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京王電鉄50年史

第3部  企業体質の抜本的改善とグループの再編成(1986〜1998)

第2章 首都圏の大動脈へ

3 特定都市鉄道整備事業の推進

 大都市圏の鉄道では朝間ラッシュの混雑が激しく、輸送力増強は最重要課題です。しかし、これには長い工事期間と莫大な資金を必要とし、借入金による金利負担が企業経営に大きな影響を及ぼします。

 そこで、1986(昭61)年7月、運輸省は「10年間にわたり通常の運賃に上乗せし、その上乗せ分を積み立てて工事費の一部に充当し、工事終了後に10年間にわたって均等に取り崩してお客様に還元する」という制度を制定しました。この制度を「特定都市鉄道整備積立金制度」といい、この制度を用いて行う工事を「特定都市鉄道整備事業計画」といいます。

特定都市鉄道整備積立金制度による運賃改定のしくみ

特定都市鉄道整備積立金制度による運賃改定のしくみ

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 当社では、10年間で完了可能であり、かつ少ない投資で最大の効果を得ることを前提に、京王線の普通列車の10両編成化と井の頭線の車両大型化を選択しました。そして、予定通り10年の期限内に事業を完了することが出来ました。その経緯は以下の通りです。
 1987年12月に、京王線長編成化工事と井の頭線車両大型化工事が「特定都市鉄道整備事業計画」の認定を受け、翌年の運賃改定時から準備金の上乗せを開始しました。

 京王線の長編成化とは、京王八王子駅を含む21駅のホームを延伸し、全駅に10両編成を停車可能にし、朝間ラッシュ1時間に新宿駅に到着する30本全ての列車を10両編成化する工事です。一方、井の頭線の車両大型化とは、18.5メートル・3扉車両で統一されていた同線に、大型20メートル・4扉車両を導入すると共に、朝間ラッシュ1時間に渋谷駅に到着する列車を28本から30本に増発し、合わせて渋谷駅を含む11駅でホーム延伸と駅改良工事を実施するものです。

 この事業の皮切りとして、8両編成対応であった京王八王子駅の地下化工事が1986年4月に開始されました。3年後の1989年に、10両編成対応となった地下ホームの使用を開始、10両編成列車の高幡不動駅での分割・併合の手間が解消されました。なお、1991年に急行系列車の混雑緩和策として、6000系の5扉車両が導入されました。

 続いて、普通列車の10両編成化工事を開始、代田橋駅と上北沢駅で駅舎の地下化、下高井戸駅で橋上駅舎化を伴う大掛かりな工事も順調に進みました。そして、工事進捗に応じて、1993年3月に新宿〜つつじヶ丘間で、翌94年3月に新宿〜橋本間で、普通列車の10両編成化を実施し、96年3月には全線で10両編成運転が可能になりました。1997年12月に仙川駅の改良工事が竣工し、「京王線長編成化工事」が完了しました。

 一方、井の頭線についても車両の大型化に伴う工事が開始されましたが、特に困難だったのが神泉駅と渋谷駅でした。神泉駅については、一部がトンネルに覆われホームが3両編成分しかなかったため、トンネルを削ってホームを延伸し、1995年9月から使用を開始しました。渋谷駅については、抜本的な改良が必要となり、隣接する東急バス専用道・営団銀座線の車庫線を含めて総合的に土地利用をすることになりました。1994年から本格工事に着手し、96年1月に大型5両編成対応となりました。

井の頭線初の20メートル・4扉の1000系は、1996(平8)年1月から活動を開始しました。

井の頭線初の20メートル・4扉の1000系は、1996(平8)年1月から活動を開始しました。

 この時、投入された大型車両が、井の頭線では33年ぶりの新型車となる20メートル4扉の1000系です。井の頭線伝統のレインボーカラーを採り入れたほか、京王線8000系と同様VVVF制御を採用しました。なお、これに合わせて、在来の3000系の大半について、リフォーム工事を実施しています。

 その後、1996年7月に渋谷駅に西口を開設、そして97年12月には駅施設全体が完成し、井の頭線のターミナルにふさわしい装いとなりました。これに合わせてダイヤ改正を実施し、朝間ラッシュ1時間あたりの渋谷駅到着列車を28本から30本に増発、輸送力増強目標を達成し、「井の頭線車両大型化工事」を全面完了しました。

 こうして1987年に始まった大事業は、97年12月に10年間の期限内に完了しました。これにより、鉄道大手では戦後初となる運賃引き下げを実施し、大きな社会的反響を呼びました。
 これは、引き下げ率9.1%の運賃改定であり、工事費の一部に充てるため通常運賃に上乗せしてきた分6.0%と、それを積立ててきたものを10年間かけて取り崩して還元する分3.1%を合わせたものです。また、この制度による運賃引き下げをお客様等にわかりやすく理解していただくために、実際には渋谷駅改良エ事完成等に伴う資本費の負担増(運賃値上げ要素)1.6%があったものの、これについては経営努力で補うことにしました。


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