07/07/31 平成19年度第3回目安に関する小委員会議事録          平成19年度 第3回目安に関する小委員会議事録          1 日 時  平成19年7月31日(火)10:00〜12:00、17:00〜 2 場 所  厚生労働省労働基準局第1、第2会議室(10:00〜12:00)        厚生労働省第二共済組合宿泊所茜荘  (17:00〜) 3 出席者   【委員】 公益委員  今野委員長、石岡委員、勝委員、藤村委員   労働者委員 勝尾委員、加藤委員、田村委員、中野委員        使用者委員 池田委員、川本委員、原川委員、横山委員   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、前田勤労者生活課長、              植松主任中央賃金指導官、吉田副主任中央賃金指導官、              吉田課長補佐 4 議事内容 (第1回全体会議) ○今野委員長  ただ今から第3回目安小委員会を開催いたします。  午前中の会議は、公益の勝委員が欠席されています。  前回の小委員会までに労使各側から本年度の目安についての基本的な考え方を表明して いただきました。端的な数字で申し上げますと、労働者側からは50円、使用者側からは明 確な数字では言われませんでしたが、第4表尊重ということを考えると5円ということだ ったかと考えております。  まずは、労使各側から、追加して主張されたいことやその他御意見がございましたらお 伺いしたいと思います。  まず、労働者側から、何かありますでしょうか。 ○中野委員  2点だけ申し上げたいと思います。前回の使用者側からの意見にも関わりますが、1つは、 春の賃上げの波及効果の関係についてですが、高度成長の時は大手の業績は上がって、そ れが社会配分されるという波及効果があったのですが、90年代後半からその効果が薄れて きていると思います。特に、大手の企業では一時金の業績連動、あるいは業績配分をする に当たっては一時金でという動きが強まっておりますので、中小企業の賃金はあまり上が っておらず、結果として経済成長の果実が賃金全体に行き渡らなくなったと考えておりま す。特に昨今、先ほど申し上げたように業績の還元は一時金でという傾向が強まっており ますから、その意味ではその傾向はさらに強まっていると考えております。したがって、 最低賃金の決定は経済成長の果実を全国民に行き渡らせる社会的な賃金決定システムとし ての意義が非常に高まっているのではないか、というのが1点目であります。 2点目は、私JAMの出身で現在JCに出向しておりますが、今年のJC大手の賃上げは1,000 円程度のベアですが、企業は大きな収益を上げており、一時金の伸びは非常に大きい状況 です。このような時期でありますので、例えば取引関係で優越的な地位の濫用などの不公 正な取引があるとすれば、実は私はあると思っておりますが、具体的な事実をここで例示 することができませんので、このような表現をしておりますけれど、あるとすればそれを 直す好機であると思います。つまり、大手企業は大きな収益を上げて、従業員の固定的な 還元は少ないわけですから、その意味ではこういうものを是正して、中小企業なり零細企 業の取引条件を引き上げる状況にあるのではないか考えています。もしその結果、大手企 業の収益が低下すれば、低下分は次年度の業績の一時金に反映されるわけであります。昨 今のように、業績の一時金反映が強まっている中では、特に一時金への反映によって、組 織労働者を中心とした大手企業の従業員の年収は下がります。そういう循環過程というも のも、中小企業であったりワーキングプアとされる人たちを救済するためには非常に重要 ではないかと、その意味でも最低賃金の決定は循環過程を作る上でも非常に重要な意義が あると思いますし、前回の小委員会の中ではそういう議論もあったと多少記憶しておりま すので、そのあたりも使用者側には十分斟酌していただきたいとお願いしたいと思います。 ○今野委員長  他にございますか。今のは、回り回って大手の労働者の賃金が下がってもいい、と。 ○中野委員  賃金は下がらないけれども、年収としては下がるのではないかと。その間は待っている のだと。大手企業の労働者なり組織労働者は、少ない賃上げで待っているのだと。その間 に下を上げればいいじゃないかと。恐らく今後の労働組合としてはそういう戦略を考えざ るを得ない。今までのように一部を引き上げて、それを社会的に波及させるという効果が 非常に薄まっているとすれば、やはり下から底上げを考えざるを得ない、これは私の個人 の考えですが、そういうふうな意味での転換点に立っているのではないかと思います。 ○今野委員長  よろしゅうございますか。 ○川本委員  今言われましたけれど、個人的な意見ということで、労働組合が産業別なり、あるいは ナショナルセンターレベルのお考えではないということでしょうか。 ○中野委員  まだ全体の議論にはなっておりませんけれども、少しそういう議論を始めているのは事 実でございます。 ○今野委員長  最低賃金との絡みとは、そこだけ除くと大転換ですね。回り回って、下げてもいいとい う話だからね。 ○中野委員  下げるのではなく、待ってもいい。下げるとなると、それは不利益変更になりますから、 そういうことはできない。しかし、待ってもいいという考えもあってもいいのではないか と。現実に1,000円しか上げずに待っているんです。高度成長の時ならもっと上がってい いはずのものを1,000円しか上げていないわけですから。 ○今野委員長  他にございますか。 ○川本委員  今JAMで1,000円というお話でしたが、これは賃上げ率、賃上げ額ではなくベアという ことで。 ○中野委員  私は今、JAMではなく、JC大手の賃上げはおおよそベア1,000円でしたと申し上げまし た。 ○今野委員長  とりあえず議論は後にしていただいて、使用者側からは御意見ありますでしょうか。 ○原川委員  今、底上げの話がありましたので、中小企業の底上げについて申し上げます。底上げ戦 略でも、中小企業の生産性の向上と最低賃金の中長期的な引上げはセットで言われている と思いますが、我々は中小企業としては、今までいろいろ申し上げた状況で、中小企業、 特に地方の経済は疲弊していますから、末端の中小企業は余裕がないということで、まず 中小企業の生産性等を含む底上げをやっていただきたいと言ってまいりました。繰り返し になりますが、現在の中小企業の経営は激しい国際競争、厳しい取引環境、今申し上げた ように下請取引に見られるような苦しい取引環境に加えて、最近は原材料高など新たな問 題も加わりまして、中小企業の生産状況を圧迫しております。そのようなことから、景気 もやや停滞感が漂い始め、先行き不安も非常に大きくなっている状況である。このように 依然として厳しい状況から中小企業は抜け出せない、あるいは地域の企業は抜け出せない でもがいているわけです。このようなことで、余裕がないと申し上げているわけですが、 このような中で、中小企業の底上げをしないで無理な最低賃金の引上げを行うとなると、 現実として中小企業は最低賃金の引上げに対応することが極めて困難になる、非常に大き な影響を受けるということになり、大変危惧しております。そういうことにより、全体の7 割を占める雇用の不安定化を招くと、人を採用したくても控えることにもなりかねないと いうことです。このような状況になりますから、今回の最低賃金引上げの審議は極めて慎 重に行うべきであると再度申し上げたいと思います。したがって、一気に大幅に引き上げ るようなことは行うべきでないと、強く主張したいと思います。 ○今野委員長  他にございますか。 ○池田委員  大体同じような内容になりますけれども、主に3点主張のポイントを申し上げます。  1点目は、経済の実態を踏まえた論議をしていただきたいということ、2点目は、企業の 支払能力を無視した最低賃金引上げには反対ということ、3点目は、急激な引上げには反対 ということ。基本的には時期と金額の問題を十分慎重に議論していただきたいということ です。  まず、経済の実態を踏まえた論議ということですけれども、再三申し上げておりますが、 今も原川委員からもお願いしてございますが、中小企業の厳しい経営実態を改めて申し上 げたいと思います。特に、賃金引上げの原資は極めて限られておるわけで、財務省の法人 企業統計調査によれば、平成17年の資本金1,000万円未満の中小企業の労働分配率は9割 に近い、前回も申し上げましたが、ということであります。国税庁の統計ですと、平成17 年度の資本金1億円未満の中小企業の約半数は赤字経営であり、7割は欠損法人というデー タが出ております。実際のところ、平成19年の賃金改定状況調査においても、今、全体の 半数以上の50.9%が賃上げをしないという事実を改めて重く受け止めるべきであります。  同様に前回、原川委員からも申し上げましたが中小企業の賃金改定に関する厳しい見解 につきまして、御説明させていただいております。無理な引上げを強制すれば、企業が存 続できなくなる、雇用に影響を及ぼす恐れがある、企業は経営を維持してこそ、社会に貢 献できる、倒産すると従業員は失業し、経営者は多額の負債を抱え込んでしまう。そして 家族も失業してしまう、労働者の流動化が図られれば、成長産業への移転が行われるとい う視点もありますが、マクロ経済でみた話と実態は大きく異なることをよく認識すべきで ある。再就職にはそれぞれの仕事に見合った最低賃金と技能の向上が必要であります。決 してすぐに職に就けるわけではありません。企業は机上の理論では経営できるものではな い。経済の実態を無視した議論を行うべきではないと思います。  次に、企業の支払能力を無視した最低賃金引上げには反対という点でありますが、日本 商工会議所が今月の夏季政策懇談会において採決いたしました「政策アピール」の中で主 張しているとおり、「最低賃金の引き上げについては、企業の支払い能力を高めることがそ の前提である。無理な引き上げを強制しようとすれば、必死の努力により経営を維持して いる企業の存続自体が不可能となる恐れすらある。」としております。また、何度も申し上 げておりますが、最低賃金法第3条には、労働者の生計費、通常の労働者の賃金及び通常 の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならないと明確に規定されており、これを 遵守すべきであります。特に、賃金支払能力を切り捨てるべきではないと考えます。 また、正当な理由がなく最低賃金を支払っていない企業については厳しく取り締まるべき でありまして、商工会議所としても、会員企業に改めて最低賃金法の遵守を呼びかけるな ど協力をいたしたいと考えております。  3点目の急激な引上げには反対ということでございます。柳澤大臣からの諮問で円卓会議 の議論にも配意した審議が求められていることは理解いたしますが、円卓会議で話し合わ れているのは、中長期的な最低賃金の引上げについてであります。また、円卓会議の合意 はあくまでも中央最低賃金審議会に対する要望であると理解しておりまして、法的な拘束 力はないと考えております。しかも、円卓会議における議論は結論が出ておらず、今後継 続的に議論が行われ、年内を目途にとりまとめるとされております。それにも関わらず、 平成19年度に急激な引上げをすることは反対であります。最低賃金を引き上げるならば、 円卓会議の意見にもあったように、中小企業の底上げを図り、生産性が向上して、その結 果として支払能力が向上することが先決であります。円卓会議における議論にも配意して 議論をするならば、そうした意見を反映した案を提示すべきではないかと思います。なお、 最低賃金を引き上げようとするのであれば、最低賃金近辺で働く労働者につきまして、業 種を始め実態をもっと明らかにする必要があると思います。その上で、何が原因なのか、 どのような対策が必要なのか、経済政策か、産業政策か、あるいは社会政策なのか、よく 議論すべきであります。  また、それに関連しまして、前回の会議で厚生労働省から提出されました賃金分布に関 する資料につきまして、一点お願いをいたしたいと思います。せっかくの資料であります が、棒グラフでは、各賃金ごとの人数分布が分かりにくいので、表にするなど分かりやす い形で示していただければと思います。 以上、3点につきまして申し上げました。 先ほど、また改めまして中野委員から御意見がありましたように、先週、毎日新聞に記事 が載っているように、まさにそのとおりでありまして、「大企業利益温存 中小悲鳴」とい う記事がございまして、この中では「大企業は水をため込んで、全然、下に吐き出さない。 上が栓を開かない限り、下は潤わない」ということですが、現実には、大企業はいろいろ と苦労されているかと思いますが、国際競争もあり、ただし、いまだにやはりそれが中小 企業に流れてこないという実態は、そのとおりでありまして、経済政策の中で地域間格差、 それから大企業と中小企業の格差をなくすという経済政策が前提にあって初めて、中小企 業の支払能力が出てくるのではないかと思っております。今回の選挙によく表れておりま すように、地域間格差があることは全面的に与党も挙げておりますので、私はこれが経済 の実態ではないかと思います。その辺の格差を是正することが賃金の底上げをする大きな 前提となるのではないかと思っております。以上です。 ○今野委員長  他にございますか。今データの要望の件がございましたけれど、使側の意見をお聞きし てから用意したいと思いますが、他にございますか。よろしいですか。 それでは簡単なデータの方からいきますかね。棒グラフの棒になっているところの人数が ほしいということですね。実際のデータを。これじゃあ見にくいので。 ○池田委員  はい。 ○前田勤労者生活課長  前回資料No.2で、賃金構造基本統計調査の時間当たり賃金分布のグラフをお出ししまし たが、それのバックデータということであれば、一応御用意できますが。もしよろしけれ ば今。 ○今野委員長  個票と言われるとあれだけど、棒グラフの、ここが5人だったら5というデータがほし いのでしょう、そういうことですよね。 ○前田勤労者生活課長  はい。よろしければ、今お配りいたしますが。 ○今野委員長  よろしいですか。                  (異議なし) ○今野委員長  ではお配りいただけますか。 ○今野委員長  池田委員が言った数字は、これでよろしいですか。 ○前田勤労者生活課長  若干説明させていただければ。非常に小さくて恐縮ですが、一般労働者、短時間労働者、 合計ということで3種類について、都道府県別に、前回の棒グラフの刻みが10円刻みとな っておりますが、その時間当たりの賃金分布にそれぞれ労働者が何人いるかということ、 ただ800円以上のところは今回の議論とはだいぶ離れるかということで、そこは省略して おります。一番右に書いてあるのが、全体の労働者数です。 ○中野委員  表の関係で質問よろしいでしょうか。 ○今野委員長  どうぞ。 ○中野委員  一番右の数字で復元後の、例えば東京では178人から10,699人まであるんですが、こ れをずっと伸ばしてサンプル全体を足すと、484万某になるのか、サンプルは別にあって、 それを統計的手法で復元するとトータルがこうなるのか、どちらなのでしょうか。「復元後」 という言葉が気になるので。 ○前田勤労者生活課長  復元後というのは、全体が復元後でそれぞれの賃金のところも復元後です。 ○中野委員  一つのサンプル数とは異なるわけですね。サンプル数が178あったわけではないのです ね。 ○前田勤労者生活課長  そうです。調査したものを元に、それぞれの賃金のところを復元したものです。 ○中野委員  統計的手法で加工した後のものということですね。 ○前田勤労者生活課長  金額の数字をずっと足していけば右側の数字になります。 ○加藤委員  復元後の全体の人数ですが、800円以上も含めて全体の人数ですか。 ○前田勤労者生活課長  はい。 ○中野委員  すみません、もう一点。具体的な実際のサンプル数、東京の484万に対応した実際のサ ンプル数はどのくらいあるんですか。 ○前田勤労者生活課長  全国では、母集団は労働者でいうと3,700万人、実際に抽出労働者数は161万人です。 県ごとにはないです。 ○中野委員  ありがとうございます。 ○今野委員長  この資料については、他にございますか。 ○池田委員  ワーキングプアというのはこの下の方に入っているわけですか。最低賃金のことをいっ てるわけですから下の方にたくさんいるわけですか、最低賃金額の。 ○前田勤労者生活課長  ワーキングプアということ自体の確立した定義がないので、どこがワーキングプアとは 統計的にはなかなか言えないものです。 ○今野委員長  それでは労使から御意見いただきましたので、意見交換を始めたいと思います。何かご ざいますか。 ○池田委員  毎年申し上げているんですけど、最後は徹夜審議になることが結構あるんですが、私は 昼間やったほうが頭脳明晰だし、翌日体が使い物にならなくなるので、労側はあえて徹夜 でやらなきゃいけないという御意見があるのでしょうか。労側がどうしても徹夜でやらな ければいけないんだと言っているのがあるんでしょうか。 ○加藤委員  審議の時間を希望したり申し上げたりしたことはないので、結果ですから、やっぱり短 時間でまとまるのであればそれにこしたことはない。 ○池田委員  遅くなるならば、また日を改めてはどうでしょうか。 ○今野委員長  全く否定するということはないです。しかし、1回でやりたいところです。 ○藤村委員  質問よろしいでしょうか。経営者側の方々にお伺いしたいのですが、最初から、中小企 業の支払能力が非常に厳しいという御意見があって、それは確かにそうだと思います。賃 金を上げるためには支払能力を上げる、その前提となるのが生産性向上だと。じゃあ具体 的にどうすれば生産性が上がるのかというのを考えた時に、生産性って価格で計る場合と 物で計る場合、例えば製造業の場合、同じ人数でよりたくさんの物ができるようになれば、 これは生産性が上がったということになりますね。  それぞれの会社でそういう取組をしてらっしゃると思いますが、例えば同じ人数でより 多くの物が効率的にできるようになるためには、そこで働いている人たちの創意工夫とい うか、いろいろな知恵を出さなきゃいけない。経営側としてみれば知恵を出してくれる労 働者を確保し、内部で育成する努力が大変必要だと思うのですね。そういう時に今まで日 本では労働力不足が起こるわけですから、人材獲得競争というのが非常に厳しくなってい る。じゃあ人材はどうやって確保するかという時に、魅力的な仕事を提供するとともに、 賃金も大事な要素だと思います。結局鶏が先か、卵が先かという話になると思いますが、 要は賃金を上げて良い労働者を採用し、その人たちに頑張ってもらって生産性を上げると いう道筋と、それから、今いる人たちに頑張ってもらって生産性を上げることによって支 払能力が高まり、という道筋を経営側は言ってらっしゃると思いますが、第三者的に見て いると、ある程度賃金を上げておかないと、人は来ないのではないかと。だったら最低賃 金を上げるということは決まったことだから仕方がないということで、取引先にもある程 度申し訳が立つといいますか、そういう意味では企業の生産性を上げるためには最低賃金 を上げることはあまり悪くない手法なのかなと思ったりするのですが、いかがでしょうか。 ○横山委員  今おっしゃったことは、製造業ではどうか分かりませんが、私どもサービス業では、生 産性の向上は個人の創意工夫ではとてもできない話である。もう一つ、最低賃金の趣旨か らみると、労使交渉の賃金決定のメカニズムとは違うし、法律的な趣旨は、社会的なセー フティネットワークを目指している。個別の労使交渉の中で賃金を少しでも上げて、少し でも出していい人を雇いましょう、これは企業のあり方という中の話では、当然お話の趣 旨のとおりですが、とにかく最低限の保障をしようじゃないかというのが最低賃金の趣旨 でありまして、それ以上を払うのがだめとは言わない。当然余力があれば払うし、いい人 を採ろうと思えば最低賃金がこれだからここで抑えておけばいいというものではない。そ れぞれの企業が精一杯やった中でできる限り払って、人を雇いたい。じゃあ実際にどうな のかというと、例えば、中小企業それぞれに聞いてみると、新卒採用なかなかできない。 それは初任給がそこまでいっていない、つまり魅力あるものまでいっていない。しかし、 それは最低賃金にかかっているわけじゃないですよ。自分たちとしては新卒を、若い優秀 な労働力はもちろん欲しい、欲しいけれどもそこまで出せないと。だからまあいいかなと いうのが中小企業です。あるべき論というのはそれぞれある。安ければいいと考えている 経営者はそんなにもういません。出せるものは出す、ただ出せない。とにかく人を確保す るために十分出せる精一杯のものは出す。それは最低賃金よりはるかに上のものですよね。 政策論というか最低賃金そのものが、下を上げれば全体が上がるということは思うが、そ こはやっぱり無理のないところで決めるセーフティネットである。最低賃金を守っていれ ばいいやという企業が淘汰されていく。支払能力は考えておかないといけないと思います。 ○中野委員  労働基準法なり最低賃金法は労働者保護法制としてセーフティネットを守るためにある んですけれども、私は2点申し上げたい。1つは、労働者保護法制は単に労働者保護だけで はなく、社会的な公正競争を維持していくために、基本的に重要な法制だという観点を持 っていますので、それからいうと最低賃金というのは公正競争をきちんと守っていく上で の法制としての役割を遵守しなければならないと思っています。 もう1つは、セーフティネットというときに、働いていて自分一人が生活できない水準が セーフティネットと言えるのか。今の水準、673円で生活できるのかと考えた時に、とても セーフティネットとしては今の最低賃金の水準が低すぎる。暮らせないような水準を決め てセーフティネットとはとても言えない。少なくともセーフティネットとして国民が認め るような水準にはやらなければいけないのではないかと思っています。これは前回も申し 上げましたが、今まで、なぜこのような水準で最低賃金が批判されなかったのかというと、 高校生や大学生のアルバイトであったり、あるいは主婦のパートであったり、いわゆる家 計補助的な方々の水準をある意味決定しているものであったから、あまり批判が出なかっ た。ところが、昨今は自前でそれをやらなくちゃいけない人が最低賃金水準レベルに影響 されてきている、ここが一番大きな問題であると思うんですね。そうすると、やっぱり労 働者の生計費というふうに、少なくとも外国では労働者及びその家族というのもけっこう あるのですが、「労働者の生計費」というふうに賃金決定要素とされている以上、少なくと も働いて、きちんとした所に寝て、まあまあ、綺麗じゃないけれども普通の清潔な服を着 て、きちんと食べられるというくらいの水準でなければ恐らくセーフティネットとは言え ないのではないか。だからそういう水準を求めてどういうふうに考えるのか。そういう水 準が例えばアメリカですと貧困線のような格好で出ているんですけれど日本はそれもない。 イギリスだとかなりきちっとした調査が行われている。日本でも本当はそういうことをや らないといけないのではないかと。しかし、現段階でそういうことを言っても無理ですけ れども、今の段階でも、この水準ではとても生きていけないと、明確な定量的な資料はな くても大体国民全員が合意できるのではないかと、そしたらそれは上げるべきではないか と私は思っています。 ○横山委員  今お話があったところは、まさにこれからどうするかと考えていく話であって、生活保 護のレベルはどうだとか、健康で文化的な最低限度の生活を営むとは、という辺りが出て こないと、そこにはいかない。 ○中野委員  法律の問題ではなく、現行法でも憲法第25条はあるわけですし、現行最低賃金法の中で も、決定3要素の中に労働者の生計費は入っているわけで、ですから現行法の中でもやれ る。ただ改正法が国会上程されていますから、議論とは別の議論として、現行法の枠の中 でしなければいけないということは承知しております。ただ、現行法の枠の中でも労側は ずっと昔から水準は低すぎると過去からずっと主張している。上げ幅でなく水準として低 いんだという主張をしているわけですから、当然今回の審議の中でも、そういうことは考 慮されてしかるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○今野委員長  そうすると、暮らせる生計費を重視するとなると、地域によって違ってもいいというこ とでしょうか。 ○中野委員  その議論は去年もありまして、地域の中でのことは、中央最低賃金審議会の場所とは別 の機会でやっていきましょうというのが去年の結論ではなかったかと思うんですがね。や っていないので、それをぽんと出されても言いようがないんですね。 ○今野委員長  まずは、一般論で言えば。 ○中野委員  一般論でも、なかなかそれは言いようがないですね。私が個人的に言うのは言えますが、 それは去年から非常に微妙な問題なので、ちょっと言えない。 ○田村委員  生産性向上の問題について、日本経団連が出されている、雇用のポートフォリオでいう と3つの段階があって、こうした労働に対しては最低賃金がかかってくるところで、じゃ あここの生産性て何だろうと。いろいろな仕事があって、ここの生産性は頭を働かせてや る仕事、ここは与えられた仕事を定型的に、定量的にこなす。生産性という問題にかかっ てくると、やはり生計費という意味合いがどこかで必要になるだろうと思います。中小で いうとここは明確に分かれませんから、グロスみたいな格好で出てくるんだと思いますが、 基本的に生産性を上げていくと、そこで販売量なり生産量なりサービスの質・量が増えて くるのであれば生産性の向上に伴う企業の収益なりは増えてくるが、頭を抑えられると量 がたくさん作れるということになって、人がいらないという話になってしまう。この辺の 兼ね合いが非常に難しい。労働時間を短縮すれば雇用が守られるけれど、短縮されずに生 産性が上がると、人はいらないという話になってしまうということがあって、この辺のバ ランスを考えていく必要がある。 ○池田委員  昨今私どもも持っている意識と労働者側が持っている意識とで、最低賃金に対して持っ ている意識が全然違う。最近の成長力底上げ戦略推進円卓会議の考え方にもあるのですが、 私どもは、最低賃金のこの部分を上げてどうして経済が成長するのか、むしろ学者先生に お聞きしたいわけです。なんでここの賃金を上げると、本当に生産性が上がるのかなと。 やっぱりこれは地域別の格差もあるし、Aランクでみますと、図から見てもそこのところの 仕事がないわけです。ほとんど最低賃金、これは大企業、Aランクの中で最低賃金で補充し ているところなんかありませんよ。そういう仕事はないんですから、実際。街のサンドイ ッチマンなんて看板持ってずっと出てて、この人いくらもらっているのかなって、この人 に最低賃金以上払っているんだなって。だから本当に、地区別に最低賃金はどういう仕事 にこういう人たちがいるのか。D、Cでいけばそこしか払えない企業も現実にある。それで 企業が成り立っている現実があるわけですから、地域でも全然温度差があるんですよ。最 低賃金の性格をよく議論しておかないと、単に今、成長力底上げ戦略推進円卓会議から言 われて、最低賃金が上がれば経済は上がるんだ、底上げするんだから上げろ上げろと言わ れても、なかなか今までの私どもの最低賃金の解釈からいくとそこまではできない。それ で経済や会社が良くなって潤ってくれるのならばどんどん上げたっていいと思いますけど、 現実は、これ1つ定価が決まっているわけですから、これ作るのにラインがあって、いく らしか払えない、労働分配率の問題、ある意味コストが決まっている、石油がどんどん上 がっている、企業は上から言われたもので作らなきゃいけない、頭が押さえられている。 それで生産性を上げるには、人を減らすか賃金を減らすしかない。やっぱりそこは労使で 話合いをして日本は3%の失業率でですね、求人倍率が2.いくつになる。これはすばらし いことだと思うんですよ、現実お互い努力してきたのですから。それを破壊していく最低 賃金の引上げがそこを破壊してどういう経済成長に結びつくのか、そこをむしろ先生方に お聞きしたい。 ○川本委員  人材獲得の競争について、企業内で当然行われる。企業にとっては人材育成、人材確保 は当然競争も企業間で行われているわけでして、この辺はいわゆる市場原理に視点を置い ている部分になりますが、そうは言っても企業の支払能力になるのではないかと。企業の 支払能力をみるときに、実はなぜ今まで第4表、賃金改定の状況が今まで重視されてきた かと言えば、それはたぶん支払能力があるからある程度引き上げられたんだと、そこを参 考にして、そこを中心に議論してきたという経過があったと理解しております。そういう 中で、この支払能力は企業によってもちろん違うけれども、最低賃金の場合は特にこうい う賃金分布、地域ごとになっておりますので、地域の状態をみますとかなり違うというこ とで。いわゆる第4表もこの間数字いただいておりますけれど、あれを金額に直すと、ABCD ランクで5円、5円、5円、4円でしたか、そういう数字でありますが、実は各ランクごと の賃金改定率をみますと、本当は今年の場合でいえば6、4、4、2という数字ということで ありまして、実は地域によって賃金改定率も違うわけで、実は支払能力には大きな違いが ある。もちろん同じランクの中で県によって違うと思いますが、そういう状況があるとい うこと、そして同時に、今回分布図、先ほど棒グラフの数字が出ましたけど、そういう分 布をみましてもかなり県によっていろいろと違うということでその辺は考えないと、先ほ ど池田委員からもあったように、支払能力を無視した状態になれば、いろいろな悪影響が 出るという心配が出てくるんだということを申し上げておきます。したがってやはり、地 方の支払能力は重要なものとしてみていかざるを得ない。支払能力が実態企業であり、あ るいは実体経済である。 ○今野委員長  だいぶ議論していただきましたけど、いずれにしましても一番最初に言いましたが50円 と5円という状況は変わらないと。あと、労使の意見を聞いていますと鶏が先か卵が先か という議論がずっとあるので、そういう点でもかなり開きがあるようですので、全体の会 議で詰めるのは難しいと思いますので、これからは公労、公使個別に御意見を伺いながら 詰めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○今野委員長  それでは、最初に公労会議を行いたいと思います。使用者側委員の方は控室でお待ちく ださい。 (第2回全体会議) ○今野委員長  それでは第2回全体会議を開始します。  本日は目安をとりまとめるべく、午前中より労使双方の歩み寄りを期待して個別の調整 も含めて話をさせていただいてまいりましたが、依然として労使の見解に隔たりが大きい ことから、本日中のとりまとめは断念して、次回の小委員会についてはできる限り早期に 開催できるように調整したいと思います。労使各側におかれては、目安のとりまとめに向 けて、次回までに御検討をお願いいたしたいと思います。次回の日程と会場は、追って事 務局より御連絡申し上げます。  以上をもちまして終わりますが、何かございますか。よろしゅうございますでしょうか。 では、これで終わりますので、議事録の署名を中野委員と横山委員にお願いします。では、 これで終わります。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)