被後見人に選挙権 今夏の参院選から適用
成年後見人が付いた人は選挙権を失うとした規定を削除し、成年被後見人に選挙権を付与する改正公職選挙法が27日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。約13万6千人(昨年末時点)の選挙権が回復し、今夏の参院選から適用される。成年被後見人や家族らは「また投票に行ける」と、待ち望んできた1票の回復に喜びの声を上げた。
■投票を補助
今回の改正公選法は、被後見人に認められる代理投票の際に必要な補助者について「投票管理者が投票所の事務に従事する者のうちから定める」と規定した。
東京都選管によると、これまでも知的障害者が投票用紙に候補者名を書けない場合などには区市町村の職員2人が補助。1人が投票する候補者を確認して代筆し、もう1人が不正がないかチェックしている。成年被後見人についても同様の対応をする。
ただ、どの候補者に投票したいのか確認が難航することも想定される。都内の区選管幹部によると、過去には知的障害者の意思が確認できず、付添人に説明して投票を諦めてもらったこともあったという。
■現場に困惑も
不在者投票での不正防止のため、改正法は、区市町村や選挙管理委員会の職員らを立ち会わせて「公正な実施の確保に努めなければならない」と定めた。
あくまでも努力規定だが、千葉市選管の職員は「立会人に誰を選べばいいのか分からない。人繰りにメドをつけるためにも、国は早めに基準を示してほしい」と注文する。
知的障害者の投票を支援してきた元施設職員、柴田洋弥さん(69)は「家族らとは意思疎通できても、初対面の選管職員とはうまく話せない障害者もいるだろう」と指摘。「代筆などの単純な補助だけでなく、何とか本人の意思をくみ取り、投票できるようにするサポートの仕組みを導入すべきだ」と話している。
■訴訟は継続
成年被後見人に選挙権を与えないとしたこれまでの公選法の規定について、3月の東京地裁判決は違憲で無効と判断。自民、公明両党は5月に「立法府として重く受け止め、公選法の改正に早急に取り組むべきだ」として法改正案をまとめた。野党も法案の共同提出者に名を連ねて協力し、早期の法改正につながった。
ただ、法改正のきっかけとなった訴訟について、政府は違憲判決が直ちに確定すると混乱を招く恐れがあるとして東京高裁に控訴。新藤義孝総務相は21日の記者会見で「選挙権付与に反対するわけではないが、裁判は裁判として手続きにのっとっていく」と説明した。
控訴審は7月17日の第1回口頭弁論で即日結審し、夏にも判決が言い渡される見通し。原告側の弁護団によると、法改正によって被後見人が選挙権を求める理由がなくなるため、一審判決が破棄され、原告の請求は却下される可能性が高いという。