2007年3月4日(日)「しんぶん赤旗」

「解同」横暴・利権あさり

どこまで追い込んできたか

不公正な同和行政の完全終結を


 大阪市での「解同」(部落解放同盟)支部長の業務上横領罪での逮捕など、いま「解同」の利権あさり、腐敗に、司法のメスも入り、「解同」タブーはいよいよ崩れつつあります。日本共産党は利権を温存する同和行政を終結させるために先駆的な役割を果たしてきました。(山沢猛、青野圭)

共産党員町長誕生 長野・御代田町で何が―

 長野県御代田(みよた)町長選(二月十八日投票)で初当選した日本共産党の前町議、茂木祐司町長(50)が二十八日、町役場に初登庁しました。職員への訓示で「本日より、同和関係の予算の支出はいっさい行わず、完全廃止には私が前面に立って行います。職員のみなさんは安心して仕事に当たっていただきたい」と呼びかけました。町政史上に残る歴史的な宣言でした。

 町長選前までの御代田町は、「解同」町協議会幹部と前町長らの癒着、利権あさりが続いていました。同協議会幹部が毎年行く「海外研修」に町は過去十四年間に、合計千百万円を支出。同和向け新築住宅貸し付け事業は返済がされず町は一億三千万円も穴埋めし、その滞納の請求もしていませんでした。その一方で、国民健康保険料は県下第一、介護保険料は第二の高さでした。

 そうした不公正な行政を町議会で真っ向からとりあげて町長を追及し、毎回「かわら版」という「しんぶん赤旗」読者ニュースで知らせてきたのが、茂木さんでした。町が情報を伝えないなか、「かわら版」が評判を呼び、コピーされて町中に回りました。有線放送で放映された茂木議員の質問を見た町民から「同和で正面からものをいうのは、茂木」という声が広がりました。

 昨年十月、同和の担当課長が自殺したとき、この問題を議会で追及したのも茂木さんでした。

 町長選を間近に控えて茂木さんが町を歩くと「茂木が立たないなら、おれは縁を切る」と何人もの町民から強い要請が。こうした声に茂木さんが立候補を決断したのが、告示一週間前。元助役、ごみ処分場問題にとりくむ住民など数百人の町民が動き出し、町内会・団体締め付けの現職陣営を打ち破りました。

崩れゆく「タブー」メディアも共産党に注目

ついに「解同」幹部逮捕 大阪

 大阪府民の強い関心をよんできたのが「飛鳥会」事件と、「解同」(部落解放同盟)系の民間病院(旧芦原病院)への公費不正支出疑惑です。

 「飛鳥会」事件とは、大阪市から淀川区の西中島駐車場の管理委託を受けていた財団法人「飛鳥会」理事長(当時)の小西邦彦「解同」飛鳥支部長(当時)が業務上横領容疑で逮捕された事件です。小西被告はなんと三十二年にわたって利権をほしいままにし、収益約六億円を私物化していました。

 芦原病院への公費不正支出疑惑は、大阪市が特定の民間病院に長期にわたって約三百二十億円もの補助金・貸付金を支給してきたというものです。

 いずれも、自民・公明・民主ら「オール与党」勢力やマスコミが沈黙するなか、数十年間、日本共産党が繰り返し追及してきた問題です。

 小西容疑者の逮捕を前後して、マスコミが日本共産党の姫野浄前市議団長に殺到。新聞やテレビの記者らは、三十二年前に姫野氏がこの問題を追及した市議会の議事録を手にしていました。マスメディアが見出しにも「解放同盟」の名前を出して報じるなど、これまでにない変化がうまれ、崩れだした「解同」タブーを印象づけました。

 日本共産党は三月議会で、大阪市が「解同」との癒着を断ち切り、こうした不公正な同和行政の終結を求めました。その一つが、「解同」の隠れミノである「人権協会」への旧同和住宅に付帯する駐車場(計約三万平方メートル)の管理・運営委託です。加えて、同和向けとして大阪市は買収した土地の未利用地(約十三万平方メートル)の半分近く(〇六年三月現在、五万七千二十平方メートル)の管理費も同じ「人権協会」に支出しています。

 同和行政の存続では、「オール与党」に支えられた大阪府が特別に重大な役割を果たしてきました。

 〇二年三月に「同和対策特別措置法」が失効し、同和行政の法的根拠がなくなりました。その前年の三月、大阪府は「大阪府人権施策推進基本方針」を作りました。翌〇二年十月には「部落差別が現存する限り…施策を進める」との通知を出しました。その中心的内容は、「解同」が独占的に同和事業を進めるためのそれまでの「同和事業促進協議会」を「人権協会」に衣替えして、市町村が人権施策を推進するための「協力機関」と位置付けるよう“指示”。「解同」いいなりを許すシステムをつくったのです。

 府は約四億六千万円をかけて大阪市浪速区に建設した「人権センター」を「人権協会」に無償貸与。そこに「解同」中央本部大阪事務所や同大阪府連、解放出版社、部落解放人権研究所などが入居しています。

議会招集権を背景に 京都

 京都市会事務局が編集した『京都市会史』(一九八九年発行)の一節をみると――。

 「市当局の方針に対して共産党からは、市会本会議等においても批判の意見が出され…『本市の同和行政見直しを求める決議』が全会一致でなされた」「この決議は以後の同和行政の進め方に大きなインパクトを与えるものとなった」

 共産党の一貫した活動は本年度、生活保護費の横領、覚せい剤、買春などで逮捕者十三人、懲戒免職二十人を出すなど市職員による犯罪・不祥事が続発した問題でも、いかんなく発揮されました。党市議団は議会招集権を背景にして、不祥事事件としては五十四年ぶりとなる臨時議会の開催と調査特別委員会の設置を実現しました。

 自民・公明・民主の「オール与党」は、同和の特別扱いを含む予算にすべて賛成してきました。また、民主党は、「解同」の現職役員を市議候補として公認することさえしています。

不正病休問題を追及 奈良

 「解同」幹部の奈良市職員が「病気」を理由に五年間で八日しか出勤していないにもかかわらず、給与のほぼ満額、二千四百七十五万円を受け取っていた問題は、多くの奈良県民を驚かせました。ほかにも、月十万円で嘱託採用した「解同」市協事務局長らのヤミ専従の疑いがあったことも発覚するなど、「解同」を特別扱いするこれまでの奈良市の異常な姿勢が浮き彫りになっています。

 二月八日には党県議団と奈良市議団が、不公正な同和行政をなくすとともに、これらの「解同」との不正常な関係をただすよう藤原昭市長に申し入れました。

 今議会に提案された市予算案では、個人給付事業や「解同」への補助金を全廃するなど、市民とともに進めてきた運動が反映されています。


行政との癒着断つことが必要

 国政段階では、「解同」の無法の事実上の根拠となっていた同和特別法体制は二〇〇二年三月に失効しました。これは日本共産党国会議員団が「解同」による同和事業の支配(「窓口一本化」)、利権あさり、暴力的な「糾弾」行為の実態を示して、「国はいつまで乱脈な同和事業をつづけるのか。終結してはやく一般行政に移すべきだ」と粘りづよく追及してきたことが大きな力になりました。

 他の党は「解同」の無法を見てみぬふりをするか、積極的に擁護しました。その後も「解同」などは同和特別法に代わる国の法律を制定させる策動をつづけましたが、現在にいたるまで許していません。

基本的な流れに

 地方自治体においても、枠組みとしては同和行政の終結が基本的な流れになっています。高知県では、橋本知事のもと、同和特別法の停止に先立つ二〇〇二年度に同和関係予算を廃止しました。長野県は当時は田中知事でしたが、〇四年三月に同和行政、同和教育を終結しました。そのことを力に、県下各地の日本共産党の地方議員団のたたかいで市町村段階でも同和予算の縮小・削減が進み始めています。福岡県でも〇七年度予算案から同和予算をなくしました。

 各県とも党県議団が議会でくりかえし同和事業の終結・停止を要求、知事との話し合いを背景にして廃止したものです。

 また民主勢力、人権連(全国地域人権運動総連合、全国部落解放運動連合会が発展改組)のたたかいが実を結びました。

 他の県、市町村でも廃止を表明したところがでています。「解同」が策動が続いておりこうしたところでも監視が必要です。

現在もなお継続

 同時に地方自治体では長期にわたり、同和行政が本来の目的からはずれて、「解同」と行政の癒着によって温存されてきたことから、現在もなお継続されているところが少なくありません。「差別がある限り続ける」(大阪市)などといって同和事業をつづけて、逆に住民間の差別を固定化しているところや、「人権」の名に隠れて実質的に同和向け予算を継続する動きも軽視できません。

 こうした自治体を変えるために、日本共産党、住民の粘りづよいたたかいがいまも続いています。

 自民・公明推薦の現職を破り、昨年七月に市長に返り咲いた長尾淳三東大阪市長(共産党員)は、二月二十六日発表の来年度予算案で、旧同和事業にかかわる経費約一億九千万円の削減と、くらし・福祉充実の施策をあわせて発表、選挙公約実現へ強い決意を示しました。ひきつづき同和関連事業の総点検をすすめ、「市民に情報を公開するとともに、不正や利権に対してはきぜんとした態度で臨み、公正・公平で効果的な事業に改める」と表明しています。


共産党は体を張ってたたかいの歴史築いた

兵庫・元南光町長 山田兼三さん語る

 長野の御代田町長選告示の二日前に、茂木さんの応援で町民決起集会で話をしました。駅前の栄町公民館でしたが、参加した町民が一言も聞きもらすまいと真剣に聞いてくれ、町を変えたいという期待感がビンビン伝わってきました。

 茂木さんは「解同」べったりの同和事業をすぐに撤廃していくという明快な態度でした。私は南光町長二十五年の経験から、同和行政を廃止して一般施策に回し町政を充実させたこと、同和教育をやめ自由で民主的な公民館活動を活発にしたこと、町長には予算編成権があり、議会は少数与党であっても町長の方針で行政の運営はできること、国や県の補助金も前町長のときの二倍になったことなどを話しました。

 この話は「共産党で行政運営ができるのか」という町民の不安をときほぐすために役に立ったと聞きました。

 兵庫県では、一九七四年十一月に兵庫県但馬地方で八鹿高校事件が引き起こされました。それ以前は、県下の自治体で「解同」の無法・暴力がまかり通り、警察も見てみぬふりでした。共産党に敵対する「解同」のいわば泳がせ政策がつづいていました。八鹿高校事件がその転機でした。学校を思いの通りにしようと、昼ひなか七十人の教職員を襲撃、監禁し、集団暴行を加えました。当時はマスメディアも「解同」タブーのもとにあり、共産党をのぞくすべての政党が「解同」を擁護しました。

 そのなかで犯人を逮捕させ正義の世論を広げたのは、暴力に屈しない関係者のたたかいであり、国会内外での共産党議員の追及でした。日本共産党員は文字通り体を張ってたたかいました。

 暴力の前にものもいえなかった住民も重しがとれて立ち上がりました。但馬地方の当時の八鹿、養父、朝来の各町で共産党が単独で支持する公正・民主の町政が誕生しました。一九八〇年の南光町での共産党員町長の誕生もその延長線上にありました。

 こうした公正・民主自治体の躍進を見て、「解同」と癒着していた当時の坂井知事は県政も公正・民主の波をかぶるのではと恐れました。知事は県庁内の会議で「解同との関係に一線を画さないといけない。共産党は体をはって解同とたたかった。あの姿を見習わないといけない」と話しました。巻き返しの動きは軽視できませんが、共産党と住民のあのたたかいが「解同」の利権あさりをやめさせ、いま不公正な同和行政は終結へ追い込まれつつあります。

 旧南光町ではすでに二十五年前に同和事業を全廃しましたが、全廃こそ国民的融和で差別を解消し、同和地域でも穏やかさをとりもどす確かな道なのです。(談)


 「解同」 部落解放同盟を名乗る利権あさりの集団。七〇年代に「部落民以外はすべて差別者」とする誤った理論が幹部によって持ち込まれて変質、「差別解消に逆行する」と批判する人々を排除しました。同和事業を独占支配する「窓口一本化」を自治体に押し付け。同和特別法が二〇〇二年に失効すると、「人権施策」と称して同和特別扱いを求めています。


「解同」が「組織内」「推薦」とする自民・公明・民主・社民・新社会の議員

(無所属、保守系会派などは除外、選挙区は前回選挙時、敬称略)

大阪―――――――――

 ≪国会議員≫

 【民主党】「解同」大阪府連委員長の松岡徹参院議員(比例区)

 【自民党】元「解同」大阪府連副会長の谷畑孝衆院議員(選挙区)

 ――「解放新聞大阪版」03年4月14日付が「解同」大阪府連の「組織内候補」と報じた議員

 ≪府議会議員≫

 【民主】荒木幹雄(西成区)、大前英世(高槻市・島本町)、松田英世(泉南市)

 ≪大阪市議≫

 【民主】小林道弘(西成区)、辻洋二(浪速区)、川口優(淀川区)、広岡一光(東淀川区)

 ――同・府連推薦議員

 ≪府議≫

 【民主】井上あきら(池田市)、中島健二(箕面市)、森みどり(茨木市)、田中誠太(八尾市)、徳丸義也(八尾市)、北口裕文(寝屋川市)、土師幸平(堺市)、品川公男(大東市)、中村哲之助(枚方市)、梯信勝(東大阪市)、山添武文(交野市)、富田健治(旭区)、西川弘城(東淀川区)、半田實(住之江区)、花谷充愉(都島区)、西浦ひろし(城東区)

 【公明】池田作郎(大東市)、美坂房洋(淀川区)、清水義人(東住吉区)、長田公子(住吉区)、谷口昌隆(寝屋川市)、岩下学(松原市)、浜崎宣弘(岸和田市)、池川康朗(和泉市)

 ≪大阪市議≫

 【民主】山崎誠二(東成区)、山本修子(東住吉区)、神原昭二(住吉区)、松田力(平野区)、和田充弘(旭区)、きの敏明(住之江区)、村尾しげ子(都島区)、田中豊(城東区)、加藤正武(阿倍野区)、奥野正美(港区)、福山よしてる(大正区)【公明】金沢一博(大正区)

京都―――――――――

 ――「解放新聞」03年4月21日付が「組織内候補」と報じた議員

 ≪府議≫

 【民主】大野征次(八幡市)

 ――「解放新聞京都市版」03年5月1日付が「推薦」と報じた議員

 ≪府議≫

 【民主】武田祥夫(北区)、北岡千はる(左京区)、熊谷哲(右京区)、田渕五十生(伏見区)【公明】沢照美(左京区)、角替豊(南区)

 ≪京都市議≫【民主】小林昭朗(上京区)、隠塚功(左京区)、鈴木正穂(左京区)安孫子和子(中京区)、山口幸秀(山科区)、宮本徹(右京区)山岸隆行(伏見区)、砂川祐司(伏見区)【公明】井上教子(下京区)、大道義知(南区)

 ※「解同」市協の平井斉己事務局長が、民主公認で京都市北区から立候補表明

奈良―――――――――

 ――「解放新聞」03年4月21日付が「組織内候補」と報じた議員

 ≪県議≫

 【自民】飯田正(五条市)、丸野智彦(大和高田市)、米田忠則(大和高田市)

 ※「解同」奈良県委員長の川口正志(御所市、立候補時は社民)は保守会派

 ――上記以外で、「解同」系議員の集まり「奈良ヒューライツ議員団」の機関紙「ヒューライツエキスプレス」05年11月号に名前が載った議員

 ≪県議≫

 【自民】井岡正徳(磯城郡)、中野雅史(大和郡山市)、山本進章(高市郡)

 ――奈良県部落解放同盟支部連合会理事長

 【民主】山下力(磯城郡)民主党県総支部連合常任幹事

和歌山――――――――

 ≪県議≫

 【自民】飯田敬文(那賀郡)「解同」和歌山県連副委員長

 【民主】藤本眞利子(和歌山市)「解同」県連特別執行委員

 ※「解同」県連副委員長の松本貞次(有田郡)は県民クラブ

兵庫―――――――――

 ≪県議≫

 ――「解放新聞」03年4月21日付が「組織内候補」と報じた議員

 【自民】山本章(西脇市)、寺本貴至(尼崎市)【民主】黒田一美(垂水区)

 ――「解放新聞兵庫版」03年4月5日付が「推せん候補」と報じた議員

 ≪県議≫

 【自民】原吉三(中央区)、森脇保仁(宝塚市)【民主】藤井訓博(北区)、杉尾良文(西区)、岡やすえ(川西市・川辺郡)、中田香子(伊丹市)【社民】掛水すみえ(西宮市)、今西正行(尼崎市)【新社会】浜崎利澄(須磨区)

 ≪神戸市≫【民主】池田林太郎(北区)、橋本秀一(西区)、崎元祐治(須磨区)、藤原武光(垂水区)、横畑和幸(東灘区)【新社会】粟原富夫(中央区)


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