国外犯罪被害者救済で法成立 弔慰金の条件厳しく
国外で犯罪被害に遭った人や遺族への補償を定めた「国外犯罪被害弔慰金支給法」が今月、国会で成立した。法成立には2013年に日本人3人が犠牲になった米領グアムでの無差別殺傷事件の遺族関係者らによる尽力があったが、支給の条件が厳しく、一時金も少額にとどまるなど課題も残る。
「手放しでは喜べない」。同法が成立した1日、グアム無差別殺傷事件で夫の横田仁志さん(当時51)を亡くし、顔や両脚に大けがを負った美智子さん(54)=茨城県潮来市=に笑みはなかった。
美智子さんは骨を移植するなどした結果、つえを使っての歩行や仕事もできるようになった。国内の犯罪被害には障害の程度や被害者の年齢、収入に基づいて算出された一時金が支給されるが、当時国外の犯罪被害には同様の制度がなく、家族の援助や保険金で治療費を払ってきた。
美智子さんのような被害者を支える制度がないと知った横田さん夫妻の同級生らが署名活動を展開。警察庁や国会議員に法制定を訴えてきた。
成立した弔慰金支給法は死亡で200万円、障害が残った場合で100万円を支給するという内容。障害の場合、「両目の失明」や「両下肢を膝関節以上で失う」など条件も厳しい。施行後の犯罪被害が対象で、美智子さんは「私の障害の程度ではいずれにせよ対象外。支払われたとしても、手術や入院の費用は到底賄えない」と嘆く。
制度化を訴えてきた同級生の羽生唯仁さん(55)=同県行方市=は「これからがスタート。この法律をさらに拡充するよう、これからも訴え続ける」と力を込めた。〔共同〕