ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 子ども・子育て > 子ども・子育て支援 > 児童虐待防止対策・DV防止対策・人身取引対策等 > 子ども虐待対応の手引きの改正について(平成19年1月23日雇児発第0123003号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知) > 子ども虐待対応の手引き > 第13章 特別な視点が必要な事例への対応

第13章 特別な視点が必要な事例への対応

第13章  特別な視点が必要な事例への対応

1. 「きょうだい」事例への対応
(1)  児童虐待の背景には、保護者の性格、経済、就労、夫婦関係、住居、近隣関係、医療的課題等の多様な問題が複合・連鎖的に作用し、構造的問題となって発生している。このことから、きょうだいがいる家庭で虐待が発生した場合には、ある時点でひとりの子にしか虐待の矛先が向いていないとしても、虐待が発生する構造的問題が解決されていない限り、他の子に向かう可能性が強いことを意識して、その家族に対応しなければならない。
(2)  したがって「きょうだい」がいる家庭で虐待が発生している場合には、虐待の対象となっていない他の子どもに関してもアセスメントを行い、虐待を受けた子どもの児童記録票に別紙としてアセスメント結果を記入するとともに、担当機関(者)を定め、長期間にわたり動静を把握するなどの適切な対応を決めること。
 なお、当該子どもについて虐待の徴候が認められた場合には、ただちに児童記録票を作成するとともに、「きょうだい」事例は、虐待の危険度が高いことを踏まえ、一時保護の実施を含めた積極的な対応を検討すること。

2. 保護者がアルコール依存症の場合の対応
(1)  アルコール依存症とは
 アルコール依存症とは、たばこや薬物等と同じ依存症候群の一つである。アルコールを抑制するコントロールが効かなくなり、脅迫的に飲酒する以外では、酒を手に入れるための行動が大半を占めるようになる。その結果、これまで大切にしてきた価値や習慣、趣味を奪い、肝疾患等の病気や飲酒運転、借金、欠勤等人間関係や社会的生活を破綻させながら進行していく病気である。
 この病気の特徴は、たとえ医療とつながったとしても、再飲酒により容易に症状が再出現し、再発に至ることである。すなわち、アルコール依存症からの回復は、生涯にわたる断酒であり、それに加えて、自分の感情をコントロールし、他人と健全に交流できるようになった状態と言われている。この回復には、一般的に通院治療、抗酒剤等の服用、セルフヘルプグループ(AAや断酒会等)への参加の三本柱の継続が不可欠と言われている。
 依存症は、家族を巻き込む病でもある。家族はアルコール依存症に対する無知や偏見と家族としての義務感から、飲酒を一生懸命止めさせようと説得したりする一方で、怒鳴ったり、暴力をふるう等して飲酒を要求することから、恐怖のあまり酒を買い与えたり、職場に休暇の電話を入れる等、尻ぬぐいをし、飲酒を支えてしまう結果となる。このように、依存症は、当事者の家族が病気をさせて、結果的に病気を悪化させていくことが、その家族からキーパーソンを奪い、介入を困難にさせている大きな理由である。

(2)  アルコール依存症の家族の中に潜む虐待
 アルコール依存症の家族とともに生活する子どもは、暴れる保護者や殴られる保護者を常時見ているか、あるいは自分も殴られている場合がある。直接暴力がない日々も、「いつ暴れるだろう。」という恐怖と緊張感の中で、依存症者の様子に敏感に反応しながら暮らすことになる。この状況は、子どもが安心して生活できる環境が保証されているとは言えず、アルコール依存症で治療ルートにのっていない場合、そこに暮らす子どもは、虐待環境におかれていると考える姿勢が必要である。そして、介入判断は、アルコール依存症本人以外の家族が、虐待行為や環境から子どもを守り、その場を離れる(家を出る等)ことができるか、あるいは必要時に警察や関係機関による介入をためらわずに行えるかが鍵となる。多くは、家族が巻き込まれており、適切な判断力が奪われている状態で、危機的状況であることが多い。
[1]  アルコール依存症への対応の基本
ア.  アルコール依存症者本人に問題を直視させ、「アルコール依存症は病気である」というメッセージを、パンフレットを本人の目のつくところに置く等して、送り続ける。また、専門治療や自助グループにつながることによって回復することができる病気であることも伝える。
イ.  本人に治療を勧めるばかりでなく、家族が本人の行動に動揺しないために、学習機会を得る。学習機会は、保健所や精神保健福祉センターで「アルコール依存症家族教室」として行われていることが多い。
ウ.  酒を飲んでいるときは面接したり話はしない。しらふのときに話をすること。
エ.  安易な約束はしない。約束したことは守り、できないことははっきりと「できない」と言うこと。
オ.  断酒を誓わせたり、誓約書を書かせることは無意味である。
カ.  本人の飲酒を止めさせようとして、脅したり、説教したりしない。
キ.  本人の暴力や脅しに屈しない毅然とした態度で対応する。もし暴力的な行動があったら迷わず警察へ連絡する。
ク.  依存症者は周りを振り回したり、巻き込む傾向が強いので、一人で対応したり、抱え込むのは危険である。地域の関係者とネットワークを組んで情報交換しながら対応すること。
ケ.  保護者に対応する専門職と子どもに関わる専門職を分ける方が望ましい。場合によっては地域の関係者との役割分担を十分協議すべきである。

(3)  子どもの安全確認と保護
 第一に重視されるべきことは、虐待行為の有無と虐待環境か否かであり、子どもの保護である。依存症者がその段階で、飲んでいるかいないかが問題ではない。まして、依存症者の「やめるつもりだ」、「もう飲まない」、「最近やめている」等の発言や気持ちが優先されるべきではない。暴力や暴言、家の中で暴れる等の状況がある場合は、児童福祉法第29条、第33条、第28条、児童虐待防止法第8条、第9条及び第10条の規定に基づき緊急介入を行う。なぜなら、依存症治療は、本人の「自分は病気であり、医療が必要。何とか回復したい」という気持ちが重視されるもので、周囲の強制で治療に結びつけることはできず、その気持ちを引き出すことを優先した場合、手遅れになることも想定されるからである。
 子どもの安全が確保された後、依存症者本人とその配偶者の治療やその後のケアについては、保健所、市町村保健センター、精神保健福祉センターに相談し、必要時に医療機関や配偶者暴力相談センター等と連携をとりつつ、依存症者本人とその家族のケア体制を整えていくことが必要である。
 母親が依存症者で、子どもへの身体的・心理的虐待やネグレクトがある場合は事態がより深刻になる。いわゆる「キッチンドリンカー」で朝から酔っ払っている姿を見せたり、夜になると飲みに出かけてしまい、子どもたちだけが家に置き去りにされる。食事を十分与えられなかったり、放任されたり、言葉による暴力で心を傷つけたりするので、子どもは非行に走ったり、家庭内暴力、不登校で保護者を困らせるような問題を起こす。ひとり親であれば母親の依存症に対する介入を行うことが優先するが、そのためにも子どもを保護して適切なケアを提供できる環境づくりをしなければいけない。父親がいても子どもを養育しながらの勤務は困難なので、説得して子どもを保護するように対応するのが望ましい。
 子どもを保護した後の面会、外出、外泊については慎重な対応をする。児童相談所は施設と保健所の精神保健福祉相談員や保健師等と協議をして外泊や外出の可否を判断することになるが、その際は依存症者が専門治療、自助グループにつながり、断酒状態(いわゆる「しらふ」)が維持されていることを最低の条件にしなければいけない。


3. 保護者が薬物問題を抱えている場合
(1)  薬物依存症とは
 有機溶剤や、覚醒剤、大麻、睡眠薬、鎮痛剤、鎮咳剤等の依存性薬物の乱用を繰り返すことで、自分の意思では止められなくなるのが薬物依存症である。平成12年度に改正された「精神保健及び精神障害福祉に関する法律」においても、薬物依存が病気(精神障害)であることが明確に定義されている。薬物依存には、快感という報酬的効果を得るために、薬物の入手に異常なまでの努力をするような精神依存状態と、体内に薬物が存在する状態に適応し、その効果が体内から抜けると、発汗や震え、下痢、嘔吐、痙攣等の退薬症状が現れる身体依存の状態がある。基本的な特徴は、薬物に関連した重大な問題にかかわらず、その薬物を使用し続けることで現れる認知的、行動的、生理学的な症状の一群である。治療は、個々の状況で選択されるが、薬物を絶つ動機づけ、精神症状に対する薬物療法、精神療法等の治療が行われる。
 しかし、薬物依存症は、持続的に何度も反復して使用する特徴がある。単に医療につながるだけではなく、保健、医療、福祉、司法、警察、教育機関等の連携を図りながら、再犯を防ぎ、断薬を継続できる環境を整備していくことが大切である。

(2)  薬物依存症と虐待
 薬物依存症による幻覚、妄想が、殺人や放火等の凶悪犯罪や、交通事故を引き起こす等周囲の人や社会に対しても取り返しのつかない被害を及ぼすことがある。このように精神症状と犯罪が、大変密接な関連を持っていることが、薬物依存問題の際だった特徴の一つとも言える。また薬物使用を止めても、睡眠不足や過労、ストレス、飲酒等をきっかけに、幻覚、妄想等の精神症状が突然現れることがある(フラッシュバック)。これは、脳細胞には、かつての薬物使用体験が刻み込まれており、その害が半永久的に存在する時、その環境が、弱者であり無力な子どもにとっては、大変危険な、しかも人権を侵害する場になる可能性が高いことを認識し、薬物依存症への対応の際に、子どもの存在が確認できれば、常に虐待対応を念頭に入れた介入が必要となる。

(3)  保護者への対応
 薬物依存症に限らず、依存症への対応では、病気の本人より、その周囲の相談者あるいは困っている人を受け入れることから始まり、前述のアルコール依存症と同様に、家族に学習を進めることで、家族が病気の本人に巻き込まれない力をつけていくよう支援するものである。
 しかしながら、その対応は、家族の病理性の高さから、困難を極めることも多い。だからこそ、保健、医療、福祉、司法、警察、教育機関との密な連携が不可欠であり、そこでの適切な判断が、子どもを救う重要な鍵になるのである。


4. 精神疾患が疑われる事例への介入と対応
(1)  気になる精神症状に気付くことが、精神疾患の介入に結び付く
[1]  不安定な対人関係で、孤独に耐えられず不安が強かったり、約束が守れない、待てない、かんしゃくを起こしやすい、自殺未遂を図ったり自傷行為がある、周囲を振り回すなど関わっているうちに種々困難な場面に出会うことが多い
[2]  妄想、幻覚、支離滅裂の会話、意欲の欠如、感情の平板化、思考の貧困化等
[3]  興味や意欲の減退、集中力や思考の減退、不眠、易疲労感、気分の落込み、日中は寝ていることが多い、閉じこもり
[4]  抑うつ気分、朝に抑うつが悪化、早朝覚醒、食欲不振、体重減少、精神活動の停止、過度な罪悪感等
[5]  強迫的な手洗い行動、見回り行動、確認作業などの強迫神経症状
[6]  気分が異常に高揚し、易怒的であったり、多弁、注意散漫、誇大妄想、焦燥感、不必要なものまで買い漁る等
[7]  無為、家の中に段ボールや物を置いてバリケードを作る、他人と接触するのを拒否したり怖がる、ゴミの山等
 保護者と関わっているときに、例えば上記のような気になる精神症状や状態が疑われるときは、一人で抱え込まずに保健所を利用する。保健所では精神保健福祉相談員または保健師がまず対応する。次に保健所で実施している精神保健福祉相談、酒害相談、思春期精神保健相談を家族に紹介し、専門医と相談をする。必要なときは保健師の家庭訪問や精神科同行受診、精神科入院の対応、民間専門機関のカウンセリングを紹介する等の援助方針が立てられる。都道府県精神保健福祉センターも地域の精神保健関連の専門的情報を集めており、困難な事例にはコンサルテーションを実施している。

(2)  精神疾患事例への対応方法
 虐待があり、さらに保護者に精神疾患が疑われたり、現在も治療中であったりするケースは専門的な知識や対応が必要であり、介入に困難を伴うことが多いので、必ず保健所や精神保健福祉センターなどの精神科医やソーシャルワーカーを援助チームの一員に入れる必要がある。患者が最も信頼する人がかかりつけのクリニックの主治医ということもあるので、その場合には主治医に家族の病理と子どもの保護の重要性を理解してもらうことが危機介入の決め手となる。主治医であっても相談者の家庭に虐待問題が潜んでいるとは気付かない場合が多いからである。保健所保健師との情報交換を緊密にすることはもとより、主治医にも随時情報を入れて、症状が悪化する傾向を早く発見したり、緊急を要する場合は入院ベッドの確保に直ちに動かなければ子どもの命が危ないこともある。クリニックに受診している場合は、入院を要する場合の受け入れ病院がどこかを把握しておく必要がある。
 患者が呈している主な精神症状と、悪化するときの兆候(例えば性的な妄想が出てくる、独語が多くなる等)を把握しておき、関係者にもそのことを伝えて関係者で共有しておく。向精神薬の服薬を定期的に続けていれば、日常生活には支障のない病気もあるが、病識がないというのも精神病の特徴なので、薬の使い方は主治医や保健師と相談する。服薬の自己管理ができない患者は、デポ剤を筋肉注射すれば長時間効果が持続するため精神症状を安定維持させることもできるので専門家と相談をすることが大事である。
 精神疾患が疑われるから、保護者を入院させればいいと安易に考えるのは誤りである。加えて、本人が納得した入院でなければ治療効果も得られない場合が往々にしてある。入院の形態は表13−1のとおりであるが、法的に強制的な措置入院が適用できるのは自傷他害(患者が自殺を試みたり、子どもを殺すと言って刃物を振りかざすなど)の場合だけである。病気である患者の人権も配慮したかかわりや対応をしていかなければ、患者との信頼関係も構築できないし、さらに不信感を強めるだけである。したがって、子どもの危険性が高いと判断される場合には、保護者を入院させる以外の方法で子どもを保護する措置を講ずる必要があるのである。
 境界性人格障害やパーソナリティに問題がある事例は、身近な人への他罰的態度や気分変調、手首自傷や薬物乱用、自殺の脅かし等の操作的言動を伴う。治療継続が難しく、援助者側の提案にすんなり応じることも稀である。援助者側が、無力感や関係者相互の信頼関係を揺さぶられる感覚に陥り、関係者のネットワークにも影響を及ぼすことが度々ある。過去の人生を振り返ると、幼少時期から、日常的な両親の対立や現実的には拒否にさらされ、愛情が不足している場合が多く、寂しさや空虚感、保護者の無理解から逃れるために自然と獲得した不安定な対人関係の結び方であると理解できる。対応としては、毅然と、決して拒否ではなく、「地域であなたが暮らしていきやすいように支援していきたい。そのためには、あなたを中心としたいくつかの関係機関が手を結んでいきたい」旨を伝え、周囲を揺るがす行動に、関係者間が揺れないことを意思表示する。さらに、面接時間等については、45分から1時間程度と時間を区切り、その旨を面接のはじめに伝えてから始める等、限界と決め事を伝える技術も必要である。このような機会一つ一つが、不安定な人間関係の結び方を修正していく学習モデルとして働くことを期待するものである。
[事例I]
精神疾患の疑いで子どもを緊急保護できた事例

過と危機介入: Kさんは結婚し子どもを生んだ途端父親が家出し、その後協議離婚をした。住込みなどを転々としてきたが、平成8年H市に転入して生活保護を受けるようになった。通園している幼稚園から「5歳の長女が虐待されているのではないか」と児童相談所に通告があった。保健所にも隣人とのトラブル、精神不安定、体調が悪いとの相談あり。極度の潔癖症で自分の感情をコントロールできない、自分の怒りをあちこちに当たり散らす等特徴がみられた。
 子どもは頭痛、顔に傷痕、左外傷性鼓膜穿孔等で病院受診を繰り返している。またKさんは「おもらしをしたので風呂場へ閉じ込めた」「子どもが言うことを聞かないと憎くて仕方がない」と訴えることも度々あったが、児童相談所が一時保護してもKさんの強い要求で短期間でまた母子での生活に戻り、関係者は心配していた。
 平成10年11月、幼稚園の先生にKさん自身から「子どもを殺す」と電話があり、幼稚園は直ちに児童相談所へ通告、児童福祉司から保健所へ連絡が入り、児童福祉司と保健所長、保健師が現場に急行した。警察にも連絡して婦人警察官と刑事が私服で駆けつけた。アパートは鍵がかかって開けてくれない。子どもを裸にして風呂につけている様子で、一時間説得を続けたが子どもの声も弱々しくなってきたため、児童福祉法第29条の立入調査もやむを得ないと判断し、合鍵で自宅に入った。子どもは衰弱しきっており、体に叩かれた傷跡、顔はお岩さんのように腫れ上がっていた。
助経過:  子どもを緊急一時保護した後、児童福祉法第28条の承認により児童福祉施設に入所措置している。母親は精神保健福祉法第29条による精神科病院への措置入院になった。

[事例II]
てんかんがあり、ネグレクトする保護者への地域援助

 Hさんは未婚で子どもを生み、実家で祖父が子育てをしてくれていたが、育児も家事も何もしない母親に、実家の家族は愛想をつかして母子生活支援施設に無理やり入所させた。Hさんは4カ月の子どもを連れて母子生活支援施設に引っ越してきたものの、1カ月以上経っても荷物はそのままで片付けられなかった。福祉事務所は生活保護を適用し、保健師とともに保育所に入所させるように説得しつつ、少しずつ荷物を片付けるよう、家庭訪問しながら指導をしていった。
 母親は抗てんかん薬の自己管理ができないので、母子生活支援施設の指導員が毎朝服薬を確認する、朝起こして保育所通所を促すなどの働きかけを行った。生活保護担当者は母親が何でも買い込む癖があるので、生活費を毎週支給する方法をとり、その際の面接で使途の確認などの指導を行った。保健師はネットワーク全体の調整と生活指導、子どもの発育発達のチェック等の役割を担うなど保育所、母子生活支援施設、福祉事務所、保健所がネットワークを組み、相互に連携を図りながら一貫性のある援助に努めた。保育所通所も当初は週のうち半分でも通えればよしとするなど期待値を高くしないように、少しでもできたことを認めていくような対応を行うことを全員で確認した。
 児童相談所も事例検討会に参加し、相談の進捗状況を把握しておくとともに、今後母子分離を行う必要が生じたときに一緒に関わることとした。母親は次第に保育所に毎日連れていくようになり、また、保健師にも自分から声をかけてきたり、相談をするようになるなど以前に比べかなりの改善が認められるようになった。


5. 保護者による治療拒否の事例への対応
 保護者による治療拒否は、保護者の果たすべき「治療を受けさせる義務」を怠るネグレクトの一形態(医療ネグレクト)であるが、児童相談所や施設が子どもを保護し、保護者に替わって養育するだけでは全く不十分であり、治療機関という第三者の協力を得なければならない点に一つの特色がある。また治療拒否の理由が保護者の信念(宗教的信念等)に基づく場合が多いというのも、もう一つの特色である。
 医師としては、手術など患者に危険をともなう重大な医療行為をする場合には、(意識のない救急患者が運ばれてきたような場合は別として)通常本人の依頼ないし承諾が必要となる。
 患者が未成年の場合、通常は親権者が医師に治療を依頼または医師の治療を承諾している。保護者がこれを拒否して健康が悪化している場合に、医師が職業上の倫理として保護者の承諾を得ずに治療することがあり、その時は社会的な相当行為として許されるが、医師によってはそうした対応を拒否することもある。そのような場合には、児童相談所が児童福祉法に基づく措置をとるしか方法がない。
 児童福祉法には、施設の長の権限として、親権者がいる場合にも監護について必要な措置をとることができる(同法第47条2項)と定めており、これは施設の長に対し、子の監護に関して親権者と同様の権能と責務を与えたものであって、これには、治療を受けさせることを含むものと解釈できる。治療機関としては、施設にいる子どもの治療について、施設の長の依頼または承諾があれば治療を実施しているという実状もある。なお、仮に親権喪失宣告がされればその後選任された未成年後見人が、親権者の職務執行停止及び職務代行者選任の保全処分がなされれば職務代行者が、それぞれ親権者と類似の立場に立つことになると考えられる。


6. 代理人によるほら吹き男爵症候群(Munchausen Syndrome by Proxy,以下MSBP)への対応
 MSBPとは「両親または養育者によって、子どもに病的な状態が持続的に作られ、医師がその子どもにはさまざまな検査や治療が必要であると誤診するような、巧妙な虚偽や症状の捏造によって作られる子ども虐待の特異な形」である。例えば、乳児の呼吸を塞ぎ、SIDS(乳幼児突然死症候群)として受診を繰り返したり、子どもに下剤を飲ませ続けて難治性下痢として入院を繰り返すといった形をとる。基本は子どもを病気にすることによって不必要な医療やケアを受けさせることで子どもに不利益な状態を作り出すことである。実際に何らかの薬を飲ませるなどして病気を捏造することもあれば、起きていない痙攣を虚偽の報告をしたり、子どもの尿に血液などを混入させて血尿として受診するなどの模倣の形をとることがある。捏造の場合はそれ自体が子どもにとって危険であることは明らかであるが、模倣のかたちでも、不必要な診察・検査・治療を受けることによる苦痛を与えることになる。
 MSBPの保護者は98%が実母で、自分自身や家族に看護師などの医療関係で働く人がいることが多いが必ずいるとは限らない。心理的なメカニズムとしては子どもや医療システムを支配する満足を得ることと同時に、大変な子どもを育てている献身的な保護者像を作り上げながら、医療的なケアを受けることが目的であると考えられている。虐待者は自分自身がMunchausen症候群であるなどの虚偽性障害をもっていることもある。また、父親など自らは虐待をしていない保護者についても、配偶者が虐待をしているという問題をある程度わかっていながら、それを打ち消したり避けている場合が多い。
 MSBPは不自然な検査所見や不自然な保護者の態度などから疑われることが多いが、確定はなかなか困難である。海外ではビデオ撮影で証明されることもあるが、日本では病室にビデオが設置されることが困難であり、多くは一時保護などによって親子分離をすることで症状が消失することを確かめることで証明となることが多い。MSBPの危険性を考えると、一時保護の重要性を認識すべきである。念のため、他の医療機関への一時保護委託が必要になることもある。
 虐待者は医療関係者を巻き込むことが多く、ある特定の医療関係者と家族ぐるみや個人的な付き合いをしていることも少なくない。従って、一時保護の計画などに関しての情報の流れには十分な注意が必要である。MSBPに気付いた医師を重視し、子どもを守る体制をとることが望まれる。
 MSBPの死亡率は約9−22%という報告がある。MSBPは医療関係者から情報を得ながらエスカレートしていくことが多い。子どもの害を最小限に食い止めるためには、できるだけ早期に発見して介入することが求められる。
 MSBPは1977年Roy Meadowによって「子ども虐待の奥地」として発表されたものであり、その定義に関しては様々な議論がある。MSBPと限定するより、保護者もしくは養育者が何らかの理由で子どもが病気であると訴え、そのために子どもが不必要な医療を受けると言う不利益をこうむる状態全体をMedical Abuseとして総称しようとする考えもある。


7. 性的虐待への対応
 性的虐待は、子どもに深刻な精神的問題や行動上の問題を生じさせる危険性が高いと考えられており、早急かつ適切な対応が必要となる。適切な対応を講ずるためには、子どもと虐待を加えていると考えられる保護者との分離が原則となる。
 子どもから性的虐待の開示がなされた場合であっても、虐待者とされた保護者がその事実を認めることは少ない。また、子どもの行動や周辺的な状況で性的虐待の疑いを持たれた場合であっても、被害を受けていると考えられる子ども自身がその被害を否認することもある。このように、性的虐待はその事実の確認が非常に困難な場合が少なくなく、それだけに、対応する側に高度な専門性が要求されることになる。
 対応の基本を以下に述べる。

(1)  子どもとの面接
 第4章で述べたように、性的虐待が事例性を持つようになるのは、子どもから開示があったり、子どもの精神的な問題や行動上の問題から性的虐待の被害が推定されて関係者が問題視するようになったり、あるいは別の問題で児童相談所が関わりを持ち始め、援助の経過中に子どもが性的虐待の事実を開示するなどの場合がある。性的虐待は身体的虐待のような外傷が認められない場合が多く、また、ネグレクトのように家族の生活状況からその事実の確認を行うことも困難である。したがって、いずれの場合であっても、子どもとの面接の内容が非常に重要な意味を持つことになる。以下に、子どもの面接における基本的事項を述べる。
[1]  子どもの話を丁寧に聞き、真剣に受け止めること。
 子どもは性的虐待の事実について話し始めるとき、冗談めかした言い方をしたり、あるいは「他の子の話」として話したりすることも多い。こうした子どもの表現に対しても、丁寧かつ真剣な態度で子どもの話しに耳を傾けることが大切である。
[2]  性的虐待について話すことの子どもの心理的苦痛や恐怖、不安に共感すること。
 子どもは、性的虐待について話すことに強い心理的苦痛を感じることが多い。こうした苦痛感には、恥辱感(本来であれば子どもが経験しないことを経験した)、罪責感(もしかしたら被害を受けた責任の一端は自分にあるのかもしれない)、裏切りの気持ち(加害者から口止めされていたにもかかわらず話している)といった感情が関与していることが多い。子どもから話を聞く場合には、子どもが感じているかもしれないこうした苦痛感に十分配慮する必要がある。また、子どもの恐怖や不安を共感的に取り扱う必要が生じることもある。
[3]  子どものペースを尊重しながら話を聞いていくこと。
 上述したように、性的虐待の事実を話すことは子どもに大変な心理的負担を強いることになる。したがって、子どものペースを尊重して話を聞くことが大切である。子どもの抵抗感が強いにもかかわらず面接者が出来事の詳細について質問を重ねることで、子どもが面接に耐えられなくなって一度は口にした性的虐待の事実を否認すること(撤回)もあるので、注意を要する。
[4]  話を聞くことが子どもにとって『二次的被害』にならないよう注意すること。
 性的虐待の事実を思い出したり話したりすること自体が、場合によってはトラウマ性の体験となり、いわゆる『二次的被害』が生じることもある。面接者は、こうした二次的被害を回避するための努力を講じなければならない。例えば、加害者と同性のものが面接をしないことや、今後のケースワークや司法的手続きにとって必要になると考えられる情報を整理して一人の面接者が話を聞くようにすることで、同じ内容の話を子どもが繰り返ししなくてもいいようにするといった工夫が考えられる。
[5]  守秘義務や問題の解決の可能性について非現実的な約束をしないこと。
 一般のカウンセリングの面接などでは守られる守秘義務が、性的虐待を問題とした子どもの面接においては守られなくなる可能性が高い。守秘義務のある面接に慣れた面接者は、話すことへの子どもの抵抗感に直面した場合、つい「誰にも話さないから」と言いたくなるものであるが、こうした約束は現実的ではない。また、子どもの受けた被害が深刻なものであるほど、その話を聞いた面接者が心理的ダメージを受け、そのダメージへの心理的防衛の影響で「もう大丈夫だよ。解決するから安心して」といった言葉を口にしてしまうこともある。しかし、そうした「言葉」が現実にならない可能性もあることを認識しておく必要がある。
[6]  子どもの年齢に応じて、話を聞く際に補助的道具(描画、人形など)を活用すること。
 幼い子どもの場合には言語表現に限界があり、また、性器の名称に関しては独特の言葉を用いる傾向が見られたりするため、虐待行為を詳細に聞き取るには言語表現のみでは困難であることも少なくない。そのため、絵を描いたり、人形を用いて表現するといった補助的な方法を活用する必要が生じることも多い。
 また、欧米で性的虐待の司法面接(forensic interview:後述を参照のこと)のために用いられている性器や性的特徴を備えた人形(アナトミカル・ドル)が、近年、わが国に紹介され、一部で使用されているようである。こうした人形は、子どもの詳細な表現の助けになるという効果がある一方で、子どもの話を誤誘導する可能性があることや、性器のある人形が子どもに心理的ショックをもたらす危険性があるとの指摘もされていることに留意すべきであろう。したがって、こうした人形は、子どもが性的虐待について話し始めた後に子どもの表現を援助する、あくまでも補助的な道具であると位置づけるべきである。
[7]  子どもの希望を聞きながら、予想される今後の展開を子どもに説明すること。
 性的虐待の加害者は、その事実を誰にも話さないように子どもに口止めをしたり、「誰かに話すともう家族は一緒に住めなくなる」などといった脅しをかけていることが多い。そのため、性的虐待の事実を開示した子どもは、これから先のことについて大きな不安を持つことが多い。こうした不安を取り扱わないで放置した場合、先行きへの不安から子どもが撤回に転ずることもある。したがって、今後、どのような展開が予想されるかを可能な限り子どもに伝える必要がある。
 また、今後の展開に関して、子どもは様々な希望を持っているものであり、こうした子どもの希望を知っておくことは大切である。子どもによっては「(加害者を)刑務所に入れて一生出てこないようにして欲しい」といったことを希望する場合もあるが、こうした場合には、刑事告訴や告発の可能性を検討する必要が生じる。刑事事件としてケースワークを進めることは可能であるものの、「一生出てこない」ということは現実的ではないため、子どもがこうした希望を述べた場合には、現実的にはどういったことが予想できるかを伝え、妥協点を探る必要があろう。また、「(加害者とは)二度と会いたくない。お母さんと妹の3人で暮らしたい」といったような、今後のケースワークの方向性に大きく関与する希望が述べられる場合もあり、ケースワークの展開を考えるためにも子どもの希望を聴取することは重要である。
[8]  児童福祉法第28条による措置や加害者に対する告訴(告発)の可能性が考えられる場合には、裁判所における手続きにおいて、証拠として活用することができるような方法で子どもからの聴取を行うこと。
 近年、性的虐待を理由に児童福祉法第28条による措置の承認を求める審判を家庭裁判所に申し立てる事例が増加し、また、刑事事件としての告訴や告発を行う事例も見られるようになってきている。こうした場合には、裁判所の手続において、証拠として活用することができるような方法で面接を行い、その面接に基づいた記録および意見書の作成が必要となることがある。
 性的虐待が司法の場で扱われることが多い欧米においては、こうした司法手続きのために用いられる面接法として、司法面接(forensic interview)と呼ばれる方法がある。
 司法面接は、性的虐待に関する子どもからの聞き取りが子どもに与える負担をできる限り少なくし、子どもから聞き取る話の内容が間違った誘導の結果ではないかとの疑念がもたれる可能性をできるだけ排除し、かつ、性的虐待が何らかの作為による虚偽の話ではなく実際にあった出来事であるかどうかを検討するための情報を得るという、主として3つの目的を持っている。わが国においては、こうした面接法は未確立であり、その妥当性や信頼性の検討はされていないが、今後、性的虐待の司法の場での取り扱いが増加する可能性が高いことを考慮に入れるなら、欧米における司法面接のあり方は参考になると思われる。
 司法面接では、福祉関係者や、警察や検察などの司法関係者が同様の話を繰り返し子どもから聞くことが子どもに過重な心理的負担を与えるとの認識から、各関係者が責任を持って仕事を進めるに当たって必要な情報を整理し、それを1人ないしは2人の面接者が、1〜2回程度の面接で聴取するという方法がとられている。わが国の場合にはこうした制度の整備は行われていないものの、子どもの心理的負担を極力少なくする方法で面接を行うという考えは取り入れるべきであろう。
 性的虐待に関して子どもから聴取した内容が面接者によって誤誘導されたものではないかとの疑念をもたれないために、司法面接では、子どもが自発的に話せるような技法の工夫がなされる。こうした技法としては、家族の全構成員について、その人と(あるいはその人が)することで一番好きなことと嫌いなことを聞いていくという『好きなこと・嫌いなことリスト』といった技法や、これまでに子どもが自分ひとりの力で解決できたこと、家族の助力で解決できたこと、および家族以外の人の助けで解決できたことを聞いていくという『問題解決フォーマット』といった技法がある。
 司法面接が一般の心理療法の面接と異なるのは、子どもの話している内容が現実にあったことであるかどうかを検討する必要があるという点であり、そのために、司法面接では事実性の検討のための材料を子どもから聴取することになる。子どもの話の事実性は、子どもの話す内容が性的虐待の特徴として従来報告されているパターンと一致するか(例えば、加害者は子どもを徐々に性的行為に慣らしていったか、あるいは、子どもに口止めや脅迫をしたかなど)、性的虐待を受けたものでなければ知り得ないであろう内容を子どもが話したか(例えば、精液の色、臭い、触感など)、あるいは性的虐待のエピソードがその頃に経験したほかの出来事と関連して述べられているか(例えば、被害を体験した頃にほかにどのようなことがあったかなど。こうしたことが判断の基準となるのは、例えば誰かに実際にはなかった性的虐待の訴えをするように教唆された場合には、エピソードそのものは教えられても、その他の出来事との関連までは教えられていないことが多いという事実による)、などによって検討される。したがって、司法面接では、こうした内容を聴取しなくてはならないわけである。

(2)  調査
 性的虐待が事実であったかどうかを検討するためには、子どもの話だけではなく、その他の周辺的な情報が必要となる。例えば、性的虐待が起こった場合には子どもの学業成績が著しく低下することが多いと言われており、そのためには学校での成績の動向を調べる必要がある。また、性的虐待を受けた子どもに多く見られると言われる行動特性(人前での頻繁な性器いじり、年齢にそぐわない性的発言、性化行動や性的遊びなど)が見られたかどうかといった情報を保育所や幼稚園・小学校・中学校等の学校などから得る必要もある。
 また、性的虐待は、周囲からの監視がない状態(例えば、他に大人がいない状況)や、子どもを対象に性的行為をすることへの抵抗感が低下した状態(例えば、アルコールや薬物の使用時)で生じることが多いとの報告があることから、家族の生活状況に関する情報も必要となる。
 社会調査においてこれら周辺的な情報を得ることが重要である。

(3)  身体医学的なチェック
 性的虐待が疑われた場合には、性器の外傷の診察及び性感染症(STD)のチェックのために、できる限り速やかに医学的診察と検査を行う必要がある。また、妊娠の可能性が考えられる場合には、その検査も必要となる。
 性器に異常な所見が見られたり、性感染症が確認された場合には、性的虐待が事実であったことを示す有力な材料となる。しかし、そうした所見がないことが性的虐待を否定する材料にはならないことも知っておくべきである。ある研究では、性的虐待の被害を受けた子どもに身体的な所見が見られたのは全体の20%程度であったと報告されており、身体的な所見がない場合のほうがむしろ多いのである。

(4)  保護者への面接
 子どもに性的虐待の疑いが持たれた場合には、保護者への面接は必須である。性的虐待の加害者であろうと考えられる保護者(ここでは父親とする)、及び加害者ではないと考えられる保護者(ここでは母親とする)双方に面接する必要があり、その際にはできる限り個別面接の形態で行うべきである。
 父親には、性的虐待の疑いがあるという事実、及びそうした疑いを持つに至った経過をできる限り率直に伝えることが大切である。その上で、父親からの話を聞いていかねばならない。こうした話に直面させられた父親の反応はさまざまである。最も多いのが、「子どもが嘘をついている」などとして事実を全面的に否認する場合であるが、部分的否認(「性的な愛撫はあったが性器への接触はなかった」)や意図の否認(「子どもは性的行為と考えたかもしれないが自分にはそのようなつもりはなかった」、「性教育のつもりだった」)、あるいは責任の否認(「子どもがそうして欲しいと求めたから応じてしまった」)などが見られることもある。こうした反応に対しては、決して父親を責めたり攻撃したりすることなく、援助者側がどういった理由で性的虐待を事実だと考えるに至ったかを説明し、また、その行為が子どもの状態にどのような影響を及ぼしているか、さらにこのままの状態が続けば将来的に子どもにどのような精神的状態や行動上の問題が生じると予想されるかを客観的に、根気強く提示していく必要がある。
 母親への面接は非常に重要な意味を持つ。と言うのは、性的虐待を受けた子どものその後の状態を左右する最大の要因は、母親がその事実をどのように受け止め、子どもに対してどのような態度をとったかであると言われているためである。母親が、子どもの話を事実として受け止め、父親から子どもを守ることを最大の重要事項と考えて行動した場合には、性的虐待の悪影響が最も減じると言われている。
 しかし、子どもの性的虐待の訴えをはじめから何の抵抗もなく受け止めることができる母親は少ない。自分の配偶者やパートナーが子どもにそうした行為をしたということに対する精神的衝撃(女性性の否定など)、配偶者やパートナーを失うことへの不安(経済的不安や依存対象の喪失の不安)、子どもにそのような被害を受けさせてしまったという罪悪感などから、性的虐待を事実として受け止めるためにはかなりの精神的労力を必要とするものである。一旦はそれを事実として受け止め、被害を受けた子どもを守ろうと決心した母親が、翌日には子どもの話が信じられない、きっと子どもが嘘をついているのだと子どもを攻撃するような言動に転ずることも少なくない。援助者には、こうした母親の辛さや衝撃を共感的に扱いながら、一方では事実に関する客観的な判断を提示し続けるという対応が求められる。
 面接者が適切な対応を提供する中で、次第に揺れがおさまり、子どもを守ろうという決心を固めていく母親が多い。しかし、なかには子どもが被害を受けている事実を黙認していたり、あるいはむしろ積極的に子どもを「提供」しているような場合もある。こうした状態に母親が陥るのは、子どもをパートナーに「差し出す」ことによって、パートナーとの関係を維持しようとするといった家族の力動の結果である場合もある。母親がこうした状態にある場合には、子どもを守る方向に母親を導くのは非常に困難になる。

(5)  子どもへのケア
 子どもに対するケアとしてもっとも重要なのは、子どもが安心できる環境を整えることであり、そのためには加害者と子どもを分離し、さらに加害者ではない保護者が子どもを守るようにその後の生活を組み立てることである。その上で、子どもに適切な心理的ケアや精神的な治療を提供していくことが必要となる。
[1]  トラウマ性の問題としての治療・ケア
 性的虐待がトラウマ性の体験となったり、その後遺症と思われる症状や行動  (PTSD、抑うつ症状、解離性障害、衝動性のコントロール不全、性化行動、性的逸脱行動など)が認められる場合には、精神科の治療や心理的ケアが必要となる。性的虐待の体験に焦点を当てたカウンセリングやプレイセラピー、あるいは必要に応じて薬物療法を行う。
[2]  自己イメージの低下への対処
 性的虐待を経験した子どもが、自分が逃げなかったからこうした被害を受けてしまったのだとの考えや自分が加害者を性的行為に導いたのではないかという思い(父親や母親がそのように子どもに言っていることもある)からくる罪悪感を持ったり、自分さえしゃべらなかったら家族がこんなに大変なことにはなっていなかったのではないかという自責の念を感じていることもある。また、性的行為の結果、自分の身体が汚れてしまったり、もう普通の子どもには戻れないと感じている子どもも少なくない。さらに、自分には性的な存在としての価値しかないのだと考える子どももいる。こうした子どもの思いは、子どもの自己イメージを著しく低下させ、不適切な行動や症状を導く可能性があり、適切な対応が必要となる。こうした子どもの考えや認知を丁寧に取り扱うことで、適応的な修正を目指すことが必要である。
[3]  性的行動の再現性への対応
 性的被害を受けた子どもは、その後の生活で被害体験を繰り返す傾向がある。その再現には、過剰な性器いじりや年齢にふさわしくない性的発言、性化行動、子どもの性的発達から逸脱した性的遊びなどや、今度は加害者となって自分の被害体験を他の子どもに向ける傾向、あるいは思春期以降に顕著になりやすい性的逸脱行動(いわゆる「性的非行」など)など、さまざまなタイプがある。こうした再現性に対しては適切な制限(決して罰するのではなく冷静に行為を制限する)を行いつつ、そうした行動が性的被害体験に由来している可能性があることを子どもに理解させることを目指した関わりを行う必要がある。
[4]  正常な性的発達を促進する
 性的虐待を受けた子どもは、愛情と性を混同したり、人と親密な関係を持つためには性を媒介にする必要があると考えたりする場合がある。また、被害を受けた女の子は、自分が女性であったために被害を受けたのだと考え、自分の性を否定しようとする場合もある。このように、性的被害体験は正常な性発達を阻害してしまう可能性がある。子どものこうした認知や考えを取り上げ検討することで、子どもの正常な性的発達を促進する必要がある。
 このように、性的虐待という被害体験は子どもにさまざまな精神科的問題や行動上の問題をもたらすものであり、こうした問題への適切な対応やケアが行われなければ、子どもがさまざまな症状を示したり、あるいは性的加害や性的被害を繰り返すなどの状態に陥る危険性が高い。わが国の福祉の現状では、性的虐待を受けて加害者からの分離を図らねばならない子どもが児童養護施設などの施設で生活するという場合が少なくないが、そうした施設で、ここで述べたようなケアが行われなかったりあるいは必要な精神科の治療が受けられないような場合には、子どもが施設生活への不適応を生じ、二次的な問題を抱えてしまう危険性が高くなる。子どもを守るという原則を守るためには、子どもへの適切なケアや治療が必要なのである。

(6)  保護者のケア
 加害者が性的虐待を行った背景には、その人の成育歴や現在の生活環境に由来するさまざまな心理的要因が存在することが少なくない。例えば、自分の人生に肯定感が持てていなかったり、現在の生活状況に無力感を持っているなど、自己コントロール感の喪失に由来する支配欲求が子どもへの性的虐待を導く場合が多いといった知見が示されている。したがって、加害者に対しても、可能な限り心理的なケアが提供される必要がある。
 加害者のケアにとってもっとも大切なのは、性的虐待という事実への直面化である。こうした直面化は、性的虐待があったという事実を認めるだけではなく、それが子どもにどのような影響をもたらしたのか(結果への直面)や、どうしてそうした行為に及んだのか(原因への直面)が含まれることになる。
 こうした直面化の作業は、加害者と援助者の多大なるエネルギーを要求する。しかし一方で、数は少ないながらも、援助者が性的虐待の存在を指摘した直後にそれを受け入れ、自分がそのような行為に及んでしまった心理的な背景についても自己分析的に述べる加害者も存在する。こうした加害者の行動の多くは『偽りの洞察』と呼ばれるものであり、真の洞察への防衛であったり、子どもを取り戻すための方略であると考えられるので注意を要する。
 加害者でない保護者の心理的衝撃や揺れについては前述の通りである。こうした保護者が子どもの被害の事実を受け入れ、子どもを守ろうと決心する過程を支えることがケアにつながると言えよう。

(7)  刑事事件としての取り扱い
 先に述べたように、わが国においても性的虐待を刑事事件として告訴したり告発したりする事例が見られるようになった。こうした司法的手続きが子どもに与える心理的負担の大きさ(警察官調書や検察官調書作成のための事情聴取の繰り返しや、法廷への出廷が求められる可能性など)を考えた場合には、どのようなことが今後予想されるかを子どもに十分理解してもらった上で子どもの意思を十分に考慮し、その後の対応を慎重に決定する必要がある。子どもによってはその心理的負担に耐え切れずに性的虐待の事実を撤回したり、場合によっては自殺に及ぶ危険性すらある。
 刑事事件として取り扱われることで保護者が間違ったことをしたのだという子どもの理解を促進したり子どものエンパワメントにつながると考えられる場合には、「子どもの最善の利益のために」という子ども福祉の原則からも、警察官や検察官を説得して立件に踏み切ってもらう必要が生じる場合もある。警察などに積極的に動いてもらうためには、虐待問題に詳しい弁護士の協力を得ることや、前述した適切な面接に基づく専門家の意見書が有効に働く場合が少なくない。


8. 配偶者からの暴力のある家庭への支援のあり方
(1)  配偶者からの暴力とは
 「配偶者からの暴力」は、一般的には「ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)」や、「DV」といった用語で用いられることが多いが、一方の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)からもう一方の配偶者に対する暴力の存在と、暴力的な関係の長期間にわたる継続とを特徴とする。配偶者からの暴力では、女性が男性に対して暴力を振るうという事例が皆無ではないものの、男性が加害者になることが圧倒的に多い。そのため、ここでは、夫あるいは父親を加害者、妻あるいは母親を被害者として記述することとする。
 配偶者からの暴力の本質は、夫による妻の行動や思考の「支配」の確立であり、こうした支配関係の確立という目的のために、身体的暴力、精神的暴力、性的暴力などの様々な虐待を行使するものであると考えられる.

(2)  暴力的関係の長期的継続
 先に述べたように、配偶者からの暴力のある関係においては、暴力が存在するだけではなく、慢性的な暴力を含む関係が長期にわたって継続するという特徴を持っている。場合によっては、夫の暴力によって致命的ともなり得るような深刻な傷害を受けても妻がその関係に留まったり、一旦は暴力を逃れて逃げ出した妻が、短期間の後に再び夫の元に戻ってしまうといったこともあり、配偶者からの暴力についての経験や知識の乏しい援助者には奇異に感じられることすらある。
 配偶者からの暴力の被害を受けている妻がその関係に留まる要因には、経済的要因、社会的要因、及び心理的要因が存在すると言われている。
[1]  経済的要因
 経済的側面を夫に頼っている妻にとっては、夫との関係を断つことはその経済的基盤を失うことを意味するため、暴力を振るわれながらも、関係の終結に踏み切れない場合がある。配偶者からの暴力のある関係において夫は妻に対する「支配」を確立しようとすることは先に述べたとおりだが、こうした夫は、妻が何らかの経済的自立性を確立することを容認しようとしないこともあるため、配偶者からの暴力が問題となった時点で妻が経済的な基盤を全く持っていない場合もある。
[2]  社会的要因
 暴力的な関係の終結を妨げる社会的要因としては、社会的な評価に対するとらわれ、親族や地域社会などに対するいわゆる「世間体」、あるいは「子どもにとっては両親が必要」といった通念などが挙げられる。
[3]  心理的要因
 関係の終結の妨げとなる妻の心理的要因としては、「暴力に対する激しい恐怖」、「暴力による無力化」、「暴力の3相サイクル」及び「救済者としてのアイデンティティ」が指摘される。
 配偶者からの暴力を受けている女性の20%程度が、「夫に殺されるかもしれない」といった恐怖を感じたことがあるとする調査もある。このように、「死を予期させる恐怖」を感じた妻は、夫のもとから離れたとしても、必ず探し出されて殺されてしまうのではないかと思い込む場合も少なくない。このように、暴力に対する恐怖は、夫の元を逃げるという選択肢を奪ってしまう可能性がある。
 典型的な配偶者からの暴力のある関係においては、夫は妻のさまざまな行動を、身体的暴力や精神的暴力などの暴力を加えることで支配しようとする。こうした暴力にさらされることで、妻は自己の行為や判断に自信が持てなくなり、ついにはあらゆる行為の判断を夫に委ねるといった「無力化」の状態に追い込まれる。こうした無力化は、「学習された無力状態」(learned helplessness)と呼ばれており、このような状態に陥った妻は、「このままでは危険だから逃げ出そう」といった判断を下す能力さえ奪われた状態になることがあると考えられる。
 「暴力の3相サイクル」とは、米国の社会学者であるレノア・ウォーカーが提唱した概念である。ウォーカーは、配偶者からの暴力のある関係を、「次第に緊張感が高まる段階」、「緊張感が飽和点に達し暴力が爆発する段階」及び「暴力の爆発によって緊張が逓減し代わって後悔と慰撫が表れる段階」の3相の循環として捉えた。このモデルでは、「暴力の爆発によって緊張が逓減し代わって後悔と慰撫が表れる段階」が存在することによって、妻が「夫が暴力を振るうのは私のことを愛しているからだ」とか「この人は本当は優しい人なんだ」といった認知を持つようになるため、関係を継続してしまうと考えられる。
 「救済者としてのアイデンティティ」とは、人を援助し助けることが自分の存在価値であるとの認識を意味し、配偶者からの暴力のある関係を継続する妻にはこうした特徴が少なくないとの指摘がある。夫からの暴力を逃れシェルターなどにやってくる妻たちのなかには、ある程度の時間の経過で、自ら元の関係に戻ってしまう人がいるが、「やっぱりあの人は私がいないとだめだと思う」という理由で暴力を振るう夫の元に戻っていく妻も少なくない。

(3)  配偶者からの暴力と子どもの虐待
 ある調査では、配偶者からの暴力のある家庭の50%に子どもへの虐待が見られるとの結果が見出されており、配偶者に対する暴力と子ども虐待との間には関連があることが示されている。こうした研究のほとんどは、子どもへの虐待を直接的な暴力、つまり身体的虐待に限っているが、ネグレクトを含めるとこの合併率はもっと高くなると考えられる。先述したように、配偶者からの暴力とは、夫が妻を「支配」する過程と考えられ、この過程において妻は「無力化」されていく。そこには、母親としての「無力化」も含まれることになり、母親としての子どもに対する養育機能が奪われてしまうわけである。このようにして、夫の暴力の被害者となることによって、結果的に子どもへのネグレクトが生じることになるわけである。
 配偶者からの暴力のある家庭の約50%に子どもへの虐待が見られるとする調査があることは先に述べたが、この子どもに対する虐待の中には、父親からの虐待のみならず、母親から子どもへの虐待も含まれる。つまり、夫からの暴力の被害者となっている妻が、今度は子どもに対する加害者となってしまうわけで、家庭内での暴力の連鎖とでもいえる状況が生じるわけである。
 こうした暴力の連鎖は、遅れて生じる場合もある。暴力を受けた妻が子どもを連れて夫の元から逃れ、母子による生活を始めてしばらくの時間がたった後、それまでには見られなかった母親から子どもへの虐待が現れる場合もある。そのため、援助者は、夫から逃れた後の母子での生活の様子に十分注意を払い支援していく必要がある。

(4)  配偶者に対する暴力の目撃が子どもに与える心理的影響
 平成16年児童虐待防止法改正法により、子どもの目前で配偶者に対する暴力が行われることが心理的虐待に当たることが明確化された。こうした改正がなされた背景には、直接の被害を受けていない子どもであっても、父親から母親への慢性的な暴力が存在している家庭で育った子どもたちは、心理的なダメージを受けているとの実践的な知識があったためである。
 児童養護施設に入所している子どもたちを対象としたある調査では、配偶者からの暴力のある家庭で育った子どもが示す心理的問題や行動上の問題は、身体的虐待を受けた子どものそれと類似しているとの結果が得られている(児童福祉機関における思春期児童等の心理的アセスメントの導入に関する研究.厚生労働科学研究平成15年度研究報告書.主任研究者:西澤哲)。つまり、配偶者からの暴力のある家庭で育った子どもには、攻撃者との同一視による暴力傾向や暴力的行動化傾向、感情コントロールの問題、自己イメージの低下などの特徴が見られたわけである。また、配偶者からの暴力のある家庭で育った子どもは、身体的虐待を受けた子どもに比べて、怒りの程度がより強く、一方で、感情抑圧がより強いという結果も得られている。つまり、父母間の配偶者からの暴力のある関係を目撃することは、子どもにより激しい怒りをもたらすものの、一方でその怒りを強く抑圧する傾向が見られることになる。こうした抑圧の強さには、おそらく暴力的な父親に対する恐怖が関連しているのではないかと推測される。
 また、臨床的な研究や援助実践の経験からは、配偶者に対する暴力の目撃体験を持つ子どもは、「母親を守れなかった」との思いから強い罪悪感を抱いたり、「強くならねば」と考えて物理的力への憧れを持ったり実際に問題を力によって解決しようとする傾向を示したり、あるいは、苦痛に満ちた現実生活からの心理的逃避として空想などの自己の内的世界への耽溺傾向を示したりなど、一定の特徴があると考えられている。
 このように、子ども自身が虐待やネグレクトの被害を受けていない場合でも、子どもにはこうした心理的影響が及んでいる可能性がある。したがって、これらの心理的影響を考慮に入れた子どもへのケアや治療が必要になる場合が少なくない。

(5)  配偶者からの暴力の被害を受けている妻への支援と子どもの援助
 配偶者からの暴力のある家庭に援助を行う場合には、配偶者暴力相談支援センターとの連携は必須である。しかし、妻へのケースワークと子どもへのケースワークが常に同一の方向性を持っているとは限らない。たとえば、配偶者からの暴力の被害を受けている妻の安全を確保するためには、援助者が、妻に対し一時保護の利用を勧奨したり、保護命令制度について情報提供を行い、妻が裁判所に保護命令の申立てを行うことを支援するなど、妻自身が自ら問題解決に向けて決断し、行動できるように支援することとなる。そのため、妻が暴力によって奪われてしまった自身の力をとりもどす「エンパワメント」が重要であるとされている。暴力を受けていながらもその関係にとどまろうとする妻を、外部からの半ば強制的な力で夫のもとから引き離そうとすることは無効であるばかりか有害となる場合もある。したがって、妻自身が暴力によって支配された関係を「おかしい」と感じ、その関係を絶とうとする判断を行えるような「エンパワメント」が援助の基本となるわけである。
 一方で、子どもへのケースワークの基本は子どもの安全の確保であり、そのためには一刻の猶予もなく子どもを家庭から分離・保護しなくてはならない場合も存在する。このように、表面的に見れば、ケースワークの方向性が食い違うような場合も存在するため、双方の援助者にとって不信感やフラストレーションが生じることも少なくない。こうした家庭への支援においては、双方がお互いのケースワークの原則を理解しつつ、それぞれの原則を踏まえたケースワークを行っていく必要がある。
 また、妻へのケースワークの展開においては、先にも述べたように、一旦は夫のもとを離れた妻が再びもとの関係に戻ることが少なくない。こうした場合、自分の元を離れた妻や子どもに対する夫あるいは父親の暴力が以前にも増してひどくなる場合もある。子どもの援助を行う者は、こうした可能性に留意してケースワークを行っていくことが必要である。


9. 18歳又は19歳の子どもへの対応
 児童相談所において、18歳又は19歳の子どもに関する相談があった場合には、これまで相談できずに悩んでいた結果、どうすることもできずに相談に来たなど深刻な状態になっていることも考えられるため、年齢要件を満たさないことを理由に直ちにこれを拒否するのではなく、配慮ある対応をとることが必要である。
 特に、18歳又は19歳の子どもに係る親権喪失宣告については、これを請求できるのは、その親族又は検察官のみとされていたところ、18歳又は19歳の子どもの場合であっても、親権者と関わりを持ちたがらないなど親族が請求を躊躇することも多いことから、平成16年児童福祉法改正法により、その範囲が拡大され、児童相談所長も親権喪失宣告を請求することができることとされた。
 このような制度改正の趣旨も踏まえ、児童相談所において、18歳又は19歳の子どもから親権喪失請求に関する相談があった場合には、18歳未満の子どもと同様に適切な相談援助活動を行い、その上で、本人の意向を確認しつつ、親権喪失請求について十分に検討し、行うことが大切である。



表13−1
精神保健福祉法に基づく入院制度の概要

入院形態 任意入院 措置入院 緊急措置入院 医療保護入院 応急入院
対象者 自らの入院について同意する精神障害者 医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められた精神障害者 措置入院の要件に該当すると認められる者について、急速を要し、措置入院に係る手続きを採ることができない場合において、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認められた精神障害者 医療及び保護のために入院の必要があると認められた精神障害者であって、保護者(保護者について家庭裁判所の選任を要し、かつ、当該選任がなされていない場合は、扶養義務者)の同意のある者 医療及び保護の依頼があった者について、急速を要し、保護者の同意を得ることができない場合において、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障があると認められた精神障害者
入院時における
手続き等
本人の同意
2名以上の精神保健指定医の診察結果の一致により入院。
指定医は厚生労働大臣の定める基準に従い判定。
診察に当たっての都道府県の当該職員の立会い。
現に保護の任に当たっている者への診察の通知。
精神保健指定医の診察必要。
診察に当たっての都道府県の当該職員の立会い。
入院に当たって、精神保健指定医の診断を要件とする。
保護者(若しくは扶養義務者)の同意。
入院に当たって、精神保健指定医の診断を要件とする。
入院期間 72時間以内 扶養義務者による同意の場合、4週間以内。 72時間以内
退院時における
手続き等
退院は本人の意思による
患者の症状により72時間を限度とする退院制限を行うことができる。
措置症状の消失により、措置解除
精神保健指定医の診察必要。
措置症状が消失した際には、届出。
都道府県知事から入院措置をとらない旨の通知を受けたとき、又は72時間以内に入院措置をとる旨の通知がないときには直ちに退院。
他の入院形態への移行、入院の必要性の消失等により退院
退院後10日以内の届出
他の入院形態への移行、又は上記入院の必要性の消失により終了。

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 子ども・子育て > 子ども・子育て支援 > 児童虐待防止対策・DV防止対策・人身取引対策等 > 子ども虐待対応の手引きの改正について(平成19年1月23日雇児発第0123003号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知) > 子ども虐待対応の手引き > 第13章 特別な視点が必要な事例への対応

ページの先頭へ戻る