スマートフォン版へ

メニューを飛ばして本文へ移動する

これまでの放送

第133回 2010年1月12日放送

あきらめなければ、道はひらける 研究者・浅川 智恵子


自分にできることは、限られている

研究者・浅川が取り組むのは、視覚障害者や高齢者、また貧困などによって学校へ通えず、字の読めない人たちであっても、IT技術によって、さまざまな情報を簡単に手に入れられるようにする、いわばITのバリアフリーの研究だ。ホームページを音声で読み上げるソフトウェアの開発など、画期的な技術を次々に世界へ発信し続けている。7人の部下を率いるリーダーとして、浅川が大切にしているのが、多くの人を巻き込み、高い目標に向かって一緒に研究を進めていくことだ。14歳の時、事故が原因で失明した浅川。以来、1人で出来ることが制約される人生と向き合い続けてきた。浅川は、働きながら博士号を取得するなど、人一倍の努力を重ねながらも、多くの人の力を結集させることで初めて、1人では思いつきもしなかったような斬新(ざんしん)な研究が生まれることを確信している。

写真新しい研究は会議から生まれる。メンバーの思いを一つにするのが浅川の重要な仕事だ


あきらめなければ、必ず道はひらける

昨年秋、浅川は中国北京で、困難な話し合いに臨んでいた。相手は、中国理工系大学の最高峰、清華大学。高齢者向けのIT技術に関する共同研究をしたいと、申し入れていた。しかし、世界の企業が手を組みたいと熱望する名門大学。パートナー選びのハードルは高く、反応は芳しくない。だが浅川は動じず、自分たちの考える研究の可能性を語り続ける。「日本と中国だけではなく、世界にインパクトを与える研究になる」。決してあきらめることのない浅川の姿勢が、共同研究の可能性を少しずつ切り開こうとしている。

写真どんなに厳しい状況でも、最後まで突破口を探る


苦しいと思うまで突き詰めたら、道はひらける

この秋、浅川には気になる部下がいた。入社5年目、プログラミングの腕が高い、期待の若手。骨太の研究者に育てるべく、新しい研究テーマの中心メンバーに抜てきした。しかし、「研究を実現させられる可能性が低い」と行き詰まってしまった。そこで、浅川が下した決断は、得意のプログラミングを捨てろというもの。研究で大事なのは、わくわくするような可能性。プログラミングにこだわり、実現可能性にとらわれていては、画期的な発想は生まれないと考えたのだ。これは浅川にとって、若手の自信を奪いかねない、大きな賭けだった。しかし、浅川は、苦しみ抜いた先には、新たな道が必ず待っていると信じている。

写真困難な研究に挑む浅川。リーダーとして覚悟を抱き、若手と向き合う


プロフェッショナルとは…

不可能と思える課題であっても、それに挑戦して努力をし続けられる人。そして、その結果として、その自分のそれぞれの技術エリア、技術レベルを一歩も二歩も前進させて、次の世代に引き継いでいくことができる人

浅川智恵子

The Professional’s Tools

点字メモ機

目の見えない浅川。ミーティングや電話中に取るメモは、携帯用の点字メモ機を使う。メモ機には、大量の文書をデータとして保存し、それを点字で読める機能もあり、移動中に論文を読むこともできる。浅川は、こうした道具を駆使して、猛烈なスピードで仕事を進めていく。

写真浅川の研究を支えるアイテム


関連情報

Blog