「蒲蒲線」事業費1260億円、矢口渡―京急蒲田間で大田区試算
東京都大田区は28日、JR・東京急行電鉄蒲田駅と京急蒲田駅などを結ぶ構想の新空港線(蒲蒲線)のうち、東急矢口渡駅―京急蒲田駅の事業費が1260億円になるとの試算結果を公表した。投資額に対する経済効果の高さを示す「費用便益比」の試算は1.5で、事業推進の目安となる1を上回った。同区は試算結果を踏まえ、関係者に事業実現を呼びかける。
同日開いた蒲蒲線の整備促進区民協議会で公表した。試算した区間は、矢口渡駅から蒲田駅に向かう途中で地下に入り、そのまま京急蒲田までつなぐ区間。開通すれば、東急田園調布駅から羽田までの所要時間は30分、中目黒駅からは37分となり、それぞれ従来に比べ20分、11分短縮できるという。累積資金収支は31年かけて黒字化する。
事業化する場合は、線路やトンネルなどの施設を整備する主体と、電車を運行する主体を切り離す上下分離方式の採用を見込む。区は整備主体となる第三セクターを2017年度中に設立したい考えで、営業主体は東急を想定している。
今回の試算は京急蒲田駅までだが、蒲蒲線は最終的に京急蒲田駅から大鳥居駅の手前までも地下で結び、羽田空港まで乗り入れる構想。東急と相互直通運転する東京メトロ副都心線などを使えば、池袋や新宿などと羽田との行き来が格段によくなる。
蒲蒲線については、交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)が昨年まとめた東京圏の鉄道に関する答申で「意義がある」路線のひとつに挙げた。都心と空港を結ぶアクセスを改善し、東京の国際競争力向上につながると評価された。
ただ都心と羽田を結ぶ路線は、都心の地下にトンネルを掘って京浜急行電鉄の泉岳寺駅と京成電鉄の押上駅をつなぐ都心直結線、東日本旅客鉄道(JR東日本)が計画する羽田空港アクセス線も答申に盛り込まれた。3路線が競合すると、収益面に課題が残る。
事業費も従来より重くなる。区はこれまで、矢口渡―京急大鳥居駅の総事業費が1080億円と試算していた。今回の試算は一部区間に限って行ったが、それでも資材価格や人件費の上昇などで金額が増えた。事業費が膨らめば「費用便益比」も低下する恐れがある。国や鉄道事業者を含めた関係者との合意形成にも影響しかねない。