黒田アジア開銀総裁、物価2%の達成期限「2年は適切」
アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁のインタビューの主なやり取りは次の通り。
――安倍晋三首相が掲げる「アベノミクス」をどう評価する。
「ADB総裁としては先進国の政策をとやかく言う立場にはない。ただ個人的な感想としては、3つのエレメントでデフレを克服する一方、中期的な財政再建を堅持し、成長力を高めていくのは適切な政策だと思う。日本経済の問題にたいして適切に対応するものだ」
――円安の進行に海外から批判の声も上がる。
「リーマン・ショック後、アジア通貨がドルに対して暴落し、そのドルに対して円がさらに上昇し、円とアジア通貨のギャップがものすごく開いた。アベノミクスが影響を与えたかもしれないが、基本的には行き過ぎた円高、アジア通貨安の是正の過程だと思う」
――日銀が設けた2%の物価目標で、デフレ克服は可能か。
「日本のデフレは15年続いている。先進国でこんな例はない。グローバルスタンダードでは物価安定は中央銀行の責任だ。米国もユーロ圏もリーマン・ショックの後ですらデフレもたらす要因があったはずなのにデフレに陥っていない。日銀が過去15年にわたって十分責任を果たせていなかったのは事実だ。2%の物価目標を設定し、できるだけ早期に実現するというのは、非常に画期的で正しい」
――2%の達成期限は。
「2年ぐらいというのは適切な期間だと思う。できるだけ早期に目標を実現すると明確なコミットメントを示したことが非常に重要だ」
――海外からは「近隣窮乏化だ」との批判の声も上がる。
「日本経済にとって最大の課題はデフレからの脱却だ。15年もデフレが続いているのは異常だ。日本経済にマイナスの影響を与え、その結果として世界経済にもマイナスの影響与えている。それを直そうということ自体は日本にとって正しいだけでなく、世界経済にとっても正しいと思う」
――安倍政権が掲げる外債購入による円高是正をどう考える。
「金融政策の具体的な手段はどこの国でも中央銀行に任されている。日本国内には国債、社債、その他いろいろの仕組み債などあらゆる金融資産が山のようにある。日銀が量的緩和を進めるうえで、(購入できる)国内金融資産はまだ十分にある。円高是正のための外債購入は介入政策だから、財務省の話だ」
――3月に交代が迫った日銀総裁の後任人事で、有力候補として名前が取りざたされているが、どう受け止めている。
「まだADB総裁としての任期が4年近く残っていて、今の仕事に十分満足している。それ以上は何とも申し上げられない」