ベック、行ってきましたよー。
やー、よかったなぁ。10月31日、赤坂ブリッツ。行けなかった人のために、今回も曲目リスト、サービスしちゃいましょう。
まさしく現代のポップ・ヒーローだねぇ。元プリンスの新作が出るとかで、本人が来日してのコンベンションが開かれるとかなんとか、レコード会社からエラソーに夜中いきなりの迷惑FAXが来たりしてる昨今ですが。そんなもん、どれほどの価値があるんじゃいっ……と言いたくなるくらいの勢い。“今”の息吹はこっちだよ。あの夜の赤坂ブリッツにこそ、“今”があった。
かっこいいなぁ、ベック。なんか、こいつ素姓が不明だったけど、聞くところによると、デヴィッド・キャンベルの息子なんだって? ホントかウソか知らないけど。もしホントなら、音楽的素養ばっちりなんじゃん。既成の音楽フォーマットをきっちり知り抜いたうえでのポップ・ミュージックに対する狼藉なわけだよね。だから、すごいんだろうな。伝統的なフォーク・ブルースやらカントリーやらをかっちり底辺にたたえつつ、オルタナティヴやヒップホップに好奇心満々のアプローチを繰り広げる、と。でもって、それがまさに今を体現するポップ・ミュージックへと昇華する。
理想的。理想のポップ・ヒーロー。今回の東京公演も、ギター、ベース、ドラム、サンプラーその他担当……の4人のバック・バンドを引き連れて、バカのりのステージ。中盤はもちろん生ギター一本の弾き語りフォーク/カントリー・コーナー。たっぷり見せていただきました。
この中盤のソロ・セットはもちろん、バンドを引き連れての演奏でも、ぼくは思っきしカントリー・ロックを感じてしまった。今ちょうどぼくの中でグラム・パーソンズを中心にする70年前後のカントリー・ロックがブームだからってわけじゃなく。ベックには確実にパーソンズにも通じる、ぐっと内省的かつコズミックなカントリー・ロック・テイストがある。そうそう。アンコールでは、かつてグラム・パーソンズが身につけていたような、白地に金の刺繍が入ったカントリー・スーツみたいなやつを着て登場したし。自虐もこめて、そうした自らのルーツをさらけ出す中で生まれたのがベックのとんでもなくイマジネイティヴなポップ・ミュージックなんだってことを改めて再確認した。
セカンド・アルバムのタイトル“オディレイ”って言葉が印象的にリフレインされる「ロード・オンリー・ノウズ」って曲なんか、もうタイトルからしてカントリー・ロックだよなぁ。CDで聞いているときからそう感じてたけど、実際にステージで見て、ますますその感触を確かにした。こりゃ、もう、もろ平成のフライング・ブリトー・ブラザーズです。
あと、すごいなと思ったのは、CDのヴァージョンをほとんどそのままの形でステージでも再現しつつ、さらにワイルドにグルーヴしていく様子かな。底力あるわ。
でね。実はぼく、来週ベックにインタビューできることになってるわけですよ。なってるんだけど。今回、ベックはここまでの取材を全部トバしちゃってるらしいのね。風邪をひいたとか言って。風邪がひどくて、ヘタするとステージも中止しなきゃいけないかもしれないとかいう噂も耳にしたんだけど。
でもね。ワタシ、見た限りでは、どこが風邪やねんっ! ってくらい元気なステージだったからなぁ。踊りまくってるし、ギター弾きまくってるし、シャウトしまくってるし。ハロウィーンだったもんだから、動物のかぶりものまでしてハシャいでたよ。うーむ(笑)。さあ、ぼくの取材の運命やいかに。トぶのかな、やっぱ。まあ、いいけど。