下り線から避難できず現場に戻る 笹子トンネル崩落
山梨県の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故で、非常用の避難連絡口からいったん反対の下り線トンネル内に逃げ出したドライバーらが、車のスピードなどに危険を感じ、事故現場の上り線に戻っていたことが19日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、複数の人が「避難口の扉が開かなかった」と証言していることも判明。「なんとか開けた」と話す人もいたが、下り線から逃げた人はいなかった。
県警は二十数台のドライバーや同乗者から聴取。避難口が十分に機能しなかった可能性があり、保守点検に不備がなかったか捜査を進めている。
事故では車両火災が発生しており、避難の遅れや事故現場に戻る行動は、被害の拡大につながる恐れがあった。
中日本高速道路会社によると、避難口はすべて下り線トンネル内に出る構造で、500メートルおきに8カ所設置。点検の際に作業員が歩くスペースはあるが、捜査関係者によると、避難口から出た人は高速走行の車が怖くて歩けなかったなどと話している。
同社は事故翌日の点検で避難口を確認し、「一部にやや固い扉があったが、開かないということはなかった」と説明。半年に1度点検し、事故前の7月の点検時に異常はなかったとしている。
鈴木猛康山梨大教授(防災工学)は「古いトンネルの場合、避難口など付帯設備の経年劣化も懸念される。付帯設備に関する点検の統一基準を設けるべきだ」と話している。〔共同〕