夫婦で勝ち取った「銅」 柔道女子の広瀬順子
【リオデジャネイロ=伴正春】「やったな。よかったよかった」。リオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害柔道女子57キロ級で銅メダルを獲得した広瀬順子選手(25)は、夫で練習パートナーの悠選手(37)から祝福を受けた。はにかみながら「明日がんばって」と順子選手。夫婦で鍛えて初舞台で結果を出し、同柔道男子90キロ級代表の悠選手にしっかりとバトンを渡した。
準決勝で敗れて迎えた3位決定戦。順子選手は積極的に技をかけ、一本背負いから寝技に持ち込み一本勝ち。一礼して畳を下りると、夫がいる観客席をうれしそうに何度も見やった。試合後のインタビューでは「本当に旦那さんが指導してくれて取れたメダルでもあると思うので、すごく感謝しています」と満面の笑みを浮かべた。
山口出身の順子選手は小学2年で柔道を始め、高校総体にも出場。大学生の時に難病で視界が狭くなり、畳から離れた。だがたまたまゴールボールの試合を見て「一生懸命スポーツしている人は輝いている」と感じ、障害者として柔道に復帰。「明るくて一緒にいて楽しい」という悠選手とは柔道の国際大会で知り合い、昨年順子選手からプロポーズした。
同じ会社に所属する2人は地元松山の大学や高校の柔道部の練習で技を磨き、一緒に走ったりジムに通ったりして体を鍛える。互いに視覚障害者で、日常生活も協力し合う。「結婚してから練習に打ち込めるようになり、柔道が楽しくなった」と順子選手。特にこの1年は苦手だった寝技と筋力強化に努めた。
最後はその寝技で念願の銅メダルをもぎとった。翌日に試合を控え、観客席から声援を送った悠選手は「2人でやってきたことが報われた。教えた寝技で決めてくれたのが本当にうれしい」と感無量の様子。「明日の自分の試合もがんばろうと思った。僕も銅メダルを目指します」とおどけてみせた。
試合会場で観戦した順子さんの父、三輪茂之さん(57)は「障害を持った時はせめて自立して生活できればと思った。でも結婚もして、柔道でも結果を出して。娘の前向きな気持ちと行動力のおかげ」と感慨深げに表彰台に立つ娘を見つめていた。