東日本大震災アーカイブ

消える富岡のシンボル 夜ノ森駅のツツジ撤去へ

夜ノ森駅のツツジを観賞できるようにシーズンになると列車は低速運転をしていた=平成22年5月

 桜並木と並ぶ富岡町のシンボルとして知られるJR夜ノ森駅のツツジ約6000株がJR常磐線の全線復旧を目指す工事に伴い撤去される見通しとなった。町が3日、町議会全員協議会で明らかにした。
 町によると、8月にJR東日本から復旧作業の本格化に向けて駅構内の放射線量の低減を目的に撤去する方針が示された。町はツツジは町民から愛されており、地域の象徴でもあるため再考を求めた。JRは一部を駅舎北側に移植する案を示したが、意向は変わらなかったという。JRは11月下旬に夜ノ森駅の除染を始める計画で、町は復旧の加速化にやむを得ないと判断した。
 議員からは「住民の避難で手入れも十分にされていない。撤去は致し方ない」と町の方針を容認する声や「町のシンボルだ。できるだけ残す方法を検討すべきだ」などの声も上がった。町は議会の意見を踏まえ、一部移植などを柱とした代替案をまとめてJR側に示す。
 JR東日本水戸支社は「町の意見を聞きながらできる範囲で対応していきたい」としている。
 ツツジは昭和14年に植樹が始まった。土手の両側を6000株が彩り、56年に全国花いっぱい「花と緑の駅コンクール」で最優秀賞に輝いた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故前は周辺住民が下草刈りなどを担っていた。駅を通過する「特急スーパーひたち」は乗客が観賞できるよう見頃に合わせてスピードを落として運行していた。原発事故で駅は帰還困難区域に入っている。

カテゴリー:福島第一原発事故