東南ア3カ国が合同警備開始 比ミンダナオ島沖、対ISで協力
【タラカン(インドネシア北部)=鈴木淳】インドネシア、フィリピン、マレーシアの3カ国は19日、比ミンダナオ島沖の海域などでの合同警備を始めた。3カ国の境界が入り組む海域で過激派組織「イスラム国」(IS)を信奉するグループによる船員誘拐事件が多発し、テロリストが密航している疑いも出ていることに対応する。
3カ国の国防相らが19日、現場海域に近いインドネシア北部の港湾都市タラカンで会談した。同地の海軍施設内に合同警備の司令センターを設置し、フィリピンとマレーシアにもセンターを設置して情報を共有する。会談にはシンガポールとブルネイもオブザーバーとして参加した。
19日に始まった合同警備はミンダナオ島沖のスールー海を中心に、主に海と空から不審船の監視を行う。インドネシアのリャミザルド国防相は「3カ国の周辺からテロリストの問題がなくなるまで続ける」と述べた。
ISの活動が活発なミンダナオ島はインドネシアやマレーシアと近く、戦闘員らが行き来している可能性が高い。マレーシアでは16日にフィリピンでISの戦闘に参加しようとしたインドネシア人らが逮捕された。
今後、こうした地域間の対テロ協力が東南アジアのほかの地域に広がる可能性もある。リャミザルド氏は4日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で「ミンダナオ島のような状況が広がるなら、シンガポールやタイなどにも参加を求めたい」と述べた。シンガポールのウン・エンヘン国防相は地元メディアに海上合同警備に参加する意向を示した。
ミンダナオ島の西部マラウイ市では、ISを支持する「マウテ・グループ」が独立国家を築こうとして、フィリピン軍などと交戦、市民を含む多数の死傷者が出ている。外国人戦闘員も集結している。ISに忠誠を誓う「アブサヤフ」もミンダナオ島沖で、石炭運搬船などを襲って、身代金目的誘拐を繰り返し、テロの資金源にしている。
3カ国はもともと昨年5月に合同警備の実施で合意していた。自国民が人質に取られたインドネシアは合同警備に積極的だったが、昨年6月に誕生した比ドゥテルテ政権は当初、憲法上の制約などから合同警備に「消極的だった」(外交筋)という。地域でのISの脅威が以前よりも深刻になり、合同警備の実施が決まった。