筑波大発VBの装着型ロボ、医療機器に初承認
厚生労働省は25日、足の働きが衰える難病患者の歩行機能を改善する医療機器として、筑波大学発ベンチャーのサイバーダインが開発した装着型ロボットの国内販売を承認した。ロボットの医療応用は内視鏡手術を支援する製品が承認済みだが、患者が身にまとうような製品は初めて。厚労省は保険適用も検討しており、政府が成長戦略で重点を置くロボットが医療現場に広がる可能性が出てきた。
承認されたのは「HAL医療用下肢タイプ」。全身の筋肉が次第に動かなくなるALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症など8つの難病のいずれかと診断され、体重や身長などの条件を満たした患者が対象となる。
ロボットの技術は筑波大教授でサイバーダイン社長の山海嘉之氏が開発した。病気で歩く機能が低下した患者が下半身に装着する。太ももなどに電極を取り付け、患者が動こうとしたときに脳神経系から発する微弱な信号を検知。モーターでロボットが動き、患者の関節が動きやすいように補助する。体が歩き方を思い出し、機能改善につながるという。
ALSや筋ジストロフィーの患者は少しずつ筋肉が衰えていく。承認を受けたロボットは病院内の施設で患者に使ってもらうことを想定。歩く動作を繰り返して病状の進行を遅らせたり、足の働きを取り戻したりする。
国立病院機構新潟病院などでの臨床試験(治験)では、患者24人が約3カ月間で9回の歩行運動に取り組み、何もしない患者に比べて歩ける距離を延ばした。
山海社長は「まず新潟病院など8つの病院に導入したい」と語る。保険が適用されれば、今後は脊髄系の病気への対象拡大を目指す。
ドイツなど欧州では既に医療機器の承認を受けている。ドイツでは1~1時間半を費やす1回の治療で500ユーロ(約6万5000円)かかる。公的医療保険は申請中だが労災保険が使えれば60回分が全額カバーされる。脊髄損傷の患者による利用がほとんどだという。
医療機器としてのロボットには内視鏡手術支援用ロボット「ダヴィンチ」があるが、患者が装着するタイプは初めてだ。
前例のないロボットを医療機器として承認するには難しさもある。それでも販売を認めたのは、難病や高齢化に伴う障害の克服には新薬開発だけに頼っていられないからだ。そこで急速に進歩するロボットに白羽の矢が立った。国も成長戦略でロボットや医療機器の強化を打ち出している。
サイバーダインは3月、厚生労働省に医療機器としての承認を申請。優先審査の対象となる「希少疾病用医療機器」として当初は申請から9カ月での承認取得を目指してきたが、8カ月で審査が終わった。山海社長は想定を上回る審査スピードに「新しい医療産業をつくる上で大きな改革が進んでいると実感する」と話す。