3大会ぶりの五輪出場が決まり、来年のリオデジャネイロ大会に向けて注目が集まる女子バスケットボール界。

五輪切符を手にした晩夏のアジア選手権(中国)を戦い抜いた日本代表選手たちが、さらなる進化を求めて戴冠を競い合う女子Wリーグは、10月9日に開幕を迎え、来年3月のプレーオフ・ファイナルまで長い戦いが続く。

今季、そのリーグの会長に就いたのが、女性起業家の斎藤聖美さん(64)。00年に国債電子取引システム運営会社(株)ジェイ・ボンド(現ジェイ・ボンド東短証券株式会社)を設立した、すご腕経営者だ。

 リーグ開幕の発表会見があった10月5日、ひな壇の上にずらりと並んだ長身選手たちの中心に、1人の女性が立った。「私は本当に選手としてはまったくでしたので、このようなところに立ち、話をさせていただくのは…」。恐縮の言葉を述べながらも、口調は明るい。確かに、お茶の水女子附高、慶大(同好会)では選手としての目立った成績は残していないが、経済人としてのキャリアはトップを走る。米国留学でMBAを取得した後、モルガン・スタンレー投資銀行を経て、00年にベンチャー企業を立ち上げた。国債のオンライン取引システムの提供を一手に引き受け、女性起業家として高い評価を受けている。

 これまでスポーツ界とは縁がなかった。それがいきなりのリーグの会長。ただ、思い描くリーグの姿はある。「いまは少し華やかさがないと感じます。応援する人も一体となって楽しむ雰囲気がないとだめですよね」。米国留学中に、アメフットなどのエンターテインメント性を会場で体感した。その雰囲気が忘れられないという。「ビジュアル面も充実させて、もっと空間の使い方をうまくしたい」。小規模の体育館での開催が目立ち、演出にも制限がある。それを変えていきたい。

 そのための最優先事項は? 「まずは財政面だと思います。そのあたりの努力をしたい。スポンサーですね」。経済界の人脈を駆使して、女子バスケの「応援者」を探す。「お金だけでなく、さまざまな面で応援してくれるスポンサーを見つけていきます」と力強く話した。

 さっそく、13年ぶりにWリーグのオールスターを復活させたが、改革はまだまだこれから。会長就任直後に五輪出場が決まり、周囲からは「運を運んできてくれた」と喜ばれると言うが、本人は「この運をどう生かすか、ですから」と気を引き締める。代表の強化は、国内リーグの盛り上がりなしにはあり得ない。16年リオだけでなく、20年東京五輪に向けても、その手腕に期待が高まる。

 

 ◆斎藤聖美(さいとう・きよみ)1950年(昭25)12月1日、東京都生まれ。73年慶大経済学部卒、81年ハーバード・ビジネススクール(経営大学院)卒。著書に「そうだ! 社長になろう」「女の出発(たびだち)ハーバード・ビジネススクール」ほか。日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」審査員なども務めた。