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イスラム国 恐怖統治の実態

若者を引きつける力

 ―イスラム国のパスポートや通貨は。

 イスラム国を承認した国家は存在しないので、発行したパスポートはどこでも使えない。資金集めの手段だ。通貨の発行については、金銀を集めるだけでも大変で、実際に通貨を発行するのは難しいのではないか。通貨のデザインにはグラムを採用した。その辺りに限界がある。欧米の基準を使わないといけない。イスラム世界での伝統的な重さの単位ミスカールを使ってほしかった。本来ならカリフの名前を刻印する。イスラム教の原点回帰を目指すことを掲げているなら、歴史的な背景を踏まえるべきだった。

 ―イスラム国の敵は。

 不信仰者だ。一番悪いのは多神教であるヤジディ教徒で、経典の民であるイスラム教徒やキリスト教徒とは明らかに異なった扱いを受けている。その次にシーア派の一派でアサド大統領が属するアラウィ派。さらにシーア派だ。イスラム国は奴隷制度を復活させたが、コーラン(イスラム教の聖典)には奴隷制度を廃止しろとは書かれていない。だったら、あってもいいはずだというのがイスラム国の論理だ。ただ、コーランや預言者の言行録であるハディースには、奴隷は解放すべきだと書いてある。しかし、イスラム国はそうした立場は取らない。奴隷制度復活に関しては確信犯だ。彼らにとっての理想の時代は預言者の時代であり、その考え方から見れば、奴隷制があっても当然と考えるのは自然だ。

 ―イスラム国に参加する人物像は。

 さまざまだ。人を殺してみたいという人物も当然いる。怒りに燃えてイスラム国をつくりたいという人物もいる。いずれにしても戦わなければならないと考えていることは間違いない。重要なのは、同じ場所、目的で集まっていることだ。これは力になる。同じ釜の飯を食い、高揚感がある。若者たちが引きつけられるのは理解できる。男性社会であり、より同質的な社会だ。イスラム国にとって、こうした状況は目的を達成するための力になる。アルカイダではなく、イスラム国に勢いがあるのはこのためだ。

 ―イスラム国はそもそも反米、反イスラエルではないのか。

 イスラム国そのものに反米、反イスラエルという思想は希薄だ。空爆が開始されたので、反米は重い意味を持ち始めている。米軍が空爆した時点で米国は敵になる。一方、アルカイダは米国が諸悪の根源であり、倒さなければならない敵であると考えている。

 ―サウジは敵か。

 サウジはイスラム国の標的になる。標的の一位はシーア派。サウジの王家であるサウド家は次の標的だ。サウジが米国と結託しているためだ。

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