ナス(なすび)




ナス科ナス属 原産地…インド

ナスはダイエット野菜の 代表選手!!

 
ナスは他の野菜に比べて、取りたてて豊富なビタミン類やミネラルは含まず、炭水化物・脂肪・タンパク質の三大栄養素のいずれの含有量も多くはありません。低カロリーのナスは正にダイエット食品といえます。
 ナスはインドが原産地でもともと熱帯性の植物です。これが中国を経て日本にかなり古い時代に伝えられたようです。最古の記録としましては、東大寺正倉院文書に天平勝宝2年(750年)にナスが献上されたとの記録があり、奈良時代に、既にナスを食べていた事が明らかになっています。平安時代の「和名抄」(平安中期の漢和辞典)でもナスを「奈須比」と記しています。また、同時代の宮廷における規則や習慣を細かく記した「延喜式(えんぎしき)」には宮廷の内膳司(料理を作る役所)の畑でナスが作られており、その作り方ばかりでなく、漬物の作り方など加工についても詳しく述べられています。
 この頃にはナスは広く普及し、既に日本の重要な野菜になっていました。その後、宮中の女官言葉であった「ナス」が一般的な名前になったようです。
 室町時代に入りますと、京都周辺の山城や大和(奈良)で、ナスが特産品として作られていました。それが江戸時代になると静岡県の三保で促成栽培が始まり、江戸時代後期では野菜の中では最も需要が多かったといわれています。
 このナス、よほど日本人の嗜好に合ったのか、熱帯性の植物であったにもかかわらず、栽培の改良を重ねた結果、日本全国に広まり、今では極早生品種ながら北海道でも作られています。

<品種>
 全国各地で栽培されていて、種類も多く、形も様々です。その数は日本でも180種類以上、世界ではなんと1000種類もあるといわれています。 形から分類すると、卵形・丸形・長形に大きく分けられ、これがさらに細分化されています。

《小丸ナス群》(一口なす)
 丸ナス群の退化型と考えられ、丸ナス群より早生で、草勢は弱く、耐寒・耐暑性も低い。果実は小さく丸形で、色は濃い紫色。皮が柔らかく、種子が少ない。
 京都の椀ぎ(もぎ)、東北の民田(みんでん)などが代表的な品種で、煮物や漬物に適している。山形の出羽小ナスは辛子漬けで有名である。

《丸ナス群》
 中国の北京大円の馴化(じゅんか)型とみられ、中生で、草勢、耐暑性はやや強い。果実は大きく丸形、濃紫色である。
 大芹川(おおせりかわ)・巾着(きんちゃく)は大形、大阪丸(おおさかまる)はやや小形、新潟の魚沼巾着は早生でやや小形である。
 信越地方や関西で主に栽培されている丸いナスで、肉の締まりがよく味噌漬や煮物に適している。 加賀野菜の一つ、へた紫ナスや、京野菜の賀茂ナス(大芹川ナス)もこの一種。

《卵形ナス群》
 関東一円で広く栽培され、浅漬用として使われていた。果実は卵形から長卵形で、果肉がしまり、皮は黒紫色で薄い。
 代表的な品種は千成(せんなり)と真黒(しんくろ)ともに一代雑種の親としても重要である。やや長めの卵形の水ナスもこの一種。

《中長ナス群》
 本来は関西から東海にかけて栽培されていたナスで、長ナスと卵形ナスの中間的な形と大きさで、寒冷地でも温暖地でも作れる為、全国的に栽培されている。
 代表的な品種は、橘田(きった)大阪中長などであるが、近年では千両ナスが最も一般的になっている。
 果皮が柔らかく、大きさも手頃な為、市場での人気も高い。

《長ナス群》
 関西以西と東北に分布して栽培されており、関西地方で人気のあるナスである。
 果実の長さは20〜25cm程度で、果肉が柔らかく煮物に良く使われている。早採りしたものは皮も柔らかい為、漬物にも使われる。
 関西以西の代表品種としては、大阪長・大仙長・熊本長・津田長などで、東北の代表品種は、仙台長・河辺長などがある。

《大ナス群》
 九州地方で広く栽培されているナスで、耐暑性・耐乾性に優れている。代表的な品種としては、久留米長・長崎長・博多長などがあり、果実の長さは40cmを超えるものもある。皮が硬く、果肉は柔らかいので、焼きナスや炒め物、煮物には向くが、漬物には不向き。

《米ナス》

 アメリカで栽培されている品種、ブラックビューティーを日本で改良したものが主体で、普通のナスと違って茎やガクが緑色をしている。種子が少なく果肉が締まっていて煮崩れしにくい特徴があり、詰め物をして煮たり、ワイン蒸しにしてマリネなどにも使われる。

<ナスの旬は夏>
 今ではナスも1年中手に入れる事が出来ますが、秋冬から春にかけて施設もの、夏秋は露地もので占められています。
 美味しいナスの旬は、成り物の季節の夏、6月から9月です。この時期のものは、身の締まりも良く、皮も柔らかく、特に美味しいように思われます。

<選び方>
 表皮がなめらかで傷がなく、つややかな光沢のあるもの、ヘタの切り口がみずみずしくて、ガクの部分についているトゲが痛いくらいのものを選んで下さい。新鮮でないものは、ヘタが茶色っぽくなり、トゲがなくなります。
 表皮の紫紺色の薄いものは、日光不足が原因です。紫紺色がしたたるほどに鮮やかで、全体に張りのよいものを選びましょう。
 ときどき表皮が茶色に変色したものが見られますが、このタイプのナスは、おおむね皮が固く、果肉に種が多い事があるので、避けたほうが無難です。

<保存方法>
 ヘタの切り口から水分が蒸発していくので、1個ずつ、きっちりとラップで包み、冷暗所か冷蔵庫の野菜室に入れます。保存温度が5℃以下になると身が縮んでしまうので、低温での保存は向きません。
 ナスはあまり保存のきく野菜ではありませんから、できるだけ早めに使い切るようにしましょう。購入してから3〜4日で食べてしまうのがベストです。
 また、煮込み料理など調理したものは冷凍保存できますが、生のままや、焼いただけのものは冷凍保存できません。


<調理のポイント>

その1(切り方)
 焼きナスなど丸ごと焼く場合は、ヘタの下の部分にぐるりと包丁で切り込みを入れて、余分なガクを取り除きます。また、小ナスなどを調理する時は縦に切り込みを数本入れると味がなじみやすく、盛り付ける時にひねると形よくおさまります。これを茶せん切りといいます。
 同様に、煮物にする場合は皮目に斜めの切り込みを入れて、味を含みやすくすることもあります。
 炒め物にする場合は、斜め切りや輪切りなど、他の素材と合せた切り方をします。特に長ナスや大長ナスは斜め切りにすることが多いようです。また、まるごと焼いたり、蒸したりしてから竹串などで縦に裂く方法もあります。

◆ その2(アク抜き
 ナスの果肉は切って空気に触れると、アクが出て褐色になります。これを防ぐ為に、多くの場合は切ったらすぐに切り口を水につけてアク抜きをします。
 逆に余分な水分とともにアクを抜くには、切り口に塩をふりかけてしばらくおき、水気をぎゅっと絞る方法がとられています。これはイタリア料理やフランス料理の炒め物などによく用いられるアク抜き法です。

◆ その3(加熱)
 焼く場合=焼く時は強火で。弱火だと水分が流出してうま味も逃げます。
 炒める・揚げる場合=ナスは油との相性がとてもよいので、炒めたり・揚げたりすることの多い素材です。煮る場合も揚げてから煮ると色よく仕上がり、うま味も増します。ただし油をとても良く吸収するので、カロリーを抑えたい場合は注意が必要です。
 特に切り口の大きい物は、高温の油でさっと揚げます。炒め物やソテーもじっくり焼こうとすると、つい油を足したくなるほどよく吸収します。